クラウスを挑発したのは、彼なりの“配慮”があったためだ。
クラウスの行動には彼の単純な性格が色濃く反映されている。
良い点もあれば、悪い点もあった。
“教員”として、教えられる部分は教えていかなければならない。
指導方法としては、少し独特な部分があった。
それは彼が不器用だという側面があったからだが、それ以上に、戦場での“厳しさ”をよく知っていたからでもあった。
どんなタイプのブックメーカーであれ、「戦い」には不確定要素がいくつも存在する。
自分が有利に立てる局面もあれば、逆のパターンも。
そういった多様な局面に対応していくには、基本的な戦術や技術、基礎となる体力を鍛えていくことはもちろん、精神的なバランス感覚を養っていくことが重要であると、常々考えていた。
偏った考え方は、大きな隙を生む足枷となる。
クラウスに教えたかったことだ。
だからこそ、彼は挑発していた。
クラウスの性格を知っていたからこそ、あえて”煽った”。
心の動揺を誘ったのだ。
頭に血が昇りやすいタイプには、「言葉」が有効な手段だったりする。
クラウスが取った行動に対する“意見”。
文字通り、それは心地良いものではなかった。
はっきりとした棘があった。
「悪手である」というニュアンスが、絶妙な距離感とタイミングに於いて発せられていた。
クラウスにとっては、感情に直接響く「内容」だった。
それこそ、目の前の行動を、咄嗟に変えてしまうほどの。
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