デザインズ・ベイビー

遺伝子操作を受けデザインズ・ベイビーとして誕生した少年の物語。
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「親心~美和編~」

公開日時: 2020年10月17日(土) 17:00
文字数:782


「ゆ……幽霊?」


美和の声は情けないぐらいに震えていた。


 突然、現れた奈美と少しずつ距離ととる。


「まぁ、この姿だもの。そう言われても、仕方がないか」


幽霊と呼ばれても、しょうがないだろう。


奈美自身、肉体を失い魂だけの存在となっていた。


「私は原田奈美。都の母親よ」

「都の……お母さん?」

「――そうよ」


美和は呆然と奈美を見つめた。


「どうして、私のところへ?」

「皆の成長を見て回っているの。あなたが最後よ」


別れの挨拶みたいなものだと。


都の新しい家族を見て見たかった。


どんな、子供なのか興味があった。


「ごめんなさい」

「なぜ、謝るの?」

「都の気持ちをわかってあげられなくて」


守ってもらってばっかりで。


美和は何もできない自分に、苛立ちしかなかった。


「都がデザインズ・ベイビーだということは、知っているのね?」

「――はい」

「あの子。変なところで頑固だからね。都から事実を聞くことを、諦めてないでしょう?」

「私は諦めてないです」

「諦めなければ、都に気持ちは伝わるわ」


だから、都が話すのを待ってあげてほしい。


「そうですよね。待つしかないですよね」

「美和さん。都を認めてくれてありがとう」


家族として幸せをわけてくれて、ありがとう。


都に居場所を作ってくれて感謝しかないわ。


母としてお礼を言うわ。


「都には私に会ったことを、内緒にしておいてくれる?」

「どうしてですか?」

「あの子はあの子の道を、進もうとしているのよ。邪魔をしたらいけないわ。それに、私の親としての役目は終わったの」

「会えてよかったです」


 親心を聞けてよかったと美和は思った。


「――私も同じです」


見届けられてよかったと。


「そろそろ、いかないと」


光が散り散りになり、奈美がいなくなる。


美和の部屋に静寂が戻った。


都。

あなたの心が決まるまで。


決断をくだす日がくるまで。


私たちはずっと、待っているよ。


美和は海を見つめながら、思いを新たにした。






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