デザインズ・ベイビー

遺伝子操作を受けデザインズ・ベイビーとして誕生した少年の物語。
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「復讐」2

公開日時: 2020年10月22日(木) 17:00
文字数:1,342

「本日はお忙し中、お集まりいただきありがとうございます。私、原田湊及び山口鈴より大切な話があります」


カメラのフラッシュが光る。テレビも多数回っていた。


「結婚ですか?」

「いいえ。違います」

「知っている方も多いでしょう。私の父親は遺伝子学者の原田隆です」

「それは、知っていますが……今回の会見と何が?」

「私の父は自分の息子を実験台にし、デザインズ・ベイビーを作りあげました」


突如、湊から爆弾が投下された。湊の発言は記者たちに衝撃をあたえた。


それは、波紋となって広がっていく。


「その根拠はどこから?」


鈴と湊にマイクが向けられる。二人は慣れたもので、表情をかえることはない。


「今から、資料をお配りいたします」


スタッフとマネージャーが資料を配っていく。


そこには、隆が行っていた実験の詳細がこと細やかに書かれていた。写真や映像は手に入らなかったが、鈴がわかりやすく隆の様子を絵にしてくれていた。


もちろん、都の分だけではない。鈴の分も用意をしていた。都の分だけを公表するのは、フェアではないと鈴が判断したのである。


「教授が言った未来の子供たちのためにというのは、嘘ということでしょうか?」

「私はセカンド・タイプ――いわば、第二世代のデザインズ・ベイビーです。私は教授に一番、近い人物でした。ただ、教授は子供たちのためではないです。いいように、甘い言葉で誘導をしていようとしていました」

「なぜ、今、公表しようと思ったのですか?」

「私のような子供たちを今後、生みださないためです。犠牲になった原田都君のためにも――」


鈴は淡々と話していく。一個人の山口鈴として話していた。


それは、湊も同じだった。


「私たちはどちらを信じればいいのでしょうか?この発表も国民を混乱させるだけなのでは?」

「確かに、国民を混乱させるだけかもしれません。私は山口さんを含め――応援してくれている人たちを信じています。ただ、それだけです」

「もし、その思いを裏切られたらどうしますか?」

「その時はその時です」


鈴と湊は質問した記者をまっすぐ見つめた。二人の力強い眼差しを感じて、記者は気まずそうに視線をそらす。


「他に質問はありませんか?」


確認をするように周囲を見渡す。


「最後に一つだけ聞かせてください」

「何でしょうか?」

「あなたたちは一体何者ですか?」

「私? 私はただの俳優です」

「私もただの女優です」


二人は静かに微笑む。その笑顔に引き込まれていく。


演技ではない。


鈴と湊の本来の笑顔だった。


「他に質問はございませんか?」

「では、以上で会見を終了いたします」


鈴と湊は深々と頭をさげた。


数日後――。

やはり、会見の効果は大きかった。世論の声は隆よりも鈴と湊に集まりつつあった。


応援の手紙や手紙も沢山きていた。


会見の日から鈴と湊は関係も深まり、敬語なしで会話をするようになっていた。


「会見の効果は抜群ね」

「ありがとう。山口さんの協力があったからこそ。あとは、僕に任せて」


それが、別れの言葉のように感じて――。


鈴はピクリと肩を震わせた。


「原田さん?」

「――ん?」

「あなたは帰ってくるよね?」


また、二人で仕事ができるよね?


「僕はね。患者を見捨てることはしたくない」

「その言葉を信じているわ」

「約束」


湊がスッと小指を差しだす。


鈴は自分の小指を絡ませた。


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