デザインズ・ベイビー

遺伝子操作を受けデザインズ・ベイビーとして誕生した少年の物語。
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第八章「親心~都編~」

公開日時: 2020年10月15日(木) 17:00
文字数:686

「――都」


優しいその声を忘れるわけがなかった。光の粒子が集まり、奈美の姿になる。


「かあ……さん」


高熱で夢を見ているのだろうか?


「都。無理してないかな?」


心が悲鳴をあげて、苦しくなっていないかと奈美は尋ねる。


「無理をしないと美和と和江さんは守れない」

「あなたは一人じゃないわ。新しい家族がいるじゃない。素直になりなさい」

「今更、素直になんてなれない」

「私が生きていれば、都にこんな思いをさせなくてすんだ。ごめんなさい」


肉体があれば、抱きしめられる。


人殺しという罪を、背負わなくてもよかった。


手を血で汚さなくてもすんだ。


悔しいわ。


「母さんが謝る必要はない」

「研究所に戻るつもりなの?」


ここにいれば安心だろう。


「僕があの人の暴走をとめる」


それが、都の役目――役割ならば、逃げることはできないだろう。


その役割を果たす他ないだろう。


次世代の子供たちの命を守るためだった。


「その気持ちに変わりはないのね?」

「決めたことだ」

「――頑固なのね」

「それでも、この気持ちに変わりはない」

「都の気持ちは受け取った。あなたの意思は私が守るわ」


母としてこれぐらいはさせてとほしいと願いをこめる。


やがて、奈美に姿が徐々に薄くなっていく。


光の粒子が弾けるようにして、消えていった。


母は傍にいる。


共に戦っている。


僕に勇気をくれてありがとう。

母さん。


都は自室で目が覚めた。


看病中に眠ってしまったのだろう。


美和がベッドの横で、眠っていた。


都は美和を起こさないように、布団をかける。


少し風にあたろう。


都は窓を開けて外にでた。


熱がある身体には風が、気持ちよかった。


もう、迷わない。


都の瞳には決意の光が宿っていた。

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