散らばった天啓を集める為に今日も旅をします。

ゆみ猫
ゆみ猫

1章

いつか連れ去ってくれるまで

公開日時: 2020年9月1日(火) 19:00
文字数:1,314

─────ここはどこだ


神殿だろうか。白一色で染められたこの空間に佇み考える。

摩天楼の屋上に立つ。周りを見渡せばこの空間にこの建物以外何もないことが分かる。

そして後ろを振り返り下を覗くと漠然とここが高所にある事に気づく。



「ごきげんよう。こんにちは。意識ははっきりしてますか?」


「…どうも」



眼前の女神から優しい、包み込む様な声が掛かる。



「ふふっ 意外と冷静なのですね」


「理解が追い付かなくて戸惑ってるだけなんだけど…」


両手を後ろに組み困り顔を浮かべる。


「そこはこの女神さまがちゃんと説明しますよ!」



やたら元気の良い目の前の女神はここまでに至る経緯を教えてくれた。


どうやら俺は死んでしまったらしい。

どうして死んだか思い出せないが若くして死んだとだけ告げられた。

この場所は例外無く記憶の抹消処理を行うと言う。

だが最低限人格が残る程度は記憶を残す。

何故かと聞こうとはしたが



「貴方は今から転生の種類を2つから選んでもらいます」



と言う言葉に遮られてしまった。

話はこうだ。

俺はこれから記憶ありハイスペック転生と記憶なし普通転生の2つから自由に選べるらしい。

極端で片方を選ばせるような選択を告げられるが迷う事無く前者を選ぶ。


「分かりました。それではこちらに」


近くに寄ると女神は指を

パチン

と鳴らし二人の間に球体が出現する。



「これはあなたはこれから転生する世界の球図です。あなたの住む村がここで王都がここでそれから……早く天啓くれって顔してますね」



笑いながらそんなことを言う。

そして女神は指をくるくる回しその上に数十もの光の玉を作り出した。



「これが天啓と言って貴方の世界では資格と言えばいいのでしょうか?いえ、ゲーム内のスキルと言ったところですね。それを貴方に渡します。ではそちらに行きますね……おっとっと あ…!」



女神はそのままよろけ光の玉たちは横にある球体に吸い込まれていった。

気まずそうな顔をこちらに向け舌を出した。



「あの…これって」


「世界に散っちゃったみたいです…」


「」


「困りましたね。あれは自立して存在する事は出来ないんですよ。おそらく誰かの中に…」


「誰かの中にって…俺の天啓は」


「天啓ってやすやすと渡せるもんじゃないんですよ。あれでも世界のバランスを考えた上だったので。」


「じゃあどうなるんだよ。結局普通の転生って事になるのか?」


「いえ、こちらのミスです。代わりに探知と強奪の天啓を与えましょう。これで散らばった天啓を回収出来ます。」


「なるほど。女神さんの尻拭いは俺がやれと。まぁいいや、それで探知と強奪ってなんだよ」


「ええ、探知とは指定した範囲に貴方の天啓を持つ方が居れば分かります。そして強奪とは半径5m以内であれば対象から自分の天啓を奪い取ることが出来ます」


「随分と限定されたもんだな。てゆーか天啓ってなんだよ。女神さんが配ってんのか?」


「いえ、本来なら自ら獲得するもの。または知らずの内に獲得するもの。私たちは関与しません。自然現象のようなものです」


「そっか。じゃあもう聞く事無いや。転生するよ」


「分かりました。それではいい旅を」


おぼろげになる意識の中で微笑を浮かべる女神の顔だけがやけにはっきり残りこの世界での初めての記憶となった。

探知:指定した範囲の天啓保持者の認識

強奪:半径5m以内の指定した天啓を取得

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