「おい、予定ではもうウェストは墜ちてるはずだな。黙ってないで何とか言ったらどうだ」
暗い部屋で大勢の人達の中、一人の声だけが聞こえてくる。
「この地区は俺に、このペンデ様に任されてんだ。失敗は許されねぇ。次はどうする。おい、情報屋。お前何かねぇのか」
気弱そうな男に目線が向けられる。
「いやーあの封印されている龍が私のとっておきでして…他に渡せる情報なんて、、今日ここが襲撃される事ぐらいしか…」
情報屋が陰湿な笑みを浮かべた瞬間、窓ガラスが吹き飛び光が差し込む。
「うっ、なんだ」
「ぎゃあああああ」
「うわぁああああああ」
「落ち着け!敵襲は一人だ」
ペンデが仲間に大声で呼び掛ける。
するとざわつきは少し収まり皆、冷静さを取り戻す。
「いやー流石リーダーですね。状況が良く見えていらっしゃる…」
情報屋は掛けていたメガネを外し襲撃して来た男の方へと歩き出す。
「情報屋、お前裏切ったな」
「嫌だなぁ、人聞きの悪い…私は最初から仲間ではありませんよ?」
情報屋は襲撃して来た男の横に並ぶと
「生け捕りは無しでいいです。ここには何も、何の情報もありませんでした。という訳で10分以内に終わらせて下さい」
襲撃して来た男は眉間に皺を寄せ
「ふん、お前に指図されるほど落ちぶれてはいない。その口を閉じろ」
情報屋はにやにや笑いながらこの建物の外へと出る。
出た瞬間数々の悲鳴が叫び上がり建物内の生存者は一人だけとなっていた。
「行くぞ」
「いやー怖い怖い…敵にはしたくないですねー。古参なのは私ですのに」
△▼△▼△▼
「どうしようかシーフ君。多分あれじゃ死んで無いしすぐに出て来ると思うんだけど」
崖崩れの下敷きになった龍を見ながらそう呟く。
「どうするって言っても俺じゃ何も出来ねーよ」
「だよねぇ。僕も対人じゃなきゃ強さは発揮できない」
今の戦闘を見せられて発揮出来ない等と言われても俺は何と言ったらいいんだと思うがそれを素直に伝えるのも癪なので強めに蹴りを入れておく。
「痛っつ。なんだよシーフ…でも本当にどうしようか。あの炎のブレスは厄介だよ。流石に僕でも斬る事は出来ない」
「なんだその他の物なら斬れます的なのは…まぁいいか。あ、あれはどうだ。無の太刀とかいう奥義は、前に言ってなかったか?極める前に爺さんが死んじゃったとかの」
シーフの発言にヘルメスは苦笑いを浮かべながら答える。
「それが答えだよ。そう簡単にできるものじゃない。僕も修業は続けてるんだけどね」
会話を続けていると龍が崖崩れの中から這い出て来る。
シーフは龍の首に付けられている魔道具を見てある事に気づく。
「なぁ、あの鱗のせいで斬れないのか」
「そうとも言えるし違うとも言えるね。龍種は鱗に自分の魔力を流して硬化させているんだ。それが無ければ僕だって苦労はしないよ」
つくづく自覚の無い自慢は腹が立つと思いながらも言葉を続ける。
「龍飼いの笛貸してくれ」
「あれは暴れさせるだけで効果は無かったじゃないか」
シーフはめんどくさそうに手で催促する。
「いいから。俺がこの笛を吹くタイミングで首を斬ってくれ。出来るか?」
「シーフ君に頼まれたら出来ないとは言えないかな」
その爽やかでかっこいい顔を見せつけ自信満々に答える。
早く行けと尻を蹴り上げヘルメスを戦場へと再び向かわせる。
この世界には月も太陽もある感じです。
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