フォレッドの町に着いた翌日、乾いて冷たい風に起こされ目が覚める。
隣を見ると昨日と同じ姿で寝ているヘルメスが見える。
起こさない様にそっと部屋を出て散歩をする為に階下へと向かう。
出口へと行く為に食堂を通るとそこには朝ご飯を美味しそうに頬張るエナベルが居た。
「こんな早くからどこへ行くのじゃ」
「それを言うならこんな早くからなんでメシ食ってんだよ。よく作って貰えたな」
「お願いしたら特別に作ってくれたのじゃ」
自分の可愛らしさを最大限に利用した作戦にシーフは苦笑いしながらエナベルが完食するまで席に着き待つ。
エナベルが食べ終わると散歩に誘いカラッとした日光を浴びながら道を歩く。
「んーやっぱり珍しいのじゃ」
「木造建築か?まぁこの世界じゃあんま見ないかもなぁ」
「なんじゃその言い回し。どこか他人行儀じゃないかの」
シーフは少しギクリとしながらも平静を装い答える。
「そーゆーのが好きなんだ。あんま気にすんな。それだったらお前の産まれてから1年の方が変な話だろ」
話の流れをさり気なく逸らし自分の事を答えないようにする。
「それはそのまま意味じゃ。分からなくとも良いわ。いずれ知る事になるじゃろうしなぁ」
それから特に話す事も無いので無言で町を回る。
エナベルはこのフォレッドの町が珍しいのか昨日のワーゲンでの様に目を輝かせて歩いている。
傍から見ると子供が只はしゃいでる様にしか見えないがそれを言うと面倒くさそうなのでシーフは心の内に秘め表情だけニヤニヤさせる。
「なんじゃ。なんの顔じゃ。何か不快なのじゃ」
ジト目で見られるが何でもないと切り返しその場を切り抜ける。
眠気が覚めるぐらい町を歩いたら宿へと戻る。
宿へと戻ると少し怒り気味のヘルメスが食堂で腕を組んで待ち構えてた。
「朝起きら居なくなってたら驚くじゃないか。全く僕を置いて外へ行くのはいいけど書き置きぐらいしてくれても良かったんじゃないかい?」
どうやら1人仲間外れにされて拗ねているようだ。
最年長なんだからそんな子供っぽい事しないで欲しいが軽く謝りヘルメスが朝食を食べ終わるまでみんなで席に座り待つ。
「どうする?疲れが取れない様ならまだこの町に少し居てもいいけど、僕的には進みたいところなんだけどさ」
「俺も別いいぜ。特に何もしてないしな」
「儂もいいのじゃ」
「それなら出発しようか。僕達の目的地はウェストだけど分かるかい?」
シーフとエナベルは首を横に振る。
「ウェスト領の端にある町だよ。ここからは1週間もすれば着くかな?街道も整備されてるしもう少し早いかもね。じゃあ宿を引き払ってくるよ。先にワーゲンへ向かっていてくれるかい?」
シーフ達がワーゲンに着いてからすぐヘルメスも合流し旅は再開される。
今回の旅の目的地へと、シーフの目的は果たされぬまま。
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