「それにしても凄いのじゃ。この大きさの龍が首チョンになってるのは初めて見たのじゃ」
シーフ達3人は討伐した龍の亡骸を前に集まり観察する。
エナベルが連れて来てくれた衛兵達は奥で倒れている賊の処理をしてくれている。
「ヘルメスがこースパッとな。凄かったぞ、あれは。いつもより強かった」
「あ、そうだよ。その事についてエナベルちゃんに聞きたい事があったんだ。外の魔力の循環を始めてから身体の調子が凄い上がったんだ。シーフ君も感じなかったかい?」
思い返しても戦闘を見守っていただけのシーフはその違いが分からない。
分からんとだけ答えてエナベルに話を振る。
「そんな事も分からんとはの。当たり前の事なのじゃ。自分の中に渦巻く魔力の濃度が上がったのじゃ。そりゃ身体能力も上がる。因みにウェストに戻ってもこの旧魔族領と比べれば劣るが強くなった実感はあると思うぞ」
そうドヤ顔を決めながら御高説を宜っていた。
「なるほど、本当に聞いた事も無かったよ。どうしてエナベルちゃんが知っていたかは気になるけどまぁ聞かないでおくよ」
「それは助かるのじゃ」
ヘルメスの詮索にエナベルは笑顔で切り返す。
シーフは小さくても女は怖いと感じながら我関せずを突き通し衛兵の作業を眺める。
程なくして衛兵達の賊捕縛作業は終わり帰路に就く。
帰り道は何事も起きず夕暮れの中ウェストまで到着する。
「シーフ君起きて着いたよ。ウェストの要塞だよ」
そこまで長い距離では無かったが思ったより疲れが溜まっている様で寝てしまっていた。
ヘルメスの方が疲れている筈なのにと少しばかりの対抗心と情けなさで
「あぁ」
と素っ気ない返事をしてしまった。
「今回は迎えは無いのじゃな」
「そうみたいだね。でも必要だったかい?」
少し不満そうなエナベルに対しにこやかな笑顔でヘルメスが諭す。
案内無しで要塞の様な屋敷に入る。
中には流石に執事がおりライトの所まで案内してくれた。
「おお!よくやってくれた。まさか1日で解決するとはな。しかも龍を退散させるで無く討伐か。流石はフォータの隠し玉だな」
出会い頭からテンションの高いライトにシーフは辟易しながらも自分が話すべきタイミングでも無いので活けられている何か分からない花を見て気を紛らわさせる。
「あはは、隠し玉って訳じゃないですよ。討伐も偶々です。実力では勝ててません」
「謙虚な姿勢も良いな。ますます欲しくなってくる。まぁそれは置いておいて休んでもらう前に聞いておかなければならん事がある」
ライトは真剣な表情に切り替え話し始める。
特に興味がないシーフとエナベルは部屋の端で活けられている花が何かを談笑していた。
「今回の賊が居ただろ。あいつ等のボスについてなんだが」
ヘルメスは襲撃される前の光景を思い出しその事を話す。
「うむ。そのボス、ペンデがペンデを含む賊23名がこう言うべきではないが貧民区の家屋で惨殺されているのが見つかった。恐らく行きに通っている筈なんだが」
ライトの眼光が鋭くなるのを感じながらヘルメスはいつも通りの調子で会話を続ける。
「僕たちでは無いですよ」
「うーむ、そうだよな。別に罪人共だから殺したところで罪にはならんが一応な。ま、そういう事があったんだ。で、だ、聞いてほしいのが聞き込みの結果変な情報があってな。-----が居たと。そんな訳は無いんだが一応な」
「……分かりました」
「話は以上だ。フォータの奴にはたんまり報酬を出しておけと伝えておいてやる。今日はもう休め」
話が終わったヘルメスはシーフとエナベルを連れ部屋を出る。
一抹の不安を抱えながら。
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