ウェスト領の北東に位置する門となる町フォレッドを出発してから約3日間で今回の旅の目的地に到着する。

目的地とはウェスト領の中央にしてライト＝ウェストが直接統治する町、ウェストである。

町にはどこまで続くか見えない壁で守られており王都アルザースを彷彿とさせる。

門を警備する守衛にヘルメスが紋章を見せる事ですんなり町に入る。

町は同じ領のフォレッドと違い建物は木だけ無く石も使用する木骨造となっていた。

ウェストは王都の機械的なイメージと違いどこか懐かしい、人が暮らしているのが伝わってくる様な温かい町並みだと感じる。

「このまま領主さんの所まで行くのか？」

シーフは荷台から御者席のヘルメスへと質問をする。

すると前から声だけが返って来る。

「そうだね。ライト様が部屋は用意してくれると思うよ。当初の予定と違って3人だから驚くかもしれないけどね。領主様だしそこら辺は大丈夫だよ」

シーフは御者席に若干見える整った顔に少しイラつきを覚えた為返事はしない。

「儂が増えたのが悪い言い方みたいじゃな。小僧」

ヘルメスはやれやれと頭に手を当てる。

「そんな事言って無いだろ…全く手の掛かる子供がもう1人増えるとは思わなかったよ」

そんなヘルメスの小言にシーフは反応し反論しようとした所でワーゲンが止まる。

「着いたよ。ここがライト様が住む屋敷だよ」

荷台から顔を出し見上げるとそこには要塞が屋敷と呼ぶには余りにも異質な建物が在った。

その要塞に色は無く所々に穴が開いており住処と呼んで良いものかシーフが困惑する程の建築物であった。

「これは立派な要塞じゃの。そうか、そうじゃな。ここは戦場であったのだな」

エナベルはなるほど合点がいったと心得顔で頷く。

「博識なんだね。シーフ君は知らないだろうけど今では忘れた人も多い人魔西南戦争の主戦力が集まっていたのがこの領なんだ。戦場はもう少し旧魔族領だったと聞くけどね。だからこの城も籠城戦も出来る様な設計なんだろう」

シーフは悔しいながらも知らなかった情報に何も言い返す事が出来ずそのまま黙り込む。

エナベルはどこか楽しそうにふむふむと頭を揺らす。

「ヘルメス様でございますかな。長旅ご苦労様でした。領主が客間にてお待ちでございます。ワーゲンは私が厩舎に運ばせて頂きます。ヘルメス様御一行はどうぞ城へ」

この要塞の執事である初老の男がそう案内しヘルメスがお礼を言って御者席から降りる。

シーフとエナベルの2人もそれに倣い荷台から降りヘルメスの後に続く。

「ヘルメス様御一行って」

シーフがそんな文句を口から溢す。

「そうだね。言っただろ領主様は人数の差なんて気にしないって」

「いや違うんだけどな」

文句が伝わらずニコニコしているヘルメスを見てシーフはこれ以上の言及を止める。

中へ入るともう一人の執事に出迎えられ客間まで案内される。

「こちらでございます。どうぞ」

そう言われ3人は客間に足を入れる。

中には鍛えた身体が良く分かる様な服に身を包んだおっさんが居た。

「いや、ご苦労ご苦労。ヘルメス君だね？エリッシュの野郎からは聞いてるよ。何でも息子よりも強い食客が居るとね。もうパーシヴァル家は出たんだろ。どうだ？ここで雇われないか」

大侯爵のライトは勢いのまま話を進めていく。

その勢いにヘルメスは圧倒されながらもやんわり断りを入れ会話を続ける。

「それでこれが今回エリッシュさんにお願いされたモノなんですけど。それとこれが手紙です」

そう言ってヘルメスは懐から小さな箱と手紙を出し差し出す。

ライトは箱と手紙を受け取り箱を一旦机に置き手紙を開ける。

手紙を開けると封蝋印が赤く光った鳥に変わり部屋を飛び回ってから消えた。

「あれって…」

「あれは大事な手紙に使われるものだよ。途中で開封されてないか。中身が変わってないかを確認するための物さ。貴族以外じゃ使う事はないね」

「いや、知ってたけど」

シーフは過去に聞いた事があった為、幻想的な光景に驚きはすれど既知であった。

だがヘルメスの目は親が子供を見るときに使うような優しいものでムカついたシーフはライトにバレない様にこっそりヘルメスの足を蹴る。

痛かったのかヘルメスが静かに睨んでくるがそれを無視しライトを見つめる。

手紙を読み終わったライトが再び箱を持ち話を始める。

「現在このウェストには危険が迫っているんだ」

唐突な発言に皆驚くが話を進める。

「その危険の対策としてエリッシュに送らせたのがこの箱の中身だ。中身は龍飼いの笛。つまり龍がこの町に向かっているという事なんだ」

名前：Thief

職業：無し

天啓：強奪・探知　(螂ウ逾槭?蜻ェ縺)

魔法：無し

剣技：無し

力：178

速度：120

魔力：7

知力：200