ダークスレイヤー──その名の通りのダークヒーロー。またの名を黒い人。鷹揚かつ硬骨な男と美しい眠り女達の冒険譚である。
何が起こるか分からない謎めいた冒頭からジワジワと世界へ引き込まれる。
それぞれ個性的な魅力を持つ眠り女達。
魔族の姫、エルフ、教導女、巨人、ゴブリン……種族も経歴も様々だが、共通点は心に穢れがないこと。
物語は眠り女達の厄介な問題を一つずつ片付けていく構成から成っている。その背景には大きな闇が控えており、どうやら世界の根幹にも関わってくるようだ。
注目すべきは世界の文化、種族、食事、宗教、下水道に至るまで緻密に作り込んでいる所。それが物語の面白みに安定感を与えてくれている。
また、人間の醜い面、一言で言えば煩悩だろうか。戦いの素因となっている点がさりげなく描かれている。
エンタメではあるが、哲学的な側面も持つ深みのある作品だと思う。