それから30分ほどベンチの上で休んでいると、星の体調もすっかり良くなった。さっきまで青ざめていた顔色も普段の顔色に戻っていた。だが、エミルはまだ心配そうな顔で星を見守っている。
しかし、そんなことは他所に星は昨日乗れなかったアトラクションを全て制覇しようとパンフレットを手に次に乗るアトラクションの方へと歩いて行く。
星がゴーカートの乗り場の方を指差した直後、パンフレットを持っている星の隣にいたエミルが慌ててパンフレットの上を指差した。
「ここ! 次はここに行きましょうか!」
「……ここですか?」
エミルが指差していたのは園内にいるキャラクター達が住んでいる家が置かれている区間がある。
星はエミルの申し出をすんなりと受け入れた。まあ、自分が調子を悪くして迷惑を掛けたという後ろめたい思いもあるからなのだろう。
だが、エミルかその場所を指定したのはエミルが行きたかったからではなく。少し前まで調子を崩していた星を気遣ってのことだ――さすがにゴーカートが前に乗った絶叫系のアトラクションよりも緩いとは言え、左右に激しく揺れることに変わりはない。それによって星の体調が再び悪化することを気にしているのだ。何故なら、エミルが星を遊園地に連れてきたのは彼女に楽しんでもらう為だからだ。
ゴーカートからキャラクター達の家がある場所へと移動すると、それぞれのキャラクターに合わせた雰囲気の家が建ち並んでいる。
そこはまさにメルヘンな世界が広がっていた。最初はあまり期待していなかった様子の星だったが、いざキャラクター達の家を目の前にするとやっぱり興奮を抑えられない。しかも、家の中にはキャラクター達もいる場合もあり、更にファンタジーな雰囲気を引き立てていた。
ゴーカートに乗ろうとしていたことなどすっかり忘れて家の中にいたキャラクター達と写真を撮って笑顔を見せている。
楽しそうに次々とキャラクターの家を転々としてキラキラとした瞳で細部まで作り込まれた家の中を見ながらキャラクターがいたらエミルと2人でアレックスに写真を撮ってもらうという感じで、あっと言う間に全ての建物を回り終わった。
キャラクターの家を回り終えた時には、完全に星の体調も良くなっていた。
その様子を見ていたエミルは星に向かって言った。
「それじゃ、今度はゴーカートに乗りに行きましょうか!」
「はい!」
「その後は時間の許す限り遊び尽くすわよー!!」
「はい!!」
彼女のその言葉に力強く返事をした星の手を引いてエミルが早歩きで進んで行く。
その後はゴーカートに乗り、園内のアトラクションを次々と乗り継いでエミル、星とアレックスで遊園地のアトラクションを楽しみ尽くした――。
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