【13万字完結】結婚相手は魔王の尖兵! 異世界の凶悪敵女魔操師、偵察という名目で旦那さんと日本国内旅行&食い道楽

異世界と日本を行ったり来たりしながら、調査旅行で伝説の魔物を発見せよ!
ジャワカレー澤田
ジャワカレー澤田

28 次の行き先は愛知県だ!

公開日時: 2022年7月3日(日) 16:00
文字数:1,025

「明日は東名高速を走りに行くぞ!」


 孝介は帰宅早々、真夜にそう告げた。絵本の制作に打ち込んでいた真夜は目を点にしながら、


「いきなり何言ってるのよ?」


 と、返した。


「明日は私、デイラボッチの絵本を仕上げなきゃいけないんだけど……」


「そんなのは後回しにできるだろ。とにかく明日、西尾市へ行って河童の調査をしに行くぞ」


「河童の調査!?」


 真夜の目の色が変わった。「河童の調査」と聞くと、やはり無視はできない。


 23区内に河童が生息していることは既に判明した。が、東京以外の大都市——大阪や名古屋、札幌、福岡あたりにも同様に河童がいるとしたら、魔王の尖兵としては何が何でも調査しなければならない。具体的な容姿や東京の河童との違いも、余さずスケッチブックに描かなくては。


「面白そうね。で、その西尾市ってのはどこなの?」


「名古屋の手前だ。この前言った静岡市よりも遠いが、苦になる距離じゃねぇさ」


「そう――」


 真夜は不敵な笑みを浮かべた。


 今回もまた、孝介が私の偵察活動に協力してくれる。この男が私の手足となって働いてくれる。ふふふ、いい気味……。


「せっかくだから、今回は泊りがけで行くぞ。名古屋のホテルで1泊だ」


「名古屋で?」


「あそこは都内とは違って地元メシがたくさんあるからな。お前の好きな街だ」


 そう言われた真夜は、


「何言ってるのよ。そんなの、河童と何の関係もないでしょ?」


 と返すが、その合間に小さく舌なめずりをした。


 名古屋って、美味しい赤味噌料理があるのよね。


 真夜にとって、名古屋は未知の都市ではない。2年前に孝介と旅行したことがある。その際に真夜は中京圏名物の赤味噌を使った料理に舌鼓を打ち、名古屋の地酒まで飲んでハイテンションな夜を過ごした。もっとも、途中から記憶がすっ飛んでいるが……。


「真夜、お前本当に分かりやすい女だよな」


「え?」


「赤味噌料理思い出してヨダレ垂らしてやがる」


「なっ!?」


 真夜は咄嗟に口元を押さえた。下唇の端を指で確認する。が、どうやら口内からの液体は漏れ出ていないようだ。


「はっ! テメェがヨダレ垂らしてるかどうかってことも分かんねぇのか、真夜」


「だ……騙したわね!」


 真夜は顔を紅潮させ、


「よ、よくもよくもよくも! コウのくせに、私を侮辱するなんて!」


 と、右手の爪を立てて孝介の顔面を引っ掻いた。「バリッ!」という痛々しい音の直後、


「ギャーッ!」


 孝介は叫びと共に悶絶の壺に落ちた。


「当然の報いよ! 私をバカにしたことを反省しなさい、ベロベロバ~ッ!」

読み終わったら、ポイントを付けましょう!

ツイート