「夕霧と伊左衛門の物語に手繰りよせられたのは、赤い地獄の「えにし」でした」
【あらすじ】
「夕霧物語」(禿の伊左衛門による名妓夕霧太夫の昔語り)
「辻沢ノーツ」(クロエが記録するフィールドノート)
ノタクロエは社会学を専攻してフィールドワーカーを目指す大学3年生。
所属する鞠野ゼミの夏休みの課題はフィールドワーク実習。
クロエは挨拶とか準備とかしなければならないのに5月になってもフィールドワーク先が決められないでいた。
そんなクロエに鞠野先生が勧めてくれたのが辻沢だった。古くは遊郭であり吸血鬼伝承が残る特殊な地域だが、N市の衛星都市としてベッドタウンとなり、コスプレで賑わうヴァンパイア祭りが有名になったりと現代化著しいフィールドでもあった。
他に行くあてのないクロエは、友人のミヤミユとサキと一緒に辻沢にフィールドに入る事を決める。連休中、鞠野先生に町の協力者への挨拶に同行してもらうも、クロエの気分はドナドナ状態。
夏休み、フィールドに入ったクロエを待っていたのは、気味の悪い青墓の杜、何かが潜んでいそうな地下道。拠点にしている屋敷の吸血鬼みたいな人たち。そして秘密のサバゲーにはまる他所からの暗い顔をしたゲーマーたちだった。
フィールドがその闇の姿を現してくる中、クロエはフィールド調査で知った「夕霧物語」がいつも見る夢と同じ内容だと知る。
そして、自分とそっくりの少女ユウの出現によりクロエは思ってもいない方向へ導かれてゆくのだった。
「辻沢日記」(ミヤミユの日記)
かたや、ミヤミユは「鬼子」のユウの「鬼子使い」として秘密の生活を送っている。ユウの奔放な生きざまに振り回されつつ必死にその使命を全うしようとするミヤミユだった。しかしユウは自分が「鬼子」であることを早いうちから自覚し、その宿命から逃れる方策を練る中で「夕霧物語」に出てくる「けちんぼ池」の存在にその鍵を見出してゆく。自分との関係をユウがどう思っているのか不安を抱えつつ、これまでユウと生きてきた壮絶な半生を振り返る。
夕霧と伊左衛門
ユウとミヤミユ
クロエと・・・
3つの赤い絆が象なすもの、それは・・・。
【構成】
長編。準備原稿528枚を改訂しながら投下します。
前半はクロエのフィールドノート「辻沢ノーツ」と合間の「夕霧物語」、
後半はミヤミユによる「辻沢日記」になります。