機械仕掛けの魔術師

The end of the illusion
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Ψ8・人工魔術師の研究記録

公開日時: 2021年3月24日(水) 21:38
文字数:2,225

「大丈夫? ミイスケ」


 自ら発生させられる、自らを守るためだけの《虚空壁》を解き、地に降りて、自らは発生させられない三つのシールドで守られていたミイスケに、ローラーで駆け寄るアリアーゼ。


「ああ、お前のシールドのおかげで、落ちた衝撃も大した事なかったよ、でも一時故障は?」

「一瞬しか発動させなかったから、一瞬の物だったわ」

「そっか」


 どうやらマキナが、自力で技術を使用した時の一時故障の時間は、それの発動時間と関係しているらしい。

 そして上を見上げると、綺麗に切られたような、施設に空いた巨大な風穴。


「本当に恐れ入ったわ」

 もうさすがに死んだと思ったが、そんな事は全然なかった女性の声に、再び構えるミイスケ達。

「あなたは爆弾じゃなかったのね?」

「ええ、そうゆう風に見せかけてただけ、マキナを騙せるなんてわたしも本当やるわ」

 女性は純粋にかなり喜んでいるようだった。


「それにしてもノエルが言ってた通り、本当に若いのね、お姉さんちょっとびっくりよ」

 さっきまでは殺そうとしていたくせに、今は妙に馴れ馴れしい女性。

「別に何も聞いてないけど」

 言いつつ、やっぱりノエルの仲間だったのかと納得するミイスケ。

「そんなに怖い顔しなくても大丈夫よ、武器は全部さっきのでパアだから」

 《声》で本当のようだとアリアーゼからの知らせも受けるミイスケ。


「ところで自己紹介がまだだったわね、ボウヤ。わたしはエレン。そして後ろの彼がケディよ」

 ミイスケだけでなく、アリアーゼもまったくその接近に気づけなかった。

「動くな」

 いつの間にかすぐ後ろにいたノエルを背負った男、ケディはミイスケの首に古くさいナイフを当て、ミイスケは身動きが出来なくなった。

「ミイスケ」

 事態の深刻さを物語る心配そうなアリアーゼの、音の声。

「下手な事は考えない方がいい、ノエルほどの力はないが、俺も魔術師だ。この距離なら、そこのマキナで何かをされる前に確実にお前を殺せる」

「ならなんですぐに殺さない、ノエルもそこのエレンって人も、明らかに俺に話の機会も与えずに殺すつもりだったよ」


 ミイスケの言葉は最もだった。今は彼らにとって、見逃せば二度とないかもしれない、これまでで一番のチャンスである。


「おれはそこのイカレ女とも背中の無能とも違って、比較的まともな構造の脳を持っているんだ、わざわざここに来た理由を聞きたい」

 妙に納得できる回答であった。

 確かに仰る通り、突然容赦なく命を狙ってきたノエルやエレンに比べると、彼はかなりまともな人のようだ。

 実に助かる話である。


「理由を聞いたら見逃してくれるの?」

「その理由次第だな」

 ミイスケはアリアーゼの方を見る、アリアーゼも《声》で、今は正直に話すしかないと告げた。

「大統領がゴーストに狙われてる、それを助けに来た」

 さすがにケディもエレンもかなり意外そうだった。

「それが本当だとして、どうやってその事を」

「言っても多分信じないよ」

 というより信じられる訳がない、少なくとも逆の立場ならミイスケは信じないだろう。

 ゴーストが突然自分の前に現れ、それだけを告げて消えたなど。

「だが仮にそれが本当だとしても、俺達には別に関係ない、大統領が殺されようともな、お前には残念な話だ」

「やめ……」

 アリアーゼの叫びも、ミイスケの震えも止まった。


 ケディもエレンも唐突にその場に倒れたのである。


「悪運の強い子ね」

 どうやったのか、二人を一瞬で気絶させた人物のしわがれ声。

「助けて、くれたの?」

 純粋な疑問だった。

 突如として現れ、人を殺しては消えるゴースト。

 でもミイスケは殺されず、今回は逆に命を救われたのだ。

 また、と言うべきかもしれない。


「お前はついでだがな」

 あくまでメインの用事は大統領殺害なのだろう。

「彼は殺させない」

 強く出るミイスケ。

「少し、ついて来て」


 また意外な言葉だったが、自分達がゴーストに対して何をするにしても、今は一緒にいるのがいいとミイスケもアリアーゼも判断した。


ーー


 それからしばらく歩いた後、とある部屋の前で止まったゴーストは、またしてもどうやったのか、ロックのかかっているはずのドアを壊しもせず、普通に開けた。


「この部屋、資料室?」

 入ってすぐに気づくアリアーゼ。そしてミイスケも彼女の言葉によく納得する。

 原始的な印刷物やデータディスクで壁一面が飾られているのだ。

 そしてデータディスクの一つを手に吸い寄せ、それを天井へと投げるゴースト。


 ディスクは天井に当たったと思ったら消えてなくなり、立体映像のモニターが部屋の壁に映し出された。


「人工的な魔術師の製造研究についての資料」

 モニターの一番上部に表示されている文字を読み上げるミイスケ。

「これ政府の研究の記録」

「だいたい十三年前の事だ」

 ゴーストの言葉に一瞬ドキリとするミイスケ。


 十三年前。

 つまり捨て子だったミイスケとスグリがジュウクと出会った時期。

 

 さらにゴーストは、「研究記録七十六」なる資料の 興味深げな一部を表示させた。


『これまでの実験と今後について』

(これまでの研究では、後天的に魔術を身につける事に成功し、なおかつその健康な状態を保っている者は第四世代の三人のみ。その誰も当初の予定からはかけ離れすぎている。

三人共を殺してその遺体を利用する許可を求めます。

もう時間は少ないのでお早い決断を)


『回答』

(要望を許可する)


『被験者番号二十八に対しての実験成功の報告』

(ラーシー博士のクローン達二体を媒体として、第四世代の特殊系統細胞を結合。

実験成功につき報告)

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