「大丈夫? ミイスケ」
自ら発生させられる、自らを守るためだけの《虚空壁》を解き、地に降りて、自らは発生させられない三つのシールドで守られていたミイスケに、ローラーで駆け寄るアリアーゼ。
「ああ、お前のシールドのおかげで、落ちた衝撃も大した事なかったよ、でも一時故障は?」
「一瞬しか発動させなかったから、一瞬の物だったわ」
「そっか」
どうやらマキナが、自力で技術を使用した時の一時故障の時間は、それの発動時間と関係しているらしい。
そして上を見上げると、綺麗に切られたような、施設に空いた巨大な風穴。
「本当に恐れ入ったわ」
もうさすがに死んだと思ったが、そんな事は全然なかった女性の声に、再び構えるミイスケ達。
「あなたは爆弾じゃなかったのね?」
「ええ、そうゆう風に見せかけてただけ、マキナを騙せるなんてわたしも本当やるわ」
女性は純粋にかなり喜んでいるようだった。
「それにしてもノエルが言ってた通り、本当に若いのね、お姉さんちょっとびっくりよ」
さっきまでは殺そうとしていたくせに、今は妙に馴れ馴れしい女性。
「別に何も聞いてないけど」
言いつつ、やっぱりノエルの仲間だったのかと納得するミイスケ。
「そんなに怖い顔しなくても大丈夫よ、武器は全部さっきのでパアだから」
《声》で本当のようだとアリアーゼからの知らせも受けるミイスケ。
「ところで自己紹介がまだだったわね、ボウヤ。わたしはエレン。そして後ろの彼がケディよ」
ミイスケだけでなく、アリアーゼもまったくその接近に気づけなかった。
「動くな」
いつの間にかすぐ後ろにいたノエルを背負った男、ケディはミイスケの首に古くさいナイフを当て、ミイスケは身動きが出来なくなった。
「ミイスケ」
事態の深刻さを物語る心配そうなアリアーゼの、音の声。
「下手な事は考えない方がいい、ノエルほどの力はないが、俺も魔術師だ。この距離なら、そこのマキナで何かをされる前に確実にお前を殺せる」
「ならなんですぐに殺さない、ノエルもそこのエレンって人も、明らかに俺に話の機会も与えずに殺すつもりだったよ」
ミイスケの言葉は最もだった。今は彼らにとって、見逃せば二度とないかもしれない、これまでで一番のチャンスである。
「おれはそこのイカレ女とも背中の無能とも違って、比較的まともな構造の脳を持っているんだ、わざわざここに来た理由を聞きたい」
妙に納得できる回答であった。
確かに仰る通り、突然容赦なく命を狙ってきたノエルやエレンに比べると、彼はかなりまともな人のようだ。
実に助かる話である。
「理由を聞いたら見逃してくれるの?」
「その理由次第だな」
ミイスケはアリアーゼの方を見る、アリアーゼも《声》で、今は正直に話すしかないと告げた。
「大統領がゴーストに狙われてる、それを助けに来た」
さすがにケディもエレンもかなり意外そうだった。
「それが本当だとして、どうやってその事を」
「言っても多分信じないよ」
というより信じられる訳がない、少なくとも逆の立場ならミイスケは信じないだろう。
ゴーストが突然自分の前に現れ、それだけを告げて消えたなど。
「だが仮にそれが本当だとしても、俺達には別に関係ない、大統領が殺されようともな、お前には残念な話だ」
「やめ……」
アリアーゼの叫びも、ミイスケの震えも止まった。
ケディもエレンも唐突にその場に倒れたのである。
「悪運の強い子ね」
どうやったのか、二人を一瞬で気絶させた人物のしわがれ声。
「助けて、くれたの?」
純粋な疑問だった。
突如として現れ、人を殺しては消えるゴースト。
でもミイスケは殺されず、今回は逆に命を救われたのだ。
また、と言うべきかもしれない。
「お前はついでだがな」
あくまでメインの用事は大統領殺害なのだろう。
「彼は殺させない」
強く出るミイスケ。
「少し、ついて来て」
また意外な言葉だったが、自分達がゴーストに対して何をするにしても、今は一緒にいるのがいいとミイスケもアリアーゼも判断した。
ーー
それからしばらく歩いた後、とある部屋の前で止まったゴーストは、またしてもどうやったのか、ロックのかかっているはずのドアを壊しもせず、普通に開けた。
「この部屋、資料室?」
入ってすぐに気づくアリアーゼ。そしてミイスケも彼女の言葉によく納得する。
原始的な印刷物やデータディスクで壁一面が飾られているのだ。
そしてデータディスクの一つを手に吸い寄せ、それを天井へと投げるゴースト。
ディスクは天井に当たったと思ったら消えてなくなり、立体映像のモニターが部屋の壁に映し出された。
「人工的な魔術師の製造研究についての資料」
モニターの一番上部に表示されている文字を読み上げるミイスケ。
「これ政府の研究の記録」
「だいたい十三年前の事だ」
ゴーストの言葉に一瞬ドキリとするミイスケ。
十三年前。
つまり捨て子だったミイスケとスグリがジュウクと出会った時期。
さらにゴーストは、「研究記録七十六」なる資料の 興味深げな一部を表示させた。
『これまでの実験と今後について』
(これまでの研究では、後天的に魔術を身につける事に成功し、なおかつその健康な状態を保っている者は第四世代の三人のみ。その誰も当初の予定からはかけ離れすぎている。
三人共を殺してその遺体を利用する許可を求めます。
もう時間は少ないのでお早い決断を)
『回答』
(要望を許可する)
『被験者番号二十八に対しての実験成功の報告』
(ラーシー博士のクローン達二体を媒体として、第四世代の特殊系統細胞を結合。
実験成功につき報告)
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