【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう

~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1060話 アイ・アム・○○○○○○

公開日時: 2023年6月22日(木) 12:28
文字数:2,115

 リオンがしつこい。

 俺の『ダークフレイム』をもってしても、彼の心を折ることができなかった。

 改心してくれれば優秀な研究者になれるだろうに、残念である。


「ふん……。お前ごときに、我が秘奥義を見せることになるとはな。光栄に思うがいいぞ」


「クッハッハ! 秘奥義がどうした! 龍神ベテルギウスの力を宿した私を倒すことなど、不可能だ!!」


「――【ダークフレイム】」


 俺はリオンに向けて、闇の炎を放つ。


「おおっと! そいつはもう見たぞ! 避けてしまえば、どうということは――」


 バッシャーン!

 リオンが余裕の態度で避けようとしたその時、彼の足下の海が爆発した。

 その衝撃で、リオンは大きく体勢を崩す。


「くっ……!? 何事だ!!」


「――【水竜牙弾】」


 俺はリオンの隙を逃さず、水魔法を発動した。

 海の中から現れた水でできた竜が、リオンに向かって突進していく。


「それが秘奥義とやらか!? 私には効かぬ!!」


 リオンが水竜を殴りつける。

 しかし、水龍の勢いは全く衰えなかった。


「ぐっ……! な、なぜだっ!? これほどの水魔法……どうしてこれまで使ってこなかった!!」


「…………」


 俺は答えない。

 理由は単純明快。

 俺の正体がハイブリッジ男爵だとバレないようにするためだ。


 ハイブリッジ男爵として最も有名なのは、冒険者としての二つ名にもなっている『紅剣』である。

 これは絶対に出すわけにいかないので、俺はここまで鉄剣を使用してきた。


 次に有名なのは火魔法。

 ダダダ団アジトでの戦闘では使用せず、この海上での戦いでも普段とは方向性を変えた『ダークフレイム』を使用している。


 紅剣や火魔法の次に有名なのは、水魔法、治療魔法、闘気あたりだろう。

 見せてもすぐにはハイブリッジ男爵と結び付けられないだろうが、複数のものを見せればいずれ勘付かれる可能性がある。

 そのため、ここまでは『ナイトメア・ナイト』として影魔法を中心に据えて戦ってきた。


 そして、今の海上戦。

 引き続き影魔法でリオンを打倒できれば理想的だったが、英霊ベテルギウスの力はなかなか厄介だ。

 そのため、火魔法に続いて水魔法も解禁したというわけである。

 幸い、水が豊富な戦場であるため、普段よりも出力を上げることができる。

 これまであまり使ってこなかった高度な水魔法を使えば、正体に気づかれる可能性は低い。


「おおおおぉっ!? おのれ……なんという厄介な魔法なのだ……!! 実体を持たぬ液体の竜め!!!」


 リオンが苦悶の声を上げた。

 英霊のパワーや打たれ強さは厄介だが、こういう搦め手には弱いよな。

 いや、英霊本人が肉体を操作していれば、何かしらの打開策を出してくるのだろうが……。

 肉体の権限がリオンにある以上、せっかくの性能が活かしきれていない。


「ふん……。力に溺れし者は、深淵なる闇に堕ちていくのみ」


 俺はポツリと呟く。


「くっ……! 調子に乗るな! 鬱陶しい魔法だが、私の肉体にダメージを与えることはできんぞ!!」


「想定内だ」


「なにぃ……? ま、まさかこのまま時間切れまで粘って、英霊纏装の効力が切れるのを待つというのか!? こ、この卑怯者め!!」


 リオンが顔を青くする。

 確かにそれもアリだが、一番の目的は違う。

 俺は彼を見下ろしつつ、こう言った。


「言っただろう? 我が秘奥義を見せると」


「なにっ!? 今の水魔法が秘奥義ではなかったのか!?」


 リオンが目を見開く。

 俺は構わず、とっておきの火魔法の詠唱を始める。

 長い長い詠唱を続けていく。


「ば、バカな……!? なんだこの火の魔力は!? 太陽そのものを生み出そうとでもいうのか……!?」


 リオンが動揺する。

 太陽は明らかに言い過ぎだが、常人の感覚としてはそれぐらいの熱量を持つと錯覚してしまうのも仕方ない。

 それほど多くの魔力が、俺の手の中で渦巻いているのだ。

 詠唱を半ば以上終えた俺は、リオンに語りかける。


「――お前はどう思う?」


「な、何がだ……?」


「魔法使いは、攻撃に長けた戦闘職だ。しかし一方で、防御を苦手とする魔法使いは少なくない」


「それが……どうした……!」


「なぜだと思う?」


「知るか……!」


「それはな、防御魔法を習得する必要性が低いからだよ。攻撃魔法を高めれば、防御魔法を会得する必要がない。例えばCランク冒険者なら、普段の仮想敵であるゴブリンやクレイジーラビットを一撃で葬ることができれば十分だ。防御の機会はない。攻撃は最大の防御なり――というやつだ」


「……」


 リオンは黙り込む。

 おそらく、彼の頭の中では高速で思考が働いていることだろう。


「Cランク冒険者ですらそうなのだ。ダークガーデンの首領たる『ナイトメア・ナイト』ともなれば――いったい、どれほどの威力の攻撃魔法を身に着けていると思う?」


「――ッ!?」


 リオンがハッとした表情を浮かべる。

 俺はニヤリと笑った。


「理解できたか? つまり、今からお前を葬るのは、ただの魔法ではない。ダークガーデンの首領が放つ究極の魔法だ」


「ま、待て! 待て待て! その魔法の出力はいくら今の私でも――」


「――【アイ・アム・ダイナマイト】」


 ドガアァーーーーーーンッ!!!!!

 次の瞬間、大爆発が起こった。

 凄まじい衝撃波が辺りを襲う。

 爆発の中心にいる俺は、自分の魔法に対する耐性があるためノーダメージだ。

 一方、リオンの方は――

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