「おらあっ!!」
俺は『紅剣アヴァロン』を一閃する。
斬撃が飛ぶが、ポセイドンの石像は魔力を込めた水壁を作って防いだ。
「ちっ!」
『甘イナ! ――【大海嘯(だいかいしょう)】!!』
ポセイドンの石像が吠えると同時に、周囲一帯の水が激しくうねった。
それらは巨大な津波となって、俺に迫り来る。
「うおっ!?」
俺は慌てて逃げるが、津波はなおも追いかけてくる。
どうやら、水の動きを操る魔法らしい。
さすが海神を名乗るだけあって、水系の魔法はお手の物ということか。
「ぐあっ!?」
俺は海流に呑み込まれる。
凄まじい質量だ。
激流の中で揉まれる木の葉のような気分だった。
「ぐっ……! はぁ、はぁ……!!」
俺はなんとか水流から脱出する。
だが、全身を強く打ち付けてしまったらしい。
身体が思うように動かなかった。
『ドウシタ? ソンナモノカ?』
ポセイドンの石像が挑発してくる。
俺は立ち上がった。
「この野郎……! この呪鎖さえ外せれば、お前なんか……!!」
俺はポセイドンの石像を睨む。
魔力と闘気が抑え込まれていなければ、もっと楽に戦えるのだが……。
『フム……。確カニ、呪鎖ノ影響モ大キイヨウダ。ソロソロ頃合イダナ。――【海流爆陣】!!』
ポセイドンの石像が吠える。
すると、俺の周囲を取り囲むように魔法陣が現れた。
前後左右だけじゃない。
上にも下にも、俺を取り囲むように魔法陣が浮かんでいる。
『サア! 踊レ!!』
ポセイドンの石像が言う。
それと同時に、俺の周囲の魔法陣から水塊が放たれた。
「くっ……!?」
俺は咄嗟に避ける。
だが、避けた先にも水塊が迫っていた。
「ちっ!」
俺は剣で水塊を弾く。
しかし、防戦一方なのも確かな事実だ。
このままではジリ貧だろう。
何とか状況を打開しないといけないのだが……。
『ソコダ! 【海流爆陣】!!』
「がっ!?」
俺の周囲に浮かんでいた魔法陣から、追加の水塊が射出される。
俺は防ぎきれずに被弾してしまった。
ダメージ自体は大したことないが……。
体勢が崩れてしまっている。
『サア! 仕上ゲダ!!』
ポセイドンの石像が言う。
そして、魔法陣から水塊が放たれた。
『【殲景・海流爆陣】!!』
「がはっ!?」
俺は四方八方から迫る水塊を食らってしまう。
『ハハハハハッ!!』
ポセイドンの石像は笑う。
俺には為す術がない。
激流の中に揺蕩う木の葉のようなものである。
ただ、攻撃を受け続けるしかなかった。
「ちょ、ちょっと待ってくれ……!!」
『待タヌ!』
「ぐおおおぉっ!?」
俺は悲鳴を上げる。
ポセイドンの石像からの攻撃が止む気配はない。
「ぐ……ぐぐっ……」
意識が朦朧としてきた。
もはや、魔力や闘気で最低限の防御をするだけで精一杯である。
『フム……。随分ト頑丈ダナ……。モウヒト押シトイッタトコロカ』
ポセイドンの石像が言う。
奴はまだまだ本気ではないのだろう。
海神の名は伊達ではない。
本当に、厄介な相手だ。
「……ん? 待てよ……。なんだ、この力は……?」
俺はふと気づいた。
四方八方から攻撃を受け続けているにも関わらず、不思議とパワーが漲ってくるのだ。
俺の中を流れる闘気や魔力、そして聖気……それらの出力が徐々に増してきているのが分かる。
これはいったい……?
読み終わったら、ポイントを付けましょう!