「なぁ、カゲロウ。泣かないでくれよ。俺は別に、君を殺したりはしないからさ……」
「ひぐっ……。ほ、本当でしゅか?」
カゲロウがグズりながらも顔を上げる。
彼女は涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにしていた。
「本当だとも。だから、他の人たちも何とか落ち着かせて――ん?」
俺はそこで言葉を止めた。
周囲の異変に気付いたからだ。
「なんだ……? 肌色……?」
視界に映る肌色の比率が増えている気がする。
俺はそこでようやく、周囲の忍者たちの行動に気が付いた。
「な、なんだこれは!?」
俺は思わず叫んだ。
そう……彼女たちは全裸になっていたのだ!
「あばばばば……。お、お許しを……」
「この通り、抵抗の意思はありません……」
「殺すなら……せめて楽に殺してください!」
「そ、そうだ! 私の胸は大きいですから……。孕み袋として生かしてください!!」
全裸の忍者たちは土下座して命乞いをしている。
俺は彼女たちに背を向け、カゲロウの方に顔を向けた。
「これは……どういうことなんだ? なんでみんな裸になっているんだ?」
「あばば……。そ、その……あなた様への謝罪と、誠意の証として……」
「謝罪?」
俺は首を傾げる。
ひょっとして、彼女たちは俺に危害を加えたことがあったのだろうか?
俺の記憶障害は彼女たちに起因していたりするのか?
記憶があやふやなので特に怒りなどは感じていないのだが……。
「はい。あ、あの……もしよろしければで良いのですが……」
「ん?」
カゲロウも同じく、いつの間にか全裸になっていた。
彼女は恥ずかしそうに開脚し、口を開く。
「その……体を捧げる代わりに許していただけないかと思いまして……。わ、私……処女なんです」
「へ? あー……」
俺は思わず間の抜けた声を出した。
そういうことか……。
要するに、性的な意味で俺を誘っているらしい。
「見くびるな。俺は漢の中の漢だ。仮に俺たちの間に因縁があったとして……それに付け込むほど落ちぶれてはいない」
俺は毅然とした態度で答える。
記憶があやふやでも、人としての倫理観まで失ったわけではない。
「で、でも……」
カゲロウは諦めずに食い下がる。
彼女の視線は、俺の股間に向いていた。
「体は正直ですよ? ほら、こんなに……」
「こ、これは違う! いや、確かに臨戦態勢になってはいるが……それはだな……!」
俺は慌てて弁明する。
イマイチ決まらない……。
体が反応してしまっていたとは……。
だが、これはただの生理現象だ。
全裸の女性忍者たちが、俺の周りで土下座している……。
この状況で、興奮しない男がいるだろうか?
いや、いない。(反語)
「お、俺に近づくな……!」
俺はカゲロウを押しのけようとする。
だが――ふにゅん。
「あ……」
俺は思わず声を漏らす。
カゲロウの胸は……とても柔らかかった。
い、いかん!
そんなことを考えている場合ではないのに……!
「ほ、ほら! やっぱりお求めじゃないですか! いいですよ、これで命が助かるのなら安いものです……」
「いや、だから……。そんな悲壮な覚悟で迫られても、こっちの良心がだな……」
ど、どうする……?
俺は……どうすればいいんだ?
読み終わったら、ポイントを付けましょう!