【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう

~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
猪木洋平@【コミカライズ連載中】

903話 フレンダの記憶復元?

公開日時: 2023年1月15日(日) 12:07
文字数:2,234

 フレンダや月に加護(小)を付与してから、数日が経過した。

 西の森の狩りは順調だ。

 連日のように狩りを行っている。

 俺はたまに顔を出す程度だが、雪月花やトミー、アランはほぼ皆勤だ。

 今日も元気に森に入っていることだろう。


「さて……。準備はいいな? フレンダ」


 俺は、ハイブリッジ男爵邸の第二リビングでそう呟いた。

 ここは大型クラン『ビリオンズ』の活動拠点でもある。

 仲間と何かする際は、ここを使うことが多い。

 今は、フレンダ、アイリス、サリエがこの場にいる。


「あは~。なんだかドキドキしてきたよ。本当に大丈夫なのかな?」


「成功するとは限らない。だが、もし失敗しても悪影響はほとんどないはずだ」


 俺たちが何をしようとしているのか?

 それは、フレンダの記憶の復元である。

 治療魔法には、記憶喪失を治す魔法があるのだ。

 ナーティアやパームスの記憶喪失を治療した実績もある。


 もちろん、高度な技術を必要とする魔法なので、100パーセント成功するとは限らない。

 だが、試す価値はあるだろう。


「じゃあ、始めるぞ。サリエ、アイリス。準備はいいか?」


「はい」


「オッケー」


 俺たち3人は魔力の波長を合わせていく。

 合同魔法の出番だ。


 ミリオンズには本来、他にも治療魔法の使い手がいる。

 マリアとリーゼロッテだ。

 合同治療魔法の出力だけを追求するならば、彼女たちも含めて5人で挑戦するのがいい。

 1か月ほど前に、ノノンの父である”岩塊”のニッケスの手足を治療した際には、5人での合同魔法『リザレクション・ヒール』を使用した。

 だが、今回は5人ではなく3人で挑戦する。


 決して手を抜いているのではない。

 なにせ記憶喪失――つまり脳に関する治療なので、とても繊細なコントロールが必要となる。

 失敗したときのリスクは小さいとはいえ、無理は禁物だ。

 難易度の高い5人での合同魔法ではなく、3人で挑戦する方が無難だろう。


「じゃあ、行くぞ」


「はい」


「うん!」


 3人の魔力を1つに合わせる。

 長い詠唱のあと、ついに魔法が発動する。


「「「【オールヒール】!」」」


 部屋の中が優しい光に包まれた。

 そして……


「あ! 頭が……」


「どうだ? 思い出せたか?」


「う~ん。ちょっと待って」


 フレンダが目を瞑りながら必死に思い出そうとしている。


「……。ダメみたい。自分がどこから来たのか、思い出せないや」


「そうか……」


 残念だが、こればかりは仕方がない。

 成功確率が低いことは承知していた。

 やはり5人での合同魔法の方が良かったか?

 だが、人数が増えれば出力が増す代わりに、失敗するリスクも増す。

 ニッケスのように手足の治療ぐらいならまだしも、脳へ治療魔法を掛けるのは慎重に行いたい。


「そう言えば、フレンダって完全な記憶喪失ではないよな?」


「え?」


「だってそうだろ? 自分の名前が分かっているんだから」


 彼女はフレンダ=ハートフィールドだ。

 完全な記憶喪失なら、名前すら思い出せないだろう。


「あっ。そのことだけどね……よく分からないんだけど、本当の名前は違うかもしれないの」


「どういうことだ?」


「私は森で倒れていたらしいんだけどね? その時に、こんなものを握りしめていたみたいなの」


 そう言って彼女が見せてきたのは、小さなキーホルダーだった。


「これは……」


「多分、飾りか何かなのかな? 文字がいくつか書いてあって、その中の一部だけ読めたの」


 俺はキーホルダーをよく見る。

 そこには、2行の文字があった。

 上の行には、フレンダ=ハートフィールドと書いてある。

 ただし、言語はこの世界のものではない。

 これは――


「カタカナじゃないか! どうしてこの文字が!?」


 この世界の言語は、地球のものとは異なる。

 日本語でも英語でもない。

 俺が普通に話したり読み書きできているのは、チートスキル『異世界言語』のおかげである。

 この世界でカタカナを見たのは初めてだ。


「ダーリンもこの文字が読めるの? 他の人にはなんて書いているか分からなかったけど」


「ああ……。俺はこれを読めるぞ。しかも、それだけじゃない」


「え?」


「その上に書かれている文字も読めるぞ」


「本当!? 教えて!」


 俺は、キーホルダーの上の方に書かれている文字に視線を向ける。

 それは、この世界ではヤマト連邦にしかないはずの『漢字』だった。

 フレンダは、カタカナは読めても漢字は読めなかったようだ。


「『しんの ちせ』と書かれているぞ」


 俺は漢字の読みを答える。

 漢字のままで言えば、『心野 友世』だな。

 たぶん人名だ。

 心野が名字で、知世が名前だろうか?

 両方とも、なかなかに珍しいように思える。


 まぁ、『東雲』や『神宮寺』という名字も珍しいし、『蓮華』『雪』『月』『花』という名前もあまり聞いたことがない。

 この世界のヤマト連邦は、地球における日本とはややネーミングセンスが違うようだな。


「シンノチセ?」


「ああ、そうだ。聞き覚えはないか?」


「うーん、あるようなないような……」


 フレンダは首を傾げている。

 だが、この名前にどこか引っ掛かりがあるようだ。


「……ん? いや、待てよ……?」


「どうしたの?」


「漢字には、いくつかの読み方があるんだ。『しんの ちせ』ではないのかもしれない」


 俺はそう思い当たった。

 例えば、蓮華の名字は『東雲』だ。

 これは『しののめ』と読む。

 だが、他にも『ひがしぐも』や『とううん』という読み方もできる。


 雪月花の『神宮寺』も似たようなものだな。

 こちらは『じんぐうじ』が正解だが、『かみみやでら』と読めなくもない。


 フレンダのキーホルダーに書かれていた、『心野 友世』という漢字。

 これの本来の読み方は――

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