【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう

~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
猪木洋平@【コミカライズ連載中】

918話 宴会

公開日時: 2023年1月31日(火) 12:13
文字数:2,255

「あっはっは! もっと酒を持ってきなさい! 私はまだ飲み足りないのよ!」


「はい、ただいま!」


「ふふふー。素朴だけど良い味だねー。もっと食べたいなー」


「かしこまりました! すぐに用意しますので少々お待ちください!」


「あ、すんませんっす。オレっちは果物が欲しいっす!」


「了解いたしました!」


 エレナたち『三日月の舞』は村で歓待を受けていた。

 村の広場で焚かれた火を囲んで、みんなで食事を楽しむ。

 好き放題しているエレナたち3人はもちろんのこと、他の村民たちも上機嫌だ。

 村の危機を無事に乗り越えたのだから、それも当然だろう。


「この度は本当にありがとうございます。エレナ様たちのおかげで村は救われたようなもので……」


「その通りね! せいぜい私たちに感謝すると良いわ!」


 村長の感謝の言葉を受け、エレナはお酒の入ったコップをグイッと傾ける。


「エレナちゃん、さっきから飲み過ぎだよー」


「あっはっは! まだまだ足りないわ! もっと飲むわよ!!」


 ルリイの制止の声を受けても、エレナの飲酒ペースは落ちない。

 村長はそれを心配そうに見ている。


「エレナっちはいつもこんな感じっす。気にしないでくださいっす」


「そ、そうなのですか……。大変ですね……」


 村長とエレナたちの会話を聞き、村人たちが笑い合う。

 宴会は和やかな雰囲気だ。

 エレナの酒癖はやや悪く、ルリイやテナも遠慮なく飲み食いしている。

 だが、村が救われたことを思えば、これくらいの出費など些細なことだ。

 むしろエレナたちが満足するまで、好きなだけ食べさせてあげたいと思っている。


「果物を切りますね」


「あら、ありがとう」


 エレナの近くで、村の少女がナイフを使ってリンゴの皮を剥いている。

 剥き終わったリンゴを皿に乗せ、それをエレナに差し出した。


「どうぞ」


「ありがと」


 エレナが礼を言い、受け取ったリンゴを口に運ぶ。

 シャリッとした食感と共に口の中に甘酸っぱさが広がった。


「うん、美味しいわね。――って、ちょっと!? あなたそれは……」


「え? な、なにかダメだったでしょうか? 申し訳ありません」


 急に声を荒げたエレナに驚き、少女が戸惑う。

 Cランク冒険者であるエレナとただの村人の少女では、立場が違う。

 サザリアナ王国の法律上は同じ平民だが、戦闘能力・資産・コネクションという面では大きな差があるからだ。

 そんなエレナが少女に対して声を張り上げたことに、周囲の村人は驚いている。


「ごめんなさい。あなたが謝ることじゃないのよ」


「えっと……」


「そのナイフ、もしかしてハイブリッジ製かしら?」


「あ、実はそうなんですよ! 領主様がこの村を視察なされたときに、いくつかの支援物資をいただいて……」


「そう……。やっぱり……」


 エレナはタカシのことを『タケシ』だと勘違いしている。

 単純に名前を間違えているだけではなく、彼女が持っている『初級冒険者タカシ』と『数々の功績を上げたタカシ=ハイブリッジ男爵』の二つのイメージが結びついていないのだ。

 しかしその一方で、彼女は『タカシ=ハイブリッジ男爵』に想いを寄せている。

 彼女の脳内では、タカシは理想的な男性として描かれているわけだ。


「あ、あの……?」


「――それを寄越しなさい」


「へ?」


「早くしなさい」


「い、嫌です! これはあたしの宝物なんです!」


「いいから渡しなさい!」


「嫌です! 絶対に渡しません!!」


「なんですってぇ!?」


 エレナが激高する。

 だが、少女が抵抗するのも当然だった。

 性能面では何の変哲もないナイフとはいえ、ハイブリッジ男爵家から下賜されたものなのだ。

 村人の少女にとっては宝物である。


「あ、あの、ちょっと落ち着いてください! どうしてケンカになっているのですか?」


「うるさいわね! 私は落ち着いてるわよ!」


「そ、そうですか……」


 村長の問いかけに対し、エレナは怒り心頭といった様子で答える。

 彼はそれを見て、これ以上の追及を諦めた。


「――って、村長のその服は……」


「へ? あ、ああ、これは領主様からいただいたものですよ。本来は恐れ多くて着れないところなのですが、せっかく頂戴したものですし……」


「ぐぎぎ……。よ、よく見ればあっちの男の剣も……この鍋だって……」


「はい。全部、領主様からいただいた物ですね」


「ぬあぁあぁっ!! なんてこと! なんてこと! なんてこと! なんてこと!」


 エレナは叫びながら、手近にあったコップを手に取る。

 そして、それを一気に飲み干した。


「ぷはっ!」


「ちょ、ちょっとエレナちゃん!」


「エレナっち、お酒をそんなに飲んで大丈夫っすか!?」


「うふふ……。覚悟は決まったわ」


 エレナは立ち上がる。

 何やら不穏な気配を感じ取ったのか、村人たちの間に緊張が走った。


「交渉よ。ゴブリンを討伐してあげたお礼として、ハイブリッジ製のものを寄越しなさい」


「「「ええぇっ!? 」」」


 エレナの突然の要求に、村長たちが驚きの声を上げる。


「エレナちゃん、それってさっきのナイフのこととかでしょー? ダメだよー」


「そうっすよ! 村の人たちの大事なものを奪っちゃかわいそうっす! それに、お礼はもう受け取ってるっす! こうして好きなだけ飲み食いさせてもらって――」


「うるさいわね! 私はCランク冒険者よ! 欲しいものはなんでも手に入れなきゃ気が済まないわ! 私に渡さないなら、この村の財産を根こそぎ奪ってやるんだから!!」


「エレナちゃん、それはいくら何でも横暴すぎるよー」


「盗賊として指名手配されちゃうっす!」


 エレナの暴走発言を、ルリイとテナが必死に止めようとする。

 だが、エレナはその二人を振り払い、村人たちの輪の中心へと歩いていくのだった。

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