数日が経過した。
モニカとニムの育成は順調に進んでいる。
今日も北の草原でファイティングドッグ狩りを行った。
今は閉店後のラビット亭で夕食をとっているところである。
そろそろ、モニカとニムが冒険者としてやっていけそうか、判断を下す頃合いだろう。
「モニカとニムは、十分に冒険者としてやっていけそうだな。みんなはどう思う?」
俺はそう言う。
「うん。やっていけそうかな。タカシのその力のおかげだけど」
「す、すごい力です」
モニカとニムがそう言う。
「そうだな。この力があれば、何とかやっていけるだろう。もちろん、2人のがんばりも大きいと思うが」
俺はそう言う。
「あと、ミティやアイリスのサポートも助かっているよ。いつもありがとう」
「あ、ありがとうございます」
モニカとニムがそう言う。
「いえ。私も最初の頃はタカシ様にサポートしていただきましたので」
「初心者を手助けするのは、先輩として当然のことだよ。まあボクもまだ見習いだけどね」
ミティとアイリスがそう言う。
お互いがお互いを気遣う良いパーティだと思う。
ハーレムにありがちな、険悪なムードにはなりそうにない。
一安心だ。
まあ今のところはだが。
モニカとニムは仲が良い。
姉と妹のような関係だ。
ダリウスとマムの進展次第では、実際に姉妹となる可能性もある。
モニカとアイリスもそこそこ仲が良い。
武闘の師弟関係だしな。
2人とも、少し男っぽくてサバサバした性格だ。
ミティは奴隷という立場を気にしてか、みんなに対して一歩引いたような雰囲気がある。
俺と出会った直後は、一歩どころか十歩ぐらい引いていたイメージだった。
それに比べるとかなり自信を取り戻してくれたとは思うが。
やはり、ミティに本当に自信を取り戻してもらうためにも、奴隷身分から解放させてあげたい。
それには、金を稼いでいく必要がある。
手持ちの金は、モニカやニムへの貸し出しや装備の購入費、それにみんなの日々の生活費により、どんどん減ってしまっている。
残金は金貨100枚ぐらいだ。
ラーグ奴隷商会への借金は、残り金貨270枚。
ガンガン稼いでいく必要がある。
そろそろ他の街への遠征なども検討したいところだ。
「それで、この5人でパーティを登録しようと思う。何か良いパーティ名はあるか?」
パーティ名をみんなから募集する。
「偉大なる勇者タカシとその一行、でどうでしょうか?」
ミティが即座にそう言う。
「いや、さすがに恥ずかしいよ。俺は勇者じゃないし」
ミティの案は没にする。
「聖ミリアリア騎士団はどうかな?」
アイリスがそう言う。
「うーん。聖ミリアリア統一教の否定はしないけど、アイリス以外は信徒じゃないしなあ。そもそも騎士でもないし」
アイリスの案も没だ。
「難しいね。ちなみに、他の人たちはどういうパーティ名をつけているの?」
モニカがそう言う。
「俺が知っているのは、赤き大牙、蒼穹の担い手、黒色の旋風、荒ぶる爪、竜の片翼、漢の拳、三日月の舞、とかかな」
「へえ。このあたりは地味な名前が多いんだねえ。中央大陸では、もっと派手な名前が流行っていたよ」
アイリスがそう言う。
地味?
これらも結構派手だと思うが。
「具体的にはどんな名前が流行っていたの?」
モニカがアイリスにそう尋ねる。
「ボクが聞いたことがあるのは、クルセイダーズ、ハンドレッドマシンガンズ、ドラゴンバスターズとかかな」
「へえ。そういう名前もあるんだな」
確かにそれらのほうが派手だ。
「す、数字を入れるのは、何となくカッコいい気がします!」
ニムがそう言う。
「数字かあ。タカシ。数字を入れた何かいい名前はない?」
アイリスがそう言う。
「うーん。……サウザンドノーズブレスとか?」
「意味は?」
「えーと。千の鼻息?」
「嫌だよ。そんな名前」
アイリスが俺の案を切り捨てる。
別の案を考えないと。
少し考え込む。
「……ミリオンズ、でどうだ? 百万を意味する言葉だ」
「語感は悪くないね」
アイリスがそう言う。
「百万の具体的な意味はなんでしょうか?」
ミティがそう言う。
「百万という数に匹敵するような大きな活躍をするぜ。そういう意味を込めているのだ」
適当だが。
そのあたりは雰囲気だ。
「例えば、俺の二十本桜という魔法がある。その数をどんどん増やしていくぜという決意を込めている」
とはいえ、最終目標は千本桜だ。
語呂が良いからな。
百万本桜はさすがに難しいだろう。
語呂も悪いし。
「なるほど?」
モニカが納得したようなしていないような顔をする。
彼女には、まだ俺の二十本桜を見せていないしな。
「ミティの二つ名は百人力だ。いずれは百万人力を目指すという決意を込めている」
「ひゃ、百万人力ですか。がんばります!」
ミティがそう意気込む。
イメージで景気良く大きな数を掲げているだけなので、本気で目指す必要もないが。
意気込みは大切だ。
「アイリスやモニカの格闘術や、ニムの土魔法も同じだ。百万という数のイメージに似合った活躍をできるよう、がんばっていくという決意を込めている」
一瞬の間に数え切れないキックを繰り出したり、とてつもない質量の土魔法を発動したり、というイメージだ。
「……ほんとうにそこまで考えてる?」
アイリスが訝しげな顔でそう言う。
「適当だ」
こういうのはノリだよ。
ノリ。
深い意味なんてない。
「やっぱり!」
アイリスがそう言って、呆れ顔をする。
「まあいいんじゃない? 語感はいいし」
「私もいいと思います!」
「わ、私もそれで構いません」
モニカ、ミティ、ニムからフォローが入る。
彼女たちはミリオンズというパーティ名で問題ないようだ。
「もう! みんながそう言うなら、ボクもそれでいいけどさ!」
アイリスが投げやりな感じでそう言う。
パーティ名はミリオンズで申請してみよう。
読み終わったら、ポイントを付けましょう!