【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう

~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1302話 海神石

公開日時: 2024年2月22日(木) 12:24
文字数:1,812

 エリオットは正気に戻った。

 瘴気だけを取り除いたので、後遺症が残る心配もないだろう。


「ナイトメア殿。貴殿に受けた恩は忘れない」


 ネプトリウス陛下が頭を下げる。

 俺は恐縮した。


「当然のことをしたまでですから」


「いいや。貴殿がいなければ、人魚族の未来は暗いものであっただろう」


 ネプトリウス陛下は首を横に振る。

 彼は真剣な眼差しで俺を見た。


「改めて……貴殿に頼みたい。どうかこの里に留まり、人魚族を守ってくれぬか?」


「俺は……」


 一瞬、迷った。

 だが、答えは最初から決まっている。


「申し訳……ありません。俺には帰らなければならない場所があるのです」


「ふむ。だろうな」


 ネプトリウス陛下は、あっさりと引き下がった。

 まぁ、さっきも断ったもんな。

 ダメ元で再確認しただけだろう。


「ならばせめて……これを」


 陛下が差し出したのは、古びた青い石だった。


「これは……?」


「『海神石』と呼ばれるものだ。我が王家に代々受け継がれている宝物でな」


 ネプトリウス陛下は語る。

 海神石……初めて聞くアイテムだな。


「そんな貴重なものを、俺が受け取ってしまってもいいのですか?」


「構わん。貴殿には多大な恩がある。今しがたエリオットの命を救った他、仇敵であるジャイアントクラーケン討伐のきっかけをつくってくれたな。他にもいろいろ聞いておるぞ?」


「と言いますと……」


「治療岩で多数の負傷者を治療し、防壁を補修し、魔物を討伐し、結界魔法の発動を補助したそうではないか。それに、我が娘を地上で監禁していた男を倒してくれたとも聞いている。……その礼だ」


「そうですか……」


 俺の活躍は、しっかりと国王にまで届いていたらしい。

 頑張ってきた甲斐があった。

 ここは遠慮なくもらっておこう。


「ありがたくいただきます」


 俺は海神石を受け取った。

 その瞬間、何やら不思議パワーが流れ込んでくるのを感じる。


「おお!?」


 驚いて海神石を落としてしまった。

 ネプトリウス陛下が目を丸くする。


「どうしたのだ? 大丈夫か?」


「申し訳ありません、貴重なものを……。ちょっと魔力が暴走しそうになっただけです」


「ふむ……?」


 ネプトリウス陛下が海神石を拾った。

 目上の人に落とし物を拾わせたみたいで申し訳ないな。


「確かに、海神石には持ち主の魔力を強化する効果がある。だが、その強化量には個人差があってな……。余が持つと力強さこそ感じるが、落としてしまうほどではない。エリオットやメルティーネに持たせたこともあるが、落としたりはしなかった」


「その通りですの。では、ナイ様と海神様の相性が悪かったのでしょうか……」


 メルティーネ姫が不安そうに言う。

 確かに、相性の問題はありそうだ。


「いや、逆かもしれんぞ? ナイトメア・ナイト殿は海神ポセイドン様に愛されておられるのではないか?」


 エリオットがそう意見する。

 なるほど……そういう考え方もあるのか。


「だとしたら、素晴らしいことですの!」


 メルティーネ姫が嬉しそうに言う。

 俺も彼女と同じ気持ちだった。


「そうかもしれないな。俺は以前から上位存在とも関わりを持っているんだ」


「上位存在ですの?」


「詳しくは話せない。ま、そういうこともあるんだと思ってくれ」


 まずは、俺にミッションを与えてくる謎の存在『権限者』だな。

 次いで、リンドウ古代遺跡にいた炎の上位精霊『プロドナス』、参級精霊『サラマンダー』あたりである。

 聖女リッカも、神の代行者とか代弁者と言っていい存在かもしれない。


 海神『ポセイドン』は、どれくらいの立ち位置なのだろう?

 さすがにサラマンダーやリッカよりは上かな?

 しかし、謎の存在『権限者』と並び立つほどの存在なのかどうかは微妙なところである。

 上位精霊『プロドナス』と同格あたりの可能性が高い気もする。

 ならば――


「俺なら、ポセイドンっちとも仲良くなれる。そんな気がするぜ」


 俺は冗談めかして言う。

 メルティーネたちも、軽く笑ってくれた。

 だが――


『矮小ナル存在ヨ……。我ガ名ヲソノヨウニ軽々シク呼ブトハ、不敬デアル……』


 玉座の間に、重苦しい声が響いた。

 これはまさか……!?


「海神石が喋ったですの!?」


 メルティーネ姫が目を瞠る。

 海神石から発せられるのは、確かに声だった。

 しかし、生命の存在は感じない。

 スピーカーのような役割を持っている感じか……?


『我ガ名はポセイドン……。海ヲ司ル者ナリ……。貴様ガ更ナルチカラヲ与エルニ足ル存在カドウカ、見極メテヤロウ……』


 海神石が明滅する。

 直後――

 俺の視界が暗転したのだった。

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