【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう

~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1431話 スリの少年 流華

公開日時: 2024年7月1日(月) 12:21
文字数:1,100

 紅葉が団子のおかわりを食べようとしたときのことだった。


「よ、ようやく見つけたぞ!!」


「ん?」


 そんな声が、俺たちにかけられた。

 声がした方を見る。

 そこには、一人の少年が立っていた。


「お前は、さっきの……」


 俺は少年に話しかける。

 彼は顔を真っ赤にしながら、俺を睨みつけた。


「てめぇ……! よくもやってくれたな!!」


「おやおや……。何の話だね? 心当たりがまるでないな」


 俺はすっとぼける。

 そんな俺に、少年はさらに詰め寄ってきた。


「おちょくってんのか!? 財布の中に……こんなモン、入れやがって!!」


 少年は懐から何かを取り出す。

 それは、彼が俺から盗んだ財布だった。

 その中には、『ハズレ』と書かれた紙切れが入っている。


「ほう? これは驚いたな。俺の財布じゃないか。いやぁ、まるで気付かなかった。いつの間にか、俺の懐から財布が消えていたとは……」


「白々しいぜ! このクソ野郎が!!」


 少年は顔を真っ赤にして怒鳴る。

 そんな彼に、俺は言った。


「スリをしておいて、ハズレを掴まされたと逆ギレか? 盗みは犯罪だ。出るところに出てもいいんだぞ」


「うぐ……!?」


 少年は言葉に詰まる。

 言ってみれば当たり前のことだ。

 犯罪をした方が『盗んだ財布に大したものが入っていなかった』と怒るのは理不尽。

 出るところに出れば、彼は確実に負けるだろう。


「うるせーよ!! てめぇだって、オレの財布をスリ返しただろうが! 誤魔化せると思ったら大間違いだ!!」


「やれやれ……」


 俺は首を振る。

 そんな俺を、紅葉が不安そうに見ていた。


「高志様……」


「大丈夫だ。心配ない」


 俺は紅葉に微笑みかける。

 そして、少年に向き直った。


「まぁ、落ち着けよ。怒ってばかりじゃ、疲れるだろう?」


「はぁ!? てめぇ……! ざけんじゃねぇぞ!!」


「ふざけてなどいない。……そうだ、団子でも食べて落ち着け。うまいぞ」


「なっ……!?」


「遠慮するなって。ちょうど臨時収入があったんだ。金には余裕がある」


「だからっ! そもそもそれはオレの金だっつーの!!」


 少年は怒鳴る。

 そんな彼に、俺はさらに団子を勧めた。


「まぁ、そうカッカするなよ。ほら」


「だからっ!! 人の話を聞け!!!」


「ふむ。……仕方がないな」


 俺はため息をつく。

 いくら言っても、少年は怒鳴るばかり。

 これでは、通行人たちの注目を集めてしまう。


 今の俺はまだお尋ね者などではない。

 だが、鎖国中のヤマト連邦への侵入者ではある。

 それに、近い内に桜花城を攻め落とす予定もある。

 無闇に目立つのは避けたい。


「この流華(るか)様を舐めた報いは、必ず――」


「ごちゃごちゃうるせえ! いいから食え!!」


「むごっ!? んんーっ!!」


 俺は少年の口に団子を突っ込み、強制的に黙らせたのだった。

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