「ふむ、ここは……」
城内を歩き回った末に、俺はとある一室にたどり着いた。
今は中に誰もいない。
だが、俺には分かる。
おそらく、女中たちが休憩する部屋だろう。
なぜ分かるかって?
それは……。
「この匂い、そしてこの雰囲気……。間違いない」
俺は断言する。
この部屋からは、女の子の匂いがする!
それも、10人分以上の!!
「これは、期待が持てるな」
俺はニヤリと笑う。
俺は『インビジブル・インスペクション』を維持したまま、こっそりと部屋に侵入した。
そして、素早く部屋を物色する。
「やはり……あった!!」
部屋の片隅に置かれた大きなかご。
これは……あれだ。
確か、行李(こうり)とかいうやつだな。
竹や柳などを編んでつくられた箱で、衣類などを入れるのに使われる。
この部屋に置いてあるのは特大サイズで、人が入れそうな大きさだ。
そして、その中には……
「お宝がいっぱいだ!!」
俺は歓喜した。
女性もののふんどしが山のように積まれていたのだ!
一見すると、白無地のものしかないようだが……。
俺には分かる!
これらの持ち主はおっさん侍や老齢の女中ではない。
若い、それも美少女のものだろう!!
「ふふふ……。これは素晴らしい……」
俺は行李に顔を近づける。
ふんどしからは、女の子の甘い体臭が漂ってくる。
心地よい香りだ……。
「おっと、危ない……」
俺は我に返る。
ふんどしに夢中になるあまり、『インビジブル・インスペクション』が解けるところだった。
今は部屋に誰もいないが、もし誰かが入ってきたら大変なことになる。
俺には崇高な使命があり、この行為はその下調べに過ぎない。
決してふんどし泥棒ではないのだが、行為だけを見られたら言い逃れはできないだろう。
冤罪を着せられるのは避けたい。
「……うっ!? 頭が……!?」
俺は突然頭を抱え、その場にうずくまる。
失われた記憶の断片が呼び起こされる……!
そうだ、前にもこんなことがあった気がする。
俺はカゲロウたちがいた『霧隠れの里』に潜入した俺は、情報収集のために一般家屋に忍び込んだ。
そして、その後はふんどし泥棒として処断されかけたのだ。
あれはなかなかのピンチだった。
……いや、それ以前にも似たような出来事があった気もするな。
屋敷に干してあったユナやニムの下着を拝借して、自室に持ち帰って……。
下着泥棒騒ぎになって……。
みんなが『盗んだ奴を袋叩きにする』と意気込んでいたのだが、犯人が俺だと判明して微妙な空気になったのだ。
「うぐっ!?」
頭にさらなる痛みが走る。
せっかく記憶を取り戻せそうなチャンスだったのだが……。
ええっと、ユ……。
ダメだ、思い出せない。
大切な人の名前だった気がするのに……。
「はぁ……。少し休憩しよう」
俺は行李の中に入った。
そして、ふんどしの上で横になる。
女の子の香りを全身に感じながら、俺は束の間の休息を取るのだった……。
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