「影春様って、女性にあんまり興味がないんだよね……」
「そうそう! お城の人には美人が多いのに、全然見向きもしないんだから!」
「影春様、もしかして同性愛者なんじゃ……?」
「何それウケるー! あははっ!!」
少女たちの笑い声が聞こえる。
結構、ギャルっぽい感じだな……。
いや、俺のチートスキル『異世界言語』がそう翻訳しているだけかもしれないが。
「でもさ、もし影春様が本当にそうだったらどうしよう? 私は、それでも……」
「えー! あんたって女同士でもいけるタイプなの!?」
「ち、違うわよ! 影春様が特別ってだけ!」
「ふーん、そうなんだー。……ん? どうしたの?」
「ねぇ……。あれって……」
少女たちは会話をやめてしまう。
どうしたんだろう?
「……あの行李に、何か入ってる……?」
「えっ? うそっ!?」
(やべぇっ!?)
俺は焦る。
秘技『インビジブル・インスペクション』は便利だが、完璧に気配を消せるわけではない。
何かしらの違和感を覚えられて注視されると、その後はもろいものだ。
「ちょっと見てくるね!」
「あっ、待ってよ! 変質者とかだったら、下手に刺激しない方が……」
「大丈夫だって! どうせ、小動物か何かでしょ。一応確認するだけ!」
(まずい!!)
かごの中にいる『何か』が、俺という侵入者であることはまだバレていないようだが……。
このままでは、時間の問題だ。
少女たちがかごの中を覗こうものなら、いよいよ『インビジブル・インスペクション』が意味をなさなくなる。
(何か策はないか……?)
俺は周囲を見渡す。
何もない。
元々あったふんどしは俺の『アイテムボックス』に収納したのだから、当然だ。
ん?
ふんどし……?
(これだ!)
俺はかごの底で姿勢を極限まで低くした状態で横になる。
そして『アイテムボックス』を開放し、俺の上に大量のふんどしをぶちまけた。
ふんどしの山に埋もれた俺の姿は、外からは見えないはずだ。
「うーん……。何もいないね」
「あれ? そうなの?」
「うん。ほら、洗濯するために集めておいた私たちのふんどしが入ってるだけで……」
少女たちが行李の中身を確認する。
やはり俺の姿は見えていないらしい。
そして、このふんどしのものは彼女たちのもので確定した。
下着ソムリエの俺は、見ただけで『これらは美少女たちのものである』と確信していたが……。
こうして、本人たちの証言が出てきたのは大きい。
心の中に少しだけ残っていた『ひょっとたら中年侍が持ち主かも』という疑念は完全になくなった。
「ふーん……。ま、いっか! じゃ、そろそろ休憩を終わろう」
「そうだね! 洗濯はまたあとでいいし……ん? あれあれ?」
「どうしたの?」
「なんか、かごの中の量が増えてない……?」
「えっ? あっ! ほんとだ……!」
少女たちが騒ぎ始める。
元々は、かごの中には大量のふんどしが入っていた。
そして今は、その下に俺が潜んでいる。
当然、全体的な体積は増えているわけで……。
直接的に俺の姿は見えていなくとも、ふんどしの山が不自然に膨らんでいるのを見れば、少女たちが異変に気づくのも不思議ではない。
(まずい……!!)
どうすべきか。
このままだと、少女たちに見つかるのは時間の問題だ……!!
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