巨大ゴーレムは最後の1体だ。
しかし、防衛戦の参加者たちで戦えるものはほとんど残っていない。
やばい。
そんな時にさっそうと現れたのが。
「アドルフの兄貴! レオさん!」
「……ん? おお、タカシじゃねえか!」
「……ほう。腕を上げたようだな。ギャハハハ!」
ラーグの街でお世話になった、アドルフの兄貴とレオさんだ。
冒険者ギルドの登録初日に、ファイティングドッグとの戦い方を指導してもらった。
「アドルフ! レオナルド! どうしてここに? ……いや、理由はいい。とりあえずあのゴーレムを何とかしてくれ!」
ゾンゲルがそう叫ぶ。
「へっへっへ。わかったよ。俺たちに任せときな! いくぞ、レオ!」
「了解ですぜ兄貴! ギャハハハ!」
2人で巨大ゴーレムを倒すつもりみたいだ。
いくら兄貴たちとはいえ、だいじょうぶなのか?
援護したほうがいいような気もするが。
巨大ゴーレムが兄貴たちと対峙する。
まずはアドルフの兄貴に狙いを定めたようだ。
ゴーレムが腕を振りかぶる。
兄貴は避けるそぶりを見せない。
兄貴とゴーレムの腕を真正面から受け止めた。
「ああ……」
いくら兄貴でも、あんなに大きなゴーレムの攻撃を真正面から受けては。
やばいかもしれない。
やはり援護にいくべきだったか。
俺は思わず顔をそむける。
しかし違和感に気付く。
周囲に漂うのは絶望感ではない。
「うおおおお! さすがだぜ!」
武闘家たちを中心に、歓声を上げている者もいる。
ドレッドが俺の肩に手をかける。
「おうタカシ。下を向いていたら見逃しちまうぜ」
「……あれが、かの高名なBランク冒険者、アドルフの力か」
ジークがそう言う。
俺は顔を上げる。
兄貴が、ゴーレムの巨体を体だけで支え、押し込んでいるのが見えた。
「ふ、ふふん。さすがはBランクといったところね。でも彼1人だと、押さえるだけで手いっぱいみたいだけど。応援に行ったほうが……」
「おう。そりゃ心配ねェ。Bランク冒険者は、この場にもう1人いるからな」
それってもしかしてレオさんかな?
兄貴といつもいっしょに行動してるし。
「いくぜ。磁双鋼剣マグナーフよ。ギャハハハ!」
レオさんが巨大な剣を2つ取り出した。
あんなでかい剣で2刀流なのか!?
レオさんはそれぞれ片手で軽々と持っている。
どう戦うんだろう。
注意して見る。
レオさんが剣を振りかぶる。
「N剣!」
巨大な剣の1つをぶん投げた。
そのままゴーレムに一直線に向かっていき……、避けられた。
「ふふん。はずしちゃってるじゃないの」
「おう。あれはあれでいいんだよ」
「え。それはどういうことでしょうか?」
漫画とかだと、実はブーメランみたいに戻ってくるのを計算に入れているとかか。
でも今回の場合、あの剣は明らかにブーメランの形ではなかった。
それに見た感じ、レオさんが投げた剣が戻ってくる気配は今のところない。
「引き寄せよ、S剣!!」
投げられた剣が急に挙動を変えた。
ゴーレムの方向へ戻ってくる。
それと対応するかのように、ゴーレムを挟んで投げた剣と対称の位置から、レオさんがもう1つの剣を手に駆け出した。
完全にシンクロした挟み撃ちの攻撃に、ゴーレムはどう対処すべきか悩んでいるようだ。
結局、左手で投げられた方の剣を、右手でレオさんの持っている方の剣を防御することにしたようだ。
ゴーレムと剣が衝突する。
2つの剣は、ゴーレムの左右の手のひらをそれぞれ貫通し、深々とゴーレムの胴体に突き刺さった。
「これで終いだ! おらよ!」
アドルフの兄貴による闘気を込めた追撃だ。
レオさんの剣のダメージと、兄貴の闘気の一撃。
ゴーレムは粉々に砕け散り、崩れ落ちた。
「…………彼らは2人ともBランク冒険者だ。”肉体兵器”のアドルフに、“磁双鋼剣”のレオナルド。覚えておいて損はない」
なんでちょっとどや顔なんですかジークさん。
活躍したのは兄貴たちですよ。
なにはともあれ、無事に巨大ゴーレム4体を撃破した。
一時はどうなることかと思ったが。
1体目は、俺、ミティ、リーゼロッテ、アイリス、ギルバート、ジルガ、そしてその他の武闘家や冒険者10人以上の力を結集してなんとか倒した。
2体目は、リルクヴィスト、リーゼロッテ、コーバッツの合同魔法で倒した。
武闘家や冒険者たちもゴーレムを引きつける役目を担った。
3体目は、ゾンゲル、テスタロッサ、ビスカチオ、エドワード、マクセル、カイル、レベッカの7人で倒した。
彼らは他の武闘家や冒険者の手は借りておらず、純粋に7人だけで倒した。
まあカイルとレベッカはおまけのようなものだから、実際には5人で倒したようなものだ。
そして4体目は、アドルフの兄貴とレオさんが2人だけで倒した。
彼らはBランク冒険者。
別格の強さだ。
兄貴たちが来たことにより、防衛戦の動向がどうなっていくか。
気を引き締める必要がある。
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