「いい景色だねえ。ミティ、アイリス」
「そうですね。水もきれいそうです」
「ボク、湖水浴は久しぶりだよ。楽しみだな」
スプール湖に遊びにきている。
海水浴ならぬ、湖水浴だ。
俗に言う水着回である。
いろんな人が参加している。
俺、ミティ、アイリス。
バルダイン、ナスタシア、マリア。
六武衆に六天衆。
潜入組のアドルフの兄貴、レオさん、マクセル、ストラス、ギルバート、ジルガ、ウッディ。
その他にもオーガやハーピィが数人。
サザリアナ王国からの使者もしれっといる。
総勢で30人を超える大所帯だ。
『タカシお兄ちゃん! 早くいこうよ!』
マリアが俺の手を引っ張り、急かしてくる。
彼女は子どもらしいワンピース型の水着を着ている。
可愛い。
……変な意味ではない。
「マリア、ちょっと待って。準備運動しないと」
『わかった!』
みんなで準備運動を始める。
動的ストレッチだ。
準備運動を終える。
さあ、湖に入ろう。
「えっと。ちょっと恥ずかしいですね……」
ミティが顔を赤らめながら、上に羽織っていた服を脱ぐ。
服の下はもちろん水着。
露出がやや少ないタンクトップ型の水着だ。
彼女は背が小さいのでぱっと見は子どもっぽいが、実は出るところは出ている。
身長比で言えば、ナイスバディだ。
「あ、あんまり見ないでください……」
ミティがそう言う。
やべ。
ちょっとジロジロ見すぎたか。
「あ、ああ。ごめんごめん。ミティがあまりにも可愛かったからさ」
「そ、そうですか? ありがとうございます」
天使のミティだ。
お世辞ではなく、可愛い。
「ちょっとー。ボクは?」
アイリスがそう言って、水着を披露してくる。
ちょっとヤキモチを焼いてくれているのかな。
彼女はスパッツ型の水着を着ている。
露出は控えめだが、普段着よりはもちろん肌が出ている。
神官が肌を出していいのか?
その辺は緩い教義なのかもしれない。
露出は少ないものの、肌にぴっちりと張り付くタイプの水着だ。
ボディラインがくっきりと映る。
アイリスの鍛え抜かれた美しい肉体が見て取れる。
……ふむ。
これはこれで。
「アイリスも可愛いよ。いい体してるね!」
ん?
なんかセクハラっぽいセリフになってしまった。
「なんかオヤジ臭い褒め言葉だね。ま、ありがと」
アイリスにも突っ込まれてしまった。
ちょっと嬉しそうな顔をしているので、よしとしよう。
『ディーク。わ、わたくしの水着はどうですか』
六武衆の牽制のフェイがそう言う。
ハーピィの女性だ。
『かわいいと思うよ』
六武衆の鑑定のディークがそう言う。
ハーピィの男性だ。
『そ、そうですか。よかった』
フェイがそう言って喜ぶ。
『いや、ちょっと待てよ……』
ディークがフェイの体を改めてジロジロと見る。
『フェイ。ちょっと太ったんじゃないか? 僕の目はごまかせないぞ。腹の回りの肉が……』
『……っ。ば、ばかーっ!』
パンッ。
フェイがディークを平手打ちし、彼女は走り去っていった。
……ディーク君。
今のはないだろう。
『もう、うちのバカ息子ったら。フェイちゃんに愛想尽かされるわよ』
今の出来事の一部始終を見ていた、六天衆のディアナがそう言う。
ハーピィの女性だ。
『だいじょうぶよ。うちのフェイは、ディーク君にべた惚れだから』
六天衆のフィンがそう言う。
同じくハーピィの女性だ。
ディークとフェイの仲は、親公認か。
早く結婚しちまえ。
末永く爆発しろ。
気を取り直して、俺たちは俺たちで楽しもう。
『おーい! タカシお兄ちゃん! みんな! はやくー!』
マリアが待ちきれずに、先に湖に入っている。
「俺たちもいくぞ!」
「はい!」
「うん!」
みんなで湖に向かう。
それぞれ思い思いに遊び始める。
アイリスは泳いでいる。
彼女は泳ぎがうまい。
クロール、平泳ぎ、背泳ぎ、バタフライ。
何でもござれだ。
……!
ひらめいた。
アイリスが平泳ぎしている後ろから、潜水で近づいていく。
グフフ。
いい眺めだ。
視力強化がさっそく役に立った。
いい体してるのお。
思わず夢中になり、近づきすぎてしまった。
ドカッ!
「ぐっ! ごぼごぼっ!」
顔に衝撃が走る。
アイリスの蹴りを受けてしまった。
思わず水を飲んでしまい、むせる。
「タカシ!? だいじょうぶ!? ごめんね。後ろにいることに気が付かなかったよ」
「だ、だいじょうぶだ」
俺の変態行為はバレていないようだ。
あんまり調子に乗っていると、天罰がくだるということか。
注意しよう。
再び気を取り直して、大人しく浅瀬で遊ぶ。
ミティ、マリアといっしょだ。
『タカシお兄ちゃん! それっ!』
マリアが水をかけてくる。
『やったな! お返しだっ!』
マリアに水をかけ返す。
もちろん、手加減はしている。
『きゃーっ! つぎはミティお姉ちゃんに! それっ!』
マリアがミティに水をかける。
マリアのミティに対する苦手意識は、少し薄れてきている。
いずれ時間が解決してくれそうだ。
「お返しですっ!」
ミティがマリアに水をかけ返す。
もちろん、彼女も手加減している。
ミティの腕力で全力を出せば、ちょっとした大波ができそうだ。
彼女は全力を出すわけにはいかない。
「ガハハ! 何やら楽しそうなことをやっておるな! 我も混ぜろ!」
ギルバートがやってきた。
混ざるのはいいが、全力は出すなよ。
空気を読むのだ。
「いくぞ! ビッグ……」
ギルバートが拳に闘気を込め、力を溜める。
「ちょ、ちょっと待……」
俺の制止は間に合わない。
「バン!」
ギルバートの拳が突き出される。
突き出された拳に伴い、水が勢いよく噴出される。
俺、ミティ、マリアはその水をもろにかぶってしまった。
髪から水がしたたり落ちる。
「……やってくれましたね」
ミティが静かに怒っている。
「お返しです。ビッグ……」
ミティは地味に沸点が低い。
ゾルフ砦の焼肉屋ではミッシェルやマーチンに食って掛かっていたし、ガルハード杯本戦ではマーチンの挑発にもろに乗っていた。
まあそれが彼女の可愛いところでもあるんだが。
「バン!」
ミティの拳が突き出される。
突き出された拳に伴い、水が勢いよく噴出される。
俺、マリア、ギルバートはその水をもろにかぶってしまった。
「ガハハ! やりおる! 次だ!」
ギルバートはまだやる気だ。
『あはは! おもしろーい! もっともっと!』
マリアは楽しんでいる。
まあ、彼女が楽しめているのならばいいか。
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