「壊せ! 壊せ!!」
「一つ残らず、壊してしまえ!!」
とある神社。
そこで、破壊活動が起きていた。
壊しているのは……神聖な鳥居だ。
「な、何事ですか!?」
「おやめください!!」
神職たちが止めに入る。
だが……
「邪魔だ!! 退け!!!」
「ぐはっ!?」
「うぐっ!!」
男たちに殴られ、神職たちは倒れてしまった。
彼らには抵抗するだけの力はない。
「いいか? これは下剋上で成り上がった藩主様のご命令なんだ!!」
「新たな藩の名は神無川……。俺たちは藩主様に雇われた、『壊し屋』だ!!」
「神社仏閣は全て壊す! これからは神頼みなんて許さねぇぞ!!」
「自分の未来は、自分の肉体で切り拓け!!」
男たちは口々に叫ぶ。
そして、破壊活動を再開した。
言っていることの一部は立派なのだが、やっていることはただの破壊活動だ。
「ああ……。1000年もの間、この神社を守り続けてきたのに……」
「もう終わりじゃ。大和を守護してきた神々は去り、世は混沌に満ちる」
「うう……。我らの聖地が……」
神職たちが嘆く。
彼らとて、ただ傍観しているわけではない。
なんとか説得を試み、破壊活動を止めようとした。
だが、男たちは聞く耳を持とうとしない。
そんなときだった。
「ピピッ!」
「ああ?」
男の1人が、妙な音を発する存在に気付く。
彼は不思議そうに首を傾げた。
「どうした?」
「いや、今……何か音が……」
「音だと?」
男は耳を澄ます。
すると、彼の耳にも謎の音が聞こえ始めた。
人間が歩くような音に混じり、聞き慣れない音が……。
「ピピッ!」
「なんだ?」
男は音のする方を見た。
すると、そこには1人の少女がいた。
年齢や身長から考えて、まだ子どもだろう。
だが、その表情は異様に落ち着いていた。
「嬢ちゃん、迷子か? 今なら見逃してやるから、どこかへ行きな」
「ピピッ!」
少女はまたも妙な音を発する。
そして……
「……え? ぷごっ!?」
次の瞬間、男は少女に殴り飛ばされていた。
男は地面を転がり、そのまま昏倒する。
「て、てめぇ!」
「俺たちに楯突くなら、子どもだからって容赦しねぇぞ!!」
他の男たちも少女へと襲いかかる。
だが、少女の方が明らかに強かった。
「ピピッ!」
「がっ!?」
「ぐはっ!?」
次々と男たちが倒されていく。
そして……数分で神社は静かになった。
「あ、あの……。ありがとうございました」
「あなたはいったい……?」
神職たちが、少女に恐る恐る問いかける。
すると少女は……
「ピピッ! 礼には及びません。当機の目的は、『神』なるものの存在確認であると通知します」
「え? あ、はい?」
神職の1人が戸惑う。
少女の言葉は、まるで感情のない平坦な音声のようだった。
「えっと……その、神の存在確認……ですか?」
「是。マスターに付与された、当機への『加護』なる謎の恩寵……。マスターは当機に『魂がある』と仰りました。当機はそれを信じたい。しかし、不完全な当機はいまだ確証が持てません。そこで、『神』なる存在が本当に存在するのかをこの地で確認し、当機の自我を確立させたいと考えました」
少女は淡々と語る。
男たちは倒れたまま放置されていた。
「ますたぁ? 加護、魂、自我の確立……? よく分かりませんが……。つまり、少なくともあなたは私たちの敵ではないと?」
「是。まずはその理解で十分だと通達します」
「は、はぁ……」
神職たちが戸惑うのも無理はないだろう。
謎の少女――古代アンドロイドのティーナは、特異な存在だ。
古代魔導具という存在がそれなりに知られているサザリアナ王国でも、ティーナは珍しい存在である。
まして、閉鎖的で外部技術があまり流通していない大和連邦においては、その存在は異様だった。
「ピピッ! この神社は保存に値すると評価します。当機――ティーナ改め『天那(てんな)』は、この神社を今後しばらく守っていくと通知します」
「あ、ありがとうございます。……天那さん?」
神職たちは首を傾げるが、ティーナは特に気にした様子を見せない。
こうして、古代アンドロイドのティーナは異国の神社で神の存在確認のために在留することになったのだった。
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