「お、おい……? 何をするつもりだ?」
俺は思わずうろたえた。
リマが股間に顔を近づけてきたからだ。
(こ……これは……)
彼女の吐息が、俺の大事なところに直接かかる。
緊張から、俺は思わず身を強張らせた。
(お……おおぅ……)
心臓が早鐘を打つ。
そこでリマがこちらを見上げたので、俺と彼女の目が合った。
「どうしました? ナイト様」
「いや……何でもない……」
俺はそう答えたが、心臓がバクバクと鳴っている。
(こ、これは想像以上に……)
10歳の美少女に股間を凝視されるという特殊な状況。
しかも、自分は四肢を拘束され動けない。
俺の心拍数が上がるのも致し方あるまい……。
「ふむふむ……。人族の股間はこうなっておるのですね……」
リマはそんなことをつぶやきながら、俺の大事なところをまじまじと見ている。
俺は不思議な気持ちになっていた。
(何というか……むず痒い気分だな……)
今までに感じたことのない感情だ。
妙な気持ちになってくる……。
新たな扉を開いてしまいそうだ。
「なぁ、リマ。お前ばかりズルくないか?」
「えっ? ズルい?」
俺はたまらずリマに声をかけた。
すると、彼女はきょとんとした顔をする。
「ああ……。君ばかり俺の大事なところをガン見しているじゃないか」
俺は少し冗談っぽく言った。
だが、本音である。
俺だって、人魚族の股間部がどうなっているのか知りたい。
さすがに初対面の10歳の少女に言うわけにはいかないと思い、我慢していたのに……。
相手方のリマは、好き放題に見ている。
これでは、フェアとは言えない。
「あら? ガン見してましたでしょうか? そんなつもりはなかったのですが……」
リマは恥ずかしそうに顔を赤らめた。
その仕草が可愛らしい。
「しかし……わたしの身体に興味をお持ちなのですか?」
「ああ、そうだな。俺は君の身体に興味を持っている」
隠す必要はないだろう。
リマの態度を見ていれば分かるが、彼女は俺に対して好意的だ。
忠義度も、初対面にしては決して低くない。
人魚族は人族に偏見を持っているという話だが、人魚族の中でも個人差はあるらしい。
彼女のような子がいてもおかしくはあるまい。
というか、そういう人物をメルティーネが世話役に選んでくれたというべきか。
「あの……。ナイト様は姫様の恋人なのでしょう? わたしのような侍女の裸に興味を持つ必要はないと思うのですが……」
リマは、どこかもじもじした様子で言った。
「それは違うな」
俺は即座に否定する。
「えっ!? 違うのですか?」
「ああ。実は、俺は人魚族に詳しくなくてね……。人魚族の体がどのようになっているか、気になるんだよ。君の身体を観察すれば、理解が進むだろう?」
俺は正直に答えた。
ここで嘘をついても仕方がないからな。
「な、なるほど……。あくまで知識として見ておきたいと……」
「当然だ。俺は成熟前の少女の裸に興味を持つような変態ではない」
俺は決め顔を作って言った。
妙な疑惑は、早めに払拭しておきたい。
「そ……そうですよね! 失礼しました!! わたしったら、自意識過剰で……。恥ずかしいです……」
リマは顔を真っ赤に染めて謝罪する。
どうやら、納得してくれたようだ。
「よし、それでは頼む」
「……え? あ……でも……」
俺はリマに改めて頼んだ。
すると彼女は、少し困ったような顔をする。
「何か問題でも?」
「事情はわかりましたけど、それはそれとして恥ずかしいというか……。ちょっとはしたないかなと……」
リマが恥ずかしそうに言った。
その仕草も可愛らしい。
だが、彼女の言うことも分かる。
いくら知識欲のためとはいえ、初対面の異性に対して股間を見せるのは恥ずかしいだろう。
俺だってそうだ。
しかし、そこはうまくフォローせねばなるまい。
「そこを何とか頼むよ……リマ。俺だって見せたじゃないか……」
俺は甘えるような表情で言った。
こうすれば、ミリオンズの面々はお願いを聞いてくれることが多い。
「そ……そうですね……。いや、でも……」
リマも俺の様子を見て、少し心が動いたようだ。
よし、もう一押しだ!
「なぁ、頼むよリマ。これは種族間の相互理解に必要な行為なんだ。決して、君に対してやましい気持ちがあるわけじゃない。君の行為によって、これからの歴史が変わっていくかもしれないんだ」
俺は誠実さをアピールする。
相互理解が進めば、人族と人魚族の間に友好関係を結べるかもしれない。
繰り返すが、決して変な意味はない。
「そ……そうですね……。わかりました!」
ついにリマが折れた。
彼女は意を決し、腰布に手をかける。
――こうして俺は、人魚族の股間部に関する理解を深めたのだった。
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