【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう

~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1538話 暗黒結界

公開日時: 2024年10月16日(水) 12:40
文字数:1,148

「俺は……一体、どうしてしまったんだ……?」


 特殊な『光の精霊石』を捨てたことを後悔する俺と、捨てたことを肯定する俺。

 2つの相反する感情が、俺の中でせめぎ合う。


「…………」


 しばし考え込んだ後、俺は投げ捨てた『光の精霊石』の近くまで歩み寄った。

 やはり、何度見ても嫌な光だ。

 まるで魂が浄化されてしまうような……。

 あれを持っていると、俺が俺でなくなってしまう。

 いや、今の俺こそが紛い物で、『光の精霊石』に浄化された俺こそが本当の俺で……


「ぐぅっ!? あ、あああああぁっ!!」


 俺は頭を掻きむしった。

 気持ち悪い、気持ちが悪い、キモチガワルイ!!

 とにかく、この感情をどうにかせねばならない!!!


「――【暗黒結界】!」


 俺は『光の精霊石』の周囲に結界を展開する。

 闇魔法の一種だ。

 ステータス操作で闇魔法のスキルを取得したわけではないし、自力取得を目指して積極的な練習もしていなかったのだが……。

 いつの間にか、闇魔法がステータス欄に追加されていたのだ。

 うっとおしい光を遮断するのに、闇の結界はもってこいである。


「ふぅっ……。はぁ……」


 俺は大きく息を吐く。

 これで大丈夫だ。

 煩わしい光も遮断されたし、思考もクリアになった。

 最初からこうしておけば良かった。

 俺は何を迷っていたのだろう?

 闇に身を任せれば、全ては上手くいくのだ。


「……こんな石ころ、捨ててしまうか? いや、一応はアイテムボックスに収納しておこう……」


 この『光の精霊石』は特殊な鉱石である。

 暗闇でほんのりと光る……というだけではない。

 空間魔法に収納していても、体や精神に微細な影響を与えてくるようだ。

 先ほどまでの俺は、その微細な影響がとても不快だった。

 しかし、闇魔法『暗黒結界』によってその光を遮断した今、その不快感は消えた。

 アイテムボックスに再収納しておくことに、何の問題もない。


「さぁ、迷いは消えた。俺は俺の信じた道を進むだけだ……」


 俺の中で、何かが吹っ切れたような気がした。

 先ほどまでの俺は、迷いを抱えていた。

 だが、その迷いは消えた。

 もう迷うことはないし、立ち止まらない。


「ふっ……ふふふ……。とても気分がいい! この昂った感情を鎮めるためにも、もうひと働きしておくか!」


 そうと決めたら、行動だ。

 情報収集の優先事項は、桜花城に関するもの。

 夜とはいえ、侵入するのはさすがにリスキーだが……。

 夜は夜で、日中とは違う情報を得られる可能性もある。


「とりあえず桜花城の方面に行ってみよう。ふふ……」


 俺は普段の侍装束を脱ぎ、黒を基調とした装束に着替える。

 この方が闇に紛れることができるだろう。

 それに、闇に身を任せた今の気分にも合っている。


「夜の桜花城……。夜桜を眺めながらの情報収集も悪くない……」


 俺は1人笑いながら、武神流道場を出る。

 そして、夜の闇の中を歩いていくのだった。

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