食事会は無事に終わった。
とりあえず、おおまかな後片付けのみ行っておく。
続いては風呂だ。
俺が初めて風呂に入ったのが5日前。
その後、ミティ、アイリス、モニカ、ニムにも入ってもらったが、好評だった。
ユナ、リーゼロッテ、マリアにもぜひ入ってもらおう。
ハガ王国からマリアを連れて来た後、食事会が始まる前に、お湯をはっておいた。
食事会の間に少し冷めてしまっているので、俺の火魔法で追いだきしておく。
「この家には風呂があるんだ。ユナたちも入っていくか?」
「ふふん。いいわね。まさかお風呂に入る機会があるとは思わなかったわ」
「私も、冒険者として旅に出てからは入っていませんわ」
『お風呂! お風呂! みんなでお風呂!』
ユナ、リーゼロッテ、マリア。
3人とも入っていくようだ。
さっそく、みんなで風呂に向かう。
……俺以外のみんなで、だ。
『あれ? タカシお兄ちゃんは来ないの?』
「ああ。俺は後で入るよ」
残念ながら、まだまだ混浴をオーケーしてもらえるほどの親密さはない。
まだ幼いマリアはともかくとして。
漢のロマンである混浴は、今回は断念するしかない。
非常に残念だ。
もっとみんなと仲良くなる必要がある。
ミティは頼めばいっしょに入ってくれるだろう。
もうそれ以上のことをした仲だしな。
一方で、アイリスとモニカには以前に断られてしまっている。
混浴はまだ時期尚早だったようだ。
論外というほどの強い拒絶ではなかったが。
ユナとリーゼロッテは、頼んでみるまでもないだろう。
まだそういう段階にはほど遠い。
俺は1人さびしくリビングで待つ。
片付けなど、できることはやっておく。
しばらくして、風呂場から楽しそうな声が聞こえてきた。
片付け作業を中断する。
聞き耳を立てる。
「……で、……が……」
「……だね」
……うーん。
聞こえそうで聞こえない。
もどかしい。
思い切って、聴覚強化を取得してみるか。
盗み聞きに役立つスキルだ。
少し趣味は悪いが、みんなの会話内容が気になるのだ。
まあ普段の冒険者稼業にもあって困るスキルでもないしな。
そう自分に言い訳をしておく。
ステータス操作画面を開き、聴覚強化のスキルを取得した。
みんなの声が聞こえるようになった。
もちろん声だけだ。
「マリアちゃんは、ハーピィだったのね。少し前に、友好種族として公表されていたわね」
ユナがそう言う。
そうだ。
マリアの種族のことを前もって伝えることを忘れていた。
風呂に入るのであれば、服を脱ぐ。
マリアの種族のことはバレて当然だ。
少しうかつだったか。
幸い、ユナはハーピィに偏見などは持っていないようだ。
『そうだよー。一度、人族の街に来てみたいと思って、タカシお兄ちゃんに頼んでみたんだ』
「そうなのですか。遠路はるばる、大変でしたわね」
リーゼロッテがそう言う。
俺の転移魔法陣のことは、まだ一部の人にしか伝えていない。
ミティ、アイリス、マリア、バルダイン、ナスタシア。
この5人だ。
モニカとニムにも近いうちに伝えてもいいだろう。
一方で、ユナやリーゼロッテに伝えるのはまだ時期尚早だと思う。
『そうでもないよ。タカシお兄ちゃんのて……。モゴモゴ』
マリアが転移魔法陣のことを言いそうになる。
誰かが口をふさいだようだ。
ミティかアイリスかな。
ナイス。
「「て?」」
「タカシ様と手を繋いで、この街までやってきたのです。戻るときにはまた迎えが来ます」
ミティがそうごまかす。
少し苦しい。
幸い、ユナやリーゼロッテからそれ以上の追及はなかった。
別の話題にシフトしていく。
みんなは、脱衣所から風呂場に移動したようだ。
「ミティは、胸が結構あるね! 背はちっちゃいのに……」
「そういうアイリスさんも、引き締まった体でうらやましいです」
確かにアイリスの言う通り、ミティは出るところは出ている。
一方のアイリスも、鍛えられた体をしている。
「私も引き締めないとなあ。マヨネーズの試作でちょっと太っちゃったし」
「ふふん。冒険者をやっていたら、自然と痩せてくるわよ」
モニカは少し太っていたようだ。
傍目にはわからなかったが。
ユナは、以前から冒険者として活動しているだけあって、スレンダーな体つきをしている。
「そうでしょうか。私は太っていく一方でして……」
「リーゼロッテさんは、栄養が全部胸にいっているからいいでしょ。そういうのは太ったとは言わないの」
アイリスがそう言う。
リーゼロッテは食いしん坊だ。
日常的にカロリーがオーバー気味なのかもしれない。
しかし、アイリスの言う通り、栄養が胸にいっている可能性もある。
リーゼロッテは巨乳だ。
胸の大きさを順位づけるなら、マリア≦ニム<ユナ≦アイリス<モニカ≦ミティ<リーゼロッテといった感じになる。
マリアとニムはまだ成長期前だ。
ユナとアイリスはスレンダー。
モニカは標準的。
ミティは、体積的にはモニカと同じくらいかもしれない。
背が小さい分、相対的に大きく見える。
リーゼロッテは、彼女たちの中では最も大きい。
俺の好み?
俺はなんでもいける。
貧乳は良い。
”貧乳はステータスだ。希少価値だ”という偉人の言葉もあるしな。
巨乳も良い。
大きな胸に包まれたい。
「確かに。この乳はけしからん」
「きゃっ。やめてくださいまし。ユナさん」
ユナがリーゼロッテにちょっかいを出したようだ。
うらやまけしからん。
「う、うう……。わたしも皆さんみたいにナイスバディになりたいです。それでタカシさんを虜にして……」
『マリアもタカシお兄ちゃんをとりこにしたい!』
ニムとマリアがそう言う。
ニムはともかく、マリアはあまり意味がわかっていないだろう。
「え? ニムちゃんとマリアちゃんって、タカシとそういう関係なの!?」
ほら。
ユナが驚いているじゃないか。
さあ、ミティにアイリス。
誤解を解くのだ。
俺のロリコン疑惑を晴らしてくれ。
「もちろん、彼女たちも偉大なるタカシ様の女です!」
ミティが堂々とそう宣言する。
いやいやいや。
待て待てい。
んなバカな事やる男じゃねェよい!!
「貴族では、数人の側室ぐらいはよくあることですが……。タカシさんがそれほど好色な方でしたとは」
リーゼロッテは微妙な声色だ。
「ふふん。私の村でも、強い男は何人も女を侍らしていたわね。まあ、ニムちゃんとマリアちゃんがいいならそれでもいいんじゃない? さすがにまだ幼すぎるような気もするけど……」
ユナがそう言う。
「へー。このあたりでは、そういう価値観なんだねえ。ボクも認識を変えて、どんどんアタックしていこうかなー」
「ふふん。薄々は気づいていたけど、アイリスさんもタカシのことが?」
「そうだよ。タカシの成長速度はすごい。武闘も、それに剣術や魔法もね」
アイリスがそう言う。
改めて彼女の口からそう聞かされると、照れるな。
彼女はあまり好意を態度や口に出さないタイプだ。
もっとこちらからアプローチしてもいいかもしれない。
「ふふん。確かにね。あっという間にCランクになっちゃったし。私はまだDランクなのに」
ユナはDランクだ。
ランクとしては、俺は彼女を抜き去った。
まあ、まだ冒険者としての知識や経験の面ではかなわないだろうが。
「ユナさんも、タカシ様の仲間に加わりますか? 歓迎しますよ」
「少し前にも、その話は出たわね。ま、考えておくわ」
ミティの勧誘に、ユナがそう返答をする。
悪くない感触だ。
彼女は故郷の村で用事がある。
それが終わったころ、俺たちのパーティに加わってくれると心強いところだ。
盗み聞きを終える。
片付けの続きを行うことにしよう。
●●●
同刻、タカシ宅の外。
女が1人、歩いていた。
タカシ宅からは楽しげな声が漏れている。
「(楽しそうな声……。うらやましいですわね)」
彼女は、3か月ほど前にハガ王国で暗躍していた者だ。
タカシたちにはセンと名乗っていた。
彼女はハガ王国での目的を達して、まんまと逃げおおせた。
「(はあ。闇の水晶も壊れてしまいましたし。引き続き金策を行う必要がありますわね)」
彼女は闇魔法を得意とする。
闇の水晶という高価な魔道具を使用することで、バルダインやナスタシア、クレアたちの思考を誘導していた。
しかし、クラッツやアイリスの聖魔法により闇魔法は浄化され、その余波で闇の水晶が壊れてしまったのだ。
彼女はトボトボと歩みを進め、タカシ宅の前を通り過ぎていく。
「(ある程度の資金が貯まれば、次の任務へ向かいましょう。確か、ガロル村でしたか。ドワーフの集落ですね。また骨の折れそうな任務です)」
彼女はそのまま歩みを進め、夜の街へと消えていった。
タカシたちが彼女と再び対峙するのは、少し先のことになる。
レベル17、タカシ=ハイブリッジ
種族:ヒューマン
役割:リーダー
職業:魔法剣士
ランク:C
HP:127(98+29)
MP:160(64+96)
腕力: 97(53+17+27)
脚力: 90(50+15+25)
体力:133(58+17+58)
器用: 73(56+17)
魔力:120(60+60)
武器:紅剣クリム
防具:アイアンアーマー、アイアンシールド
残りスキルポイント5
スキル:
ステータス操作
スキルリセット
加護付与
異世界言語
剣術レベル4
格闘術レベル1
回避術レベル2
気配察知レベル2
気配隠匿レベル1
視力強化レベル1
聴覚強化レベル1
MP強化レベル3
腕力強化レベル1
脚力強化レベル1
体力強化レベル2
魔力強化レベル2
肉体強化レベル3
闘気術レベル3「開放、感知、集中」
火魔法レベル5「ファイアーボール、ファイアーアロー、ファイアートルネード、ボルカニックフレイム、火魔法創造 “二十本桜” “バーンアウト””ボイル・ザ・ウォーター”」
水魔法レベル1「ウォーターボール」
風魔法レベル1「エアバースト」
聖魔法レベル1「ウィッシュ」
治療魔法レベル4「キュア、ヒール、エリアヒール、リカバリー」
空間魔法レベル3「アイテムボックス、アイテムルーム、転移魔法陣作成」
高速詠唱レベル1
MP消費量減少レベル2
MP回復速度強化レベル1
称号:
犬狩り
ホワイトタイガー討伐者
ジャイアントゴーレム討伐者
オーガ・ハーピィの盟友
ガルハード杯ベスト16
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