【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう

~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1560話 死になさい

公開日時: 2024年11月7日(木) 12:55
文字数:1,321

「お鎮まりください。動くと斬ります」


「…………」


 樹影の刀が、俺の首筋に添えられている。

 少しでも動いたら……斬られるだろう。


「待て、樹影! 早まるな!! 余の命令に背くつもりか?」


「申し訳ございません。しかし、この者は……危険です」


「余の客だ!」


 景春が慌てて言う。

 樹影は厳しい顔で俺に刀を押し当てている。

 そして、そのまま動かない。


 藩主と桜花七侍最古参。

 つまり、桜花藩のトップとその右腕だ。

 そんな2人の間でも、意見が割れているようだ。


「高志殿、戦闘態勢を解いてくれぬか?」


「断る。お前らは俺の敵だ。それに、刃を首筋に当てられて、戦闘態勢を解くバカはいない」


「……」


 樹影は無言だ。

 だが、刀に込める力が強くなった気がする。


「待て! 高志殿を斬るな!!」


「お叱りは後で受けます。この者は、景春様に斬りかかろうとしていました。これは反逆罪に該当する行為です。危険人物の排除は、私の最優先任務です」


「……高志殿、もう一度言う。戦闘態勢を解いてくれぬか?」


 景春が懇願するように言ってくる。

 しかし……。


「断る」


「ならば……死になさい」


 樹影の刀が動く。

 刃によって傷つけられた俺の首から、大量の血が吹き出す……ことはなかった。


「なっ!? なんと……!」


「刀が……溶けている……?」


 景春と樹影が、驚愕の表情で俺の首筋を見ている。

 そう。

 俺は、天守閣への突入前に『術式纏装・獄炎滅心』を発動していたのだ。

 その効果により、俺の全身は超高温となっている。

 体が高温になることの恩恵はいくつかあるが、その内の一つが『刀剣類による斬撃の無効化』だ。

 斬られるよりも先に刃を溶かせば、その攻撃は俺に届かない。


「ふん……。覚悟はできているんだろうな? 樹影とやら」


「何?」


「俺を殺すつもりで刃を振るったんだ……。殺されても文句は言えんぞ?」


「くっ……!!」


 樹影が溶けた刀を投げ捨てる。

 そして、素早く俺から距離を取った。

 その動きは悪くない。


「報告は聞いていましたが……。まさかこれほどまでに出鱈目な力とは……」


「樹影! 余は、高志殿に手を出すなと命じたはずだぞ!!」


 景春が叫ぶ。

 いつまで日和ったことを言っているのか。

 ギリギリで話が通じる奴なのかとも思ったが、見込み違いらしい。

 こいつはただ、現実が見えていないだけだな。

 手を出す・出さないなどという局面はとうに通り過ぎている。


「景春様! これ以上の譲歩は無用にございます!! あの男を生かしておいては……桜花藩が滅びます!!」


「滅ぶ? 人聞きが悪いな……。お前らの行為が招いた結果だ。それに、お前らにとって一つだけ良い知らせはあるぞ」


「何……?」


「お前らを排除して俺が藩主になった後も、桜花藩の名前は残してやる。感謝しろ」


「なっ!?」


 俺の宣告に、景春が驚愕の表情を浮かべた。

 そして、樹影が一歩前に出る。


「戯言を……。刀による攻撃が通じないことには驚きましたが、私には『血統妖術』がございます」


「ほう? 『血統妖術』か……」


 俺は興味深げに、樹影を見る。

 紅葉から、そういったものの存在だけは聞いたことがある。

 習得難易度が高く、実質的に限られた血筋の者にしか扱えない特殊な妖術だ。

 樹影はそれを使えるらしい。

 桜花七侍の実質的な筆頭を務めているその力、見せてもらおうか。

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