「くくっ! ようやく本性が出たな」
「た、助けて……。あたしを殺さないで……」
「そうだなぁ。助ける方法は一つあるぞ?」
「……っ! な、何をすればいいの? 何でもしますっ! あたしを殺さないで……!」
景春は必死だ。
もはや、自分が藩主だったことなど忘れてしまったかのようだ。
一人称が余ではなくなり、口調も変わっている。
「お前、俺の女になれ」
「……え?」
景春が硬直する。
俺は構わず続けた。
「お前、自分を『男』だと偽っていたのだろう? 家臣や民の全てを騙すとは、なかなかの大仕掛けじゃないか」
俺も、戦闘中にはすっかり騙されていた。
景春が女性である可能性に気付いたのは、監禁後に諸々の調査をしているときだった。
家臣団の一部に、『景春は美少女に言い寄られても動揺しない』『景春は男色家』などの噂が広がっていたのだ。
そういった噂を総合的に分析した上で、景春の就寝中にこっそり確認し、景春が女であることを確信するに至ったのである。
「ち、違……。あたしは男で……」
景春が口ごもる。
往生際が悪いな。
一人称は崩れているのに、まだ抵抗してくるとは……。
ギリギリで、自分が藩主であることを思い出してしまったか。
「では、これはどういうことだ?」
俺は景春の股間をまさぐる。
そして、彼――いや、彼女の秘部をマッサージした。
「――っ!!」
景春が声にならない叫びを上げる。
「くくっ、やはりな。お前は女だったわけだ」
「あ……っ! う……ぁ……」
「まぁ誤魔化す気持ちは分かるさ。男じゃないと、藩主としての正当性が薄まるからな」
「……」
景春が黙り込む。
彼女には血統妖術の『散り桜』がある。
かなり強力な妖術だ。
女性であっても、圧倒的な実力があれば当主の座に就くことはできる。
ただ、素の身体能力では男性に劣りがちだし、後継者問題も発生しやすくなる。
男が当主ならば側室を大量に囲うことで10人でも100人でも子供を作ることが可能だが、女当主だと同じことはできないからな。
相手となる男がたくさんいたとしても、孕むことができる体は1つしかないのだ。
生命を生み出すことができるのは女性だけ……。
それは祝福であると同時に、呪いでもある。
「だが、性別を偽るのは今日までだ」
俺は告げる。
これが本来の目的だ。
「自分が女であることを、家臣団の前で認めろ。そして、俺の女になるがいい。そうすれば助けてやる」
俺は力強く、そう宣言したのだった。
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