「曲者め! 覚悟しろ!!」
「ここで誅する!!」
階下からやってきた侍たちが、俺を取り囲む。
数は20人ほどか。
思ったより少ないな……。
俺は最上階に至るまでの通りすがりに、侍たちを倒してきた。
それにより、思っていた以上に桜花城の戦力が低下しているのかもしれない。
もしくは、斬った奴らの中に伝令役が多数含まれており、伝達網が半壊状態なのか。
あるいは……。
いや、細かい事情はどうでもいいか。
「今さら、末端の侍ごときでどうにかできるとでも思ったか」
「う……!?」
「がっ……!!」
侍の先頭集団が次々と倒れる。
自分が何をされたか、認識できた者は一人もいまい。
俺はただ……侍たちを峰打ちで攻撃してやっただけだ。
さて、残る敵は数人しかいないが……。
「そこまでにしてくれないか? 主よ」
「お前は……無月か。よくも俺の前に顔を出せたものだな」
俺は女忍者を睨みつける。
彼女は桜花七侍の一員であり、俺に寝返ったふりをして実はまだ敵だった疑惑がある。
紅葉たちの誘拐にも関わっているだろう。
「紅葉たちを返してもらおうか」
「そのことだが……致命的な行き違いがあったようだ。これは連中の落ち度なのだが……」
「致命的だと!? 紅葉たちに何かあれば、ただでは済まさんぞ!!」
「うっ!?」
無月が倒れ込む。
いかん。
殺意の波動が上手く抑えられない。
昨晩、桜花城全体の闇をいただいたときは気分爽快になった。
武神流道場に帰って紅葉たちが誘拐されたことに気付いたあとは、闇により増幅された直感に従って突き進んできた。
そして、景春や双子との戦いで多大なストレスを溜め込み、闇が一回り成長したような感覚がある。
このまま闇と共に突き進んでいきたい気もするし、少し落ち着いて冷静になるべきな気もする。
「す、凄まじい実力だな――。無月を殺気のみで倒すとは――」
「お前は?」
「俺は桜花七侍の一人、夜叉丸だ――。後ろの二人は、同じく桜花七侍の巨魁と蒼天だ――」
夜叉丸と名乗った男が告げる。
ずいぶんと間延びした口調だ。
しかし一方で、かなり緊張した様子も見受けられる。
「桜花七侍か。俺の敵ということだな」
ちょうどいい。
俺は桜花藩が保有する戦力の大部分を撃破してきた。
藩主の景春。
彼の妹である双子姉妹。
桜花七侍の雷轟、金剛、樹影。
4階を守っていた桜花四十九侍。
その他多数の一般侍たち。
そしてたった今、半ばうっかりではあるが無月を殺気によって無力化した。
まともな戦力は、桜花七侍の3人しか残っていないだろう。
その3人は、目の前にいる。
とても分かりやすいじゃないか。
「ま、待て――! 話がしたいのだ――!」
「話だと?」
「そうだ――。お前の目当ては、こっちの嬢ちゃんたちだろう――?」
「なっ……!?」
俺は夜叉丸の視線を追う。
その先には、巨魁と蒼天によって抱えられた3人の少女の姿があったのだった。
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