【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう

~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
猪木洋平@【コミカライズ連載中】

980話 昨晩はお楽しみだったようだね?

公開日時: 2023年4月3日(月) 12:19
文字数:2,173

 翌朝――。


「ふふ、昨晩はお楽しみだったようだね?」


 宿屋の店員にそんなことを言われてしまった。

 どうやら、声が漏れてたらしい……。

 いや、うん……仕方ないだろ?

 2人の美少女と一緒に一夜を明かしたんだから……。


「まぁね。おかげでぐっすり眠れましたよ」


 ここは正直に答えておくことにする。

 下手に隠して詮索されても面倒だしな。


「へへっ。一晩で二人も相手するなんてやるじゃないか! 見かけによらず性豪なんだな!」


「……別にそういうわけでもないんですけどね」


 苦笑しつつ、そう返す。

 とはいえ、客観的に見ればそうなるのか……?


「謙遜すんなって! ここは安宿だけど、防音には気を遣ってんだ! 普通の声量じゃ、聞こえないはずなんだよ。それなのにお嬢ちゃんたち二人の声が聞こえたってことは、相当――」


「すみません、そこまでにしておいてもらえますか」


 俺は慌てて彼の話を遮り、強引に話題を変えることにした。

 このセクハラ親父め。

 モニカとニムが顔真っ赤にしてるじゃないか。

 戦闘能力が高い彼女たちは、度胸もある。

 しかし、こうしたセクハラには慣れていないのだ。


「おっと、すまなかったな! いずれにせよ、くつろげたのなら何よりだ。少し割引きしてやるよ! 今度来るときにもぜひ泊まってくれよな!」


 そんなやり取りをしつつ、俺たちは会計を済ませる。

 そして、宿屋を出ようとするが――


「ああ、そうそう。昨日も言ったけど、この街にもオルフェスのマフィアが手を伸ばし始めているんだ。気をつけておくんだよ」


 店員に再度注意された。


「忠告ありがとうございます。気をつけることにしますよ」


 俺は店員に礼を言って、その場を後にした。

 その後、俺は街の中を歩いていき、とある建物の前で立ち止まる。


 そこは馬車の停留所だった。

 一般人が馬車で移動したいときは、こうした施設で馬車を探すのである。


「ここを利用するのは初めてだな……」


 領主である俺は、自前の馬車を持っている。

 普段はもちろんそれを利用する。

 また、馬車を持っていなかったとしても、冒険者には他に移動手段がある。

 行商人や隊商の護衛依頼などを受注すれば、実績を積みつつ移動ができるのだ。


 しかし、今回は事情が異なる。

 今回の旅路においては、あまり目立つ行動をしたくない。

 そこで、一般人が利用するような交通機関を使うことにしたというわけだ。


「さてと。オルフェス行きの馬車はあるかな……?」


 俺が停留所の中を見渡すと――


(おっ!?)


 ちょうど、そろそろ出発しそうな幌付きの荷馬車が目に入った。

 乗客らしき者たちが何人かいるものの、まだ席は空いているように見える。

 これ幸いとばかりに、そこに近づいていく。


「――すみません、この馬車ってどこまで行きますか?」


 御者に尋ねてみる。


「あぁ? なんだお前……? 行き先を聞いてどうする気だよ?」


 いきなり現れた俺に不信感を抱いたのか、彼は怪訝そうな顔をする。

 それにしても、無愛想な男だ。


「いえ、せっかくなので乗ってみようかと思いまして」


「ふん。これはオルフェス行きだが……」


「ならばぜひ俺たちを――」


「あいにくだけどよ、もう満員なんだよ」


 そう言って、御者は首を横に振る。

 満員なら仕方ないか……。

 しかし、見た感じ空席はまだいくつかあるように見える。


「あの、それならあそこの席とか空いてますよね?」


 俺は指差して尋ねる。

 そこには誰も座っていないように見えたからだ。


「あれは予約済みなんだ。おら! 分かったらとっとと失せな!」


 断られてしまった。

 ……やれやれだな。

 ここまで乱雑にあしらわれると思っていなかった。

 思わずため息が出そうになるが、グッと堪える。


 俺から男爵やBランク冒険者の地位を取り除けば、こんなものだ。

 服装も粗雑なものを敢えて着ているし、見た目や雰囲気から舐められても仕方がないだろう。

 上手く一般人に溶け込めていると、前向きに捉えることにしようじゃないか。


「……分かりました。お忙しい中すみませんでした」


 俺は一礼する。

 馬車は何もこの一台だけではないので、他のものに乗ればいいだけの話だ。

 とりあえず、次の便が来るまで待つとしよう。

 そう思って踵を返すと、不意に声をかけられた。


「おい兄ちゃん、待ちなよ」


 振り返ると、そこにいたのはいかにもガラの悪い男だった。

 歳は40代くらいだろうか?

 無精髭を生やしており、やや小太り気味で薄汚れた格好をしている。


 身なりだけ見ればただのチンピラだが……こいつは只者じゃないな。

 冒険者で言えば、Cランク以上の実力がありそうだ。

 腰に下げている剣はかなりの業物に見えるし、佇まいからも相当な実力者であることが窺える。


「はい? なんでしょうか?」


 内心警戒しつつも、平静を装って返事をする。

 すると男はニヤリと笑ってこう言った。


「お前、俺の席を奪おうとしてたんだろ? 御者とのやり取りを見てたぜ」


「……はぁ?」


 一瞬、何を言われているのか分からなかったが、すぐに理解する。

 先ほどの馬車にあった空き席。

 それは、このチンピラのための予約席だったらしい。


「人のモンを取ろうとするなんていい度胸じゃねぇか!」


「いえ、取ろうなんて滅相もない! ただ尋ねただけです」


 慌てて否定する俺。

 俺が本気を出せばワンパンで倒せるだろう。

 しかし、オルフェスへ到着して隠密小型船に乗り込むまでは、騒ぎを起こすわけにはいかない。

 穏便に済ませたい。

 だが、男はなおも詰め寄ってくるのだった。

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