俺はヤマト連邦に潜入中だ。
民家でフンドシを試着させてもらっていたところ、少女の悲鳴が聞こえた。
「へ、変態ーー!! ドロボーーー!!」
少女の悲鳴に、続いてそんな罵倒が聞こえる。
変態、そしてドロボウだと?
そんな不埒者がいるとは……。
だが、タイミングが悪かったな。
「安心してくれ! 犯罪者は、この俺が許さない!!」
俺は決め顔でそう叫ぶ。
もちろん、フンドシ姿だ。
いや……冷静に考えるとかなりおかしい状況だな。
だが、今はそんなことを気にしてはいられない!
「俺は女性の味方だ! そこの君、もう安心だ!!」
「きゃああーー!! こっち来ないでーーー!!!」
俺が少女に近づいた途端、彼女はさらに悲鳴を上げた。
いや……本当にタイミングが悪いな。
俺の背後かどこかに変質者がいて、そいつも彼女に近づこうとしているらしい。
こんなタイミングで叫ばれたら、まるで俺こそが変態のようじゃないか。
俺はただ、フンドシを試していただけなのに……。
「そこまでだ!!」
凛々しい女性の声が、俺の耳に届いた。
「えっ……?」
俺は思わず声の方に視線を向ける。
そこには――やや長めの黒髪をポニーテールにした美しい女性が立っていた。
年齢は20代前半ほどか?
長身ですらりとした体型で、顔立ちも整っている。
クールビューティーという言葉がよく似合う女性だ。
俺は彼女の姿を見て、思わず言葉を失ってしまった。
「……忍者?」
そう、それは忍者のような格好だった。
黒のぴっちりとしたインナーに紺色の袴、足袋。
そして、口元は布で隠している。
まさしく忍者のような格好だった。
「少女の下着を狙う卑劣な犯罪者め! だが、狙い相手が悪かったな。この『霧隠れの里』の住民に手出しはさせん!!」
ポニーテールの女性は、手にしたクナイを俺に向けてくる。
そして、凛とした声で叫んだ。
「里長カゲロウの名において、この私がお前を成敗する! 変態を野放しにしてたまるか!! 変質者の1人程度なら、今の私でも対処可能だ!!」
「えっ!? いや、俺は変態じゃ……」
完全に濡れ衣だった。
なぜ変態に間違われたのか分からない。
俺はただ、民家に干してあった女性もののフンドシを試着していただけだというのに……。
「問答無用!! 覚悟しろ!!!」
ポニーテールの女性――カゲロウは、オーラのようなものを高めて完全な戦闘態勢に移行している。
くっ……!
ここはいったん逃げるか!?
いや、冤罪で逃げるのも釈然としない。
ならば、迎え撃つまで!
俺は彼女の攻撃に備え、戦闘態勢を整えた。
「くらえ!! 【忍法・火遁の術】!!」
カゲロウが火の玉を俺に向けて飛ばしてくる。
おお……。
すごいな!
独自の火魔法か何かだろうか?
あるいは、魔法とはまた違った技術か?
火忍法とか火妖術とか、そんな感じかもしれない。
「なかなかの術だな。だが、甘い!」
俺は手刀で火球をかき消す。
未知の技術は興味深いが、肝心の出力が弱い。
俺の防御力を貫くには、まるで足りなかった。
「な、なんだと……!?」
カゲロウは驚きの表情を浮かべる。
彼女は信じられないものを見るような目で、俺を見ていたのだった。
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