【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう

~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
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583話 故郷の村に到着

公開日時: 2022年2月26日(土) 12:16
文字数:2,549

 数日後。

 ニルスやハンナたち一行は、無事に故郷の村へ到着した。


「道中の護衛、本当にありがとうございました」


「助かります。おかげで、この食料を村まで運べました」


 彼らが、同行していたユナや蓮華、それにトミーや雪月花に頭を下げる。


「へへっ。礼ならタカシの旦那に言わねえとな。俺たちはただ依頼をこなしただけだ」


「そうね! 帰ったら、しっかりとタカシさんに報告しておきなさい! この月が、ちゃんと役目を果たしたとね!」


「ええ、わかりました!」


「はい、必ず伝えます!」


 ニルスとハンナは、改めて深く頭を下げる。


「では、村長に話をつけてきます」


「少しお待ちください」


 そう言って、ニルスとハンナは村の中へと入っていく。

 まずは、村長の家に向かおう。

 ちなみに、ニルスの実家も同じ方面だ。

 その道中で、ニルスがぽつりと言葉を漏らす。


「……懐かしいな。もう1年以上ぶりか」


「そうだね。あの時は、まさかこんなことになるなんて想像すらしていなかったよ」


「ああ。口減らしで奴隷として売られ、お先真っ暗だと絶望していたんだがな。それが今では、お館様に召し抱えられ、破格の待遇で働かせてもらっている。その上、故郷への食料支援まで実現させてくれた。信じられない奇跡だよ」


 ニルスがしみじみと言う。


「うん。ほんとうに良かったよね」


 ハンナも、ニルスの言葉に同意する。


「しかしこうして改めて見ると、この村の寂れ具合はひどいな」


「そうだよね。でも、それも仕方ないかも。みんな、日々の暮らしで精一杯なんだもん」


「……確かにな」


 そうこうしているうちに、村の中ほどに到着した。

 近くを歩いていた村人たちが、彼らの存在に気付く。


「こんな村に旅人か? ……って、ニルスじゃねえか! 久し振りだな!」


「それにハンナもいるじゃない!」


「帰ってきたのか! いつの間に!」


 ニルスとハンナの顔見知りらしい人々が、次々と声をかけてきた。


「ああ。久しぶりだ」


「みんなも変わっていないようね」


 ニルスとハンナがそう答えた。

 そのとき、少し離れたところからまた別の者がやって来た。


「ニルス。なぜお前がここにいる?」


「兄さん……」


 話しかけてきたのは、ニルスの兄だ。


「まさか、逃亡したのか? 奴隷の脱走は重罪だと、あれだけ言っただろう?」


 確かに、奴隷が脱走することは重罪として知られている。

 仮にニルスが脱走奴隷であり、この村がそれを匿ったとバレれば、村ごと罪に問われる可能性もある。

 兄の懸念も当然だろう。

 だが、ニルスは若干の落胆を感じていた。


「(奴隷として売られていった弟と再会して、第一声がそれか……)」


 自分の売却金により、この村は一時的に飢えをしのげたはずである。

 その事実を知っているはずなのに、こんなことを言われるとは思っていなかった。

 別に涙を流して感謝しろとは言わないが、もう少し何かあってもいいのではないか。

 ニルスはそんな感情を抱いた。


「…………」


 ニルスが無言のまま立ち尽くす。


「どうしたニルス。黙り込んで」


「あ、いや……」


 兄の態度に落胆を覚えたのは確かだが、そんなことで村への援助を撤回するつもりはない。

 兄だけではなく他の村の者たちのためでもあるし、彼の主であるタカシの厚意を裏切るわけにもいかないからだ。


「ふん。まあいい。それより、さっきの質問に答えろ。お前は逃げてきたのか?」


「いや違う。俺はちゃんと許可を得た上で、この村を訪れたんだ」


「許可だと? 誰の許可を得たというのだ」


「もちろん俺の主だ。そして、ハンナの主でもある」


 ニルスがそう答える。


「なるほど……? 2人で同じ奴に買われたのか。ずいぶんと物好きな奴らしいな」


「物好きだと? どういう意味だ?」


 ニルスとハンナは、元はごく一般的な村人だ。

 特別に優秀なところはなかったものの、逆に何の使い道もない人材というわけでもない。

 奴隷としての価格も適切に設定されているし、彼らを購入したからといって物好きだと判断するのはおかしい。


「そのままの意味だ。恋仲の2人を並べて、いろいろとお楽しみなんだろ? 成金の商人か、貴族のボンボンか……。どうせくだらない男なんだろうな」


 ニルスの兄がそう吐き捨てる。

 恋仲の男女の奴隷を購入し、男が見ている前で女を犯す。

 あるいは、その男女を自分の目の前で絡ませる。

 特殊な趣味を持つ者であれば、確かにそうした用途で奴隷を購入することも考えられる。


「何だと! お館様を侮辱するな!!」


「お、おいおい。急に怒るなよ。ただの冗談じゃないか」


 ニルスが怒鳴り声に、兄が面食らう。

 掴みかからんばかりの勢いのニルスを、ハンナが何とか押し止める。


「お、落ち着いてよ、ニルス。早く本題に入ろう」


「…………そうだな」


 ニルスが何とか落ち着きを取り戻す。

 ハンナはそんな彼の肩に手を置いた。

 それから、ニルスが改めて口を開く。


「兄さん。今日はいい話があって来たんだ」


「ほう。どんな話だ?」


「食料支援だよ」


「食料支援?」


 ニルスの言葉に、兄が首を傾げる。


「ああ。この村は、まだ食料が不足しているんだろう? 見れば分かるよ」


「確かにその通りだ。特にここ最近は、気候が安定していないことに加え、魔物の数も多くてな。1匹1匹はさほど強くなくとも、数が多い。作物がやられちまっている。その上、瘴気に汚染されているせいで食えないタイプの魔物だからな……」


 ニルスの兄が悔しげにそう呟く。

 天候に、魔物の発生。

 田舎の村にとって、それは対処が難しい問題であった。

 領主に陳情もしているのだが、何か事情があるのか、なかなか有効な手を打ってもらえていないのが現状だ。


 ニルスたちが持ってきた大量の食料は、村の窮状をひとまず解決する手助けになるだろう。

 彼はそんな確信を抱きつつ、兄と話を続けていくのだった。




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 いつもお読みいただき、ありがとうございます。

 毎日更新を始めて、早いもので(?)500日が経過しました。

 文字数も200万字を超えました。


 初投稿の本作の他、10万字以上の長編作品だけでも5作、数万字の中編や1万字以下の短編を含めると20作以上投稿してきましたが、やはり本作には特別な思い入れがありますね。

 まだまだ毎日更新を継続していきますので、引き続きお楽しみいただけると幸いです!

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