俺とニムは仲を深めつつ、畑仕事に精を出していく。
俺がスキル『土魔法』や『栽培術』を取得したこともあり、この畑でとれる野菜や果物は好評である。
その上、ニムが加護の条件を満たしたことで、さらに捗るようになった。
まさに順風満帆。
そんなある日、俺は異変に気づく。
「ニム? 顔色が悪いけど、大丈夫か?」
「え……。そ、そうですか……?」
ニムは引きつった笑いを浮かべる。
誤魔化そうとしているようだが、明らかに普段とは様子が違う。
彼女との付き合いも既に2か月以上。
異変に気づかないわけがない。
「体調が悪いなら、無理することはないんだぞ? 畑仕事は俺がやっておくから」
「あ……。だ、大丈夫です! タカシさんにご迷惑はかけられません!!」
ニムは慌てたように否定する。
しかし、彼女の顔色は本当に悪い。
「なぁ、俺たちは家族同然だろ? 迷惑なんて考えなくていいから。遠慮なく相談してくれ」
「で、でも……」
ニムは逡巡しているようだ。
俺としても無理に聞き出すつもりはないが……。
ただ、今のニムをそのままにするのも心配である。
「……わかりました。じ、実は――」
ニムが口を開く。
そして、事情を話し始めた。
「そうか……。先日の魔物襲撃の件で、お得意先の娘さんが……」
ニムの畑で作っている野菜や果物は、ラーグの街に卸している。
露天や八百屋、それに料理屋などだ。
良質な作物を卸すことで、そういった店の人たちも喜んでくれていた。
そんな中、魔物が街中に入り込んで暴れるという事件が起きる。
被害は決して小さくなく、何人もの死亡者が出てしまった。
街を守ろうとした冒険者や衛兵、そして街の住民にも……。
「うぅ……。わたし、あの人のことをお姉ちゃんのように思っていたんです……。わたしがお腹を空かせているとき、食べ物を分けてくれて……」
「そうか……」
ニムはポロポロと涙を流す。
俺はそんな彼女の頭を撫でた。
「彼女のことは残念だった。だが、ニムが悪いわけじゃない。魔物の襲撃なんて……天災みたいなものだ」
「でも……」
「俺たちにできることをしていこう。そうだ、次にスキルポイントが入ったら土魔法を伸ばしていくのはどうだろう?」
「え……? 土魔法……ですか?」
ニムは驚いたような顔をする。
俺は彼女に優しく語りかけた。
「土魔法で防壁を強化するんだ。今の俺たちの力量では、自分の畑を覆うので精一杯だが……。頑張っていけば、街の防壁も強化できるかもしれない。それに、畑仕事にも活かすことができるだろう」
「そ、それは……。凄いですね!」
ニムが目を輝かせる。
うん、可愛いな。
この子のためにも、頑張らなければならないだろう。
「よし! さっそく明日から土魔法の修練をするか! ニムにも手伝ってもらうぞ」
「はい、もちろんです!」
ニムは涙を拭う。
そして、笑顔でうなずいたのだった。
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