【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう

~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
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1095話 ギルドの応接室へ

公開日時: 2023年7月27日(木) 12:30
文字数:2,059

 邪魔な冒険者はいなくなった。

 さっさとダダダ団頭領のリオンをギルドに引き渡したい。


「あの……」


「あら? あんた、まだいたの?」


 受付嬢が冷たい視線を向けてくる。

 なかなかの塩対応である。

 まぁ、ダダダ団壊滅の翌朝というクソ忙しい時に、見るからに弱そうな男が来たら、こんな反応をされるのも仕方ないかもしれない。


「実はですね……」


「もうっ! 本当にうるさい人ねっ! 今、私は忙しい……の……」


 受付嬢が俺を怒鳴りつけてくる。

 だが、急に黙った。

 受付嬢の目が大きく開かれる。

 彼女の視線は俺が提示したギルドカードに注がれていた。

 そこには『Bランク冒険者』の文字が刻まれている。


「なっ……。えっ? こ、これって……」


「しっ! 静かに!!」


 俺は受付嬢の口を塞ぐ。

 ここは冒険者ギルドの中だ。

 ギルド内の職員は慌ただしく動いているし、待機中だった冒険者の1人は先ほど出ていった。

 今の俺たちに大きく注目している者はいない。

 だが、あまりにも大声をあげればやはり注目を浴びてしまうだろう。

 それは避けたい。


「静かにしてください。いいですね?」


 受付嬢は目を白黒させている。

 が、やがてコクコクと首を縦に振った。


「ふぅ……。よし、それじゃあ、まずは奥の部屋に案内してくれませんか?」


「は、はひ……」


 受付嬢に先導されて、ギルドの奥の部屋へと向かう。

 ちなみにモニカとニムもいっしょだ。

 それを見た冒険者たちがつぶやく。


「――ん? おい、順番を間違えていないか?」


「でへへ……。可愛い女の子たちだなぁ……」


「奥の部屋に案内するなんて、めずらしいな……」


「さっきのあいつみたいに乱暴なことをするつもりはないけどよ。特別扱いされる奴を見ると、いい気はしないもんだぜ……」


 ……どうやら、少しばかり目立ってしまったようだ。

 まぁ、これぐらいは仕方ないよな?

 下手に長居すると、さっきの男みたいに絡んでくる奴が現れるかもしれないし……。

 受付嬢にいつまでも塩対応をされていては、話の進めようがない。


「ちっ! 生意気な奴だ……」


「さっきの話じゃ、Dランク冒険者って言っていたか?」


「あんな奴が可愛い女の子を2人も連れているなんて……。くそっ!」


「へへっ。童貞の僻みは見苦しいぜ?」


「なっ!? ど、どどど童貞ちゃうわっ!!」


 奥の部屋に向けて進んでいく俺たちを、冒険者が恨めしげに見つめている。

 まぁ、そんなに羨ましいなら、俺を倒してみるか?

 チート持ちの俺をな。

 ――などと思ったが、口には出さない。

 俺は大人なのだ。

 だが、そんな大人対応をした俺に対して、1人の男が立ち上がる。


「おい! お前! 1人だけ特別扱いされやがって! いい気になってんじゃ――うっ!?」


 突然、その男が怯んだ。

 今度は、俺は何もしていない。

 それなのに男が怯んだ理由は――


「…………」


 ――受付嬢だ。

 彼女が般若のような表情を浮かべながら、男を睨んで威圧していたのだ。

 まるで、ここで対応を間違えれば死んでしまうかのような必死さである。

 怯んだ男は、そのまま後退りし、元いた場所に戻っていった。


「えっと……」


「「ひっ!?」」


 俺は何かしらのフォローをしようとしたが、冒険者たちは一斉に視線を逸らした。

 彼らは俺を恐れているのではない。

 ただならぬ雰囲気の受付嬢を恐れているのだ。


(事情を知らないカス共……! 余計な真似をするんじゃないわよ……!! Bランク冒険者を怒らせたら、こんな地方支部じゃ手に負えないでしょうが……!!)


 ――そんな声が受付嬢から聞こえた気がした。

 彼女は俺の方に振り返ると、笑顔を見せる。


「さぁ、こちらです」


「あ、ああ」


 俺は何も見ていない。

 きっと、空耳だったのだろう。

 そう思うことにした。


「どうぞ、お入りください」


 受付嬢に促された部屋に入る。

 そこは応接室といった感じの場所だ。

 俺たちがソファーに座ると同時に、お茶が出てくる。


(う~む……。なかなかに迅速で丁寧な対応だな……)


 やはりBランク冒険者としてのギルドカードを提示すれば話が早い。

 とはいえ、堂々と提示すれば目立ってしまっていただろうし、今回の流れは何とか及第点といったところだろう。


「それで……ご用件は何でしょうか?」


「ギルドマスターを呼んでこい。話はそれからだ」


「……」


 受付嬢の顔が引きつる。

 そして、恐る恐るという感じで聞いてきた。


「その……失礼かもしれませんが、あなたは一体……。いえ、そもそもBランクの冒険者様が何のために……?」


「いろいろと事情があるのだ。一介の受付嬢に伝えるようなことじゃないな」


「……分かりました。ギルドマスターをお呼びします。少々お待ちくださいませ」


 受付嬢は頭を下げて、扉へと向かう。

 少し申し訳ないが、念押ししておこう。


「待て。お前のために言っておくことがある」


「な、なんでしょうか……?」


「ギルドマスターを呼んだらお前の役割は終わりだ。通常の業務に戻り、さっき見たギルドカードの情報は忘れろ。誰にも伝えるな。もし口外したら……分かるな?」


「ひっ……!? は、はい……。か、かかか、かしこまりました!」


 受付嬢は何度も首肯する。

 そして、逃げるように退出したのだった。

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