【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう

~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1509話 月影三丁焔斬り

公開日時: 2024年9月17日(火) 12:30
文字数:1,374

「はぁ、はぁ……!」


 俺は息を切らせながら走る。

 ライバル道場の手の者によってさらわれた桔梗。

 彼女の安否が心配だ。


「無事でいてくれ……!」


 俺はそう祈りながら走る。

 そんな俺の前に、数人の男たちが立ちふさがった。


「なんだ?」


 俺は足を止めないまま、彼らを観察する。

 男たちは、木刀や槍などを構えていた。


「へへっ、ここは通さねぇよ」


「武神道場が潰れれば、我ら雷鳴流の天下となる……」


「お前は新入りらしいが、追ってきた以上は容赦せん。再起不能になってもらうぞ」


「そうか……」


 俺は男たちを見る。

 雷鳴流という名前は、桔梗から聞いたことがある。

 確か、武神流と並ぶ二大流派の一角だ。

 武神流とは敵対関係にあるらしい。

 今回の襲撃について師範から詳しい話を聞く時間はなかったが、おそらく桔梗をさらったのも彼らなのだろう。


「悪いが、先を急いでいる。邪魔するなら押し通る」


「ほう……。我らの恐ろしさを知らんようだな?」


「くくっ! その無知が命取りよ!!」


 雷鳴流の一人が叫ぶ。

 直後、彼らは一斉に襲い掛かってきた。


「死ねい!」


「我ら雷鳴流に逆らったことを後悔するがいい!!」


 男たちが一斉に攻撃してくる。

 俺はその全てを紙一重で回避した。

 そして、そのまますれ違うようにして通り過ぎる。


「何!?」


「ば、馬鹿な……!?」


 男たちが驚愕の表情を浮かべる。

 だが、構っている暇はない。

 もう終わったのだから。


「ぐ、偶然だ!」


「その通り! 我らの剣の全てを躱し切るなど、あり得ん!!」


「次はこうはいかんぞ!!」


「足だけは速いようだが……逃げずに戦え! 卑怯者め!!」


 男たちが俺の後方で騒いでいる。

 俺は完全に無視して、さらに走る速度を上げた。

 彼らと戦う必要などない。

 全ては既に終わっている。


「自分が斬られたことにすら気付かないとはな……」


「何を訳の分からないことを――がふっ!?」


「お、おい!? どうした兄弟――あがっ!!」


「うぎっ!?」


 男たちが次々に倒れていく。

 俺は彼らとの戦闘を回避して逃げたわけではない。

 彼らの攻撃を回避したすれ違いざまに、既に一撃をお見舞いしていたのだ。


「月影三丁……焔斬り……」


 俺は呟く。

 俺の手には、刀が握られていた。

 ただし、通常の刀ではない。

 俺の魔力が通された刃は、焔のように真っ赤に染まっている。

 月影の中、その赤さは異彩を放っていた。


「安心しろ、峰打ちだ……」


 俺は引き続き走りながら、男たちに告げる。

 師範をボコボコにし、桔梗を誘拐したことは許しがたい。

 だが、命まで奪う必要はないだろう。

 俺はそう自分に言い聞かせる。


「ぐ……っ!?」


 心の底から、黒い感情が溢れてくる。

 俺の仲間を害する奴らを、皆殺しにしたい……!

 全ての女は俺のものだ……!!


「う、ぐ……」


 この感情は、どこか覚えがある。

 しかし、よく思い出せない。

 失われた記憶の中に、その答えがあるのだろうか?


「……落ち着け、俺。桔梗がさらわれたことは事実だが、まだ無事な可能性は十分にある。黒い感情に身を任せるより、救出を優先すべきだ……」


 俺は自分の黒い感情を必死に抑え込む。

 これは理性で抑えるしかない類のものだ。

 ……いや、魔法や魔導具でどうにかできる可能性もあるか?

 過去にそんなことがあった気もするが、よく思い出せない。


「とにかく、今は桔梗だ……」


 俺は走る速度を上げる。

 そして、ついに誘拐先と思われる拠点――雷鳴流の道場に到着したのだった。

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