【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう

~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1489話 即興劇

公開日時: 2024年8月28日(水) 12:09
文字数:1,642

「紅葉、何をする気だ?」


「せっかくなので、悪い人と戦っている設定にしましょう。私は、高志様を襲う悪い侍です」


「なるほど……」


 俺は頷く。

 確かに、その方がそれっぽいな。


「そういうことなら、オレも!」


 流華も窓際に立つ。

 彼は、練習中の短刀を構えた。

 木の棒を持つ紅葉以上に、なんだか『それっぽい』感じだ。

 元々はスリの常習犯だったこともあってか、どことなくアンダーグラウンドのチンピラっぽい空気がある。


「いいだろう。では、行くぞ……?」


「はい!」


「おう!」


 2人はそれぞれ武器を構えた。

 そして俺は、急造で考えたセリフを口にする。


「クハハハ! 身の程知らずどもめ! この俺を倒そうなどと片腹痛いわ!!」


「ぐ……。て、てめえ……何者だ!?」


「私たちが……手も足も出ないなんて……」


 流華と紅葉が演技を合わせる。

 なかなかの対応力だ。

 まるで即興劇だな。

 しかし、照れがあるのか、ささやくような声量である。


 今は夜だし、俺も声を落とした方がいいか?

 ……いや、2人の声量が小さいだけで、俺だって別に叫んじゃいない。

 このままでいいだろう。


「クハハ! お前らの手は全てお見通しだ! この俺に逆らった時点で……お前らは地獄行きなんだよ!」


 俺は悪役っぽく叫んだ。

 2人がさらに演技を続ける。


「ちく……しょう……」


「私たちは……ここまでのようね……」


「クハハ! だが……土下座して命乞いするなら、命だけは助けてやらんでもないぞ!? さぁ、俺の目の前で、今すぐにひざまずけ!!」


 俺は勝ち誇って言う。

 いかにもよくありそうなセリフだろう。

 このあとも展開も決まっている。

 俺はそう思ったのだが……


「「ははー!」」


「え!?」


 2人は勢いよく土下座した。

 おいおい……。

 さっきまでの『それっぽい』感じはどうした?


「待て待て。2人とも、落ち着け」


「え? 何か問題でも……?」


 紅葉が首を傾げる。

 本当に分からないらしい。


「問題しかないだろうが。設定を考えてみろ。俺と敵対していた悪い侍が、誇りを捨てて土下座したんだぞ? おかしくないか?」


「……確かにそうか」


 流華が納得したように頷く。

 紅葉も、流華につられるように頷いた。


「仕方ない。今のはなかったことにして、続けていくぞ。実際には、俺のセリフを受けて土下座する敵なんていない。むしろ、怒りのままに襲いかかってくるものだ。俺は当然、向け撃つことになる。さぁ、よく見ておけよ……」


 俺は魔力を軽く開放する。

 今は夜だし、全力でぶっ放すことは避けた方がいいだろう。

 斜め上に撃つとはいえ、無害な野生の鳥とかに当たらないとも限らないしな。


「くらえっ! 【ドスコイ・エボリューション】!!」


 俺の手のひらから衝撃波が放たれる。

 これは相手を弾き飛ばすことに特化した技だ。

 その波動は、窓から外に向かって飛んでいった。


「「ぐわあああぁーー!」」


 紅葉と流華がその場でぶっ飛ぶ演技をする。

 もちろん、彼女たちに魔法は当たっていない。

 演技の続きだろう。

 実際に直撃すれば、こんなものでは済まない。

 かなり遠方までぶっ飛ばされる。

 まぁ、『対象者の質量を半ば無視して勢いよくぶっ飛ばす代わりに、着地時の衝撃が緩和される効果のためにも魔力を割く』という特殊な制約を付けた魔法なので、打ちどころが悪くない限りは死にはしないのだが……。


「あばよ! せいぜい、夜の空を楽しむんだな!!」


 俺は窓枠に足を乗せて、決めゼリフを言う。

 実際には誰もいない空に向けて斜め上に撃っただけだけどな。

 こういうのは気分が重要だ。


「高志様……素敵……」


「兄貴、カッコいいぜ!」


 紅葉と流華が目をキラキラさせている。

 どうやら、2人のハートにもドストライクだったらしい。

 紅葉は俺の格好良いところを見て、流華はいつか自分がぶっ放すところを想像して……といったところだろうか?

 忠義度が微増している。


「いやいや、それほどでも……。とにかく、これで満足しただろう? さぁ、もう寝よう」


「はい!」


「おう!」


 俺は布団に潜り込んだ。

 紅葉と流華は、俺の左右にそれぞれ陣取る。

 こうして、3人の夜は更けていったのだった。

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