盗掘団の捕縛作戦の続きだ。
俺、ミティ、アイリス、マクセル、ギルバート。
少数精鋭の先遣隊として盗掘団のアジトの偵察を行っている。
俺がうっかり鳴子の仕掛けを作動してしまったため、盗掘団と戦闘になった。
下っ端戦闘員たちは大したことがなかった。
俺たちで軽く蹴散らしていく。
まあ、俺たちは全員が特別表彰者だしな。
そこらの盗掘団など敵ではない。
残りは、ブギー頭領とジョー副頭領。
それに下っ端戦闘員が数人だ。
激しい戦闘になる……かと思ったが。
「見ろよコイツァ…見事なオリハルコンだ。それに、これが”蒼穹の水晶”とやらか」
俺はそう言う。
ブギー頭領やジョー副頭領も、予想以上に簡単に撃破することができた。
そこそこ強かったが、俺たちの脅威になるレベルではなかったのだ。
戦利品として、彼らが隠していた”オリハルコン”と”蒼穹の水晶”を回収しようとしているところだ。
オリハルコンは、光り輝く鉱石だ。
オリハルコンやミスリルは、ファンタジーものに定番の謎鉱石だな。
ダイアモンドや鉄などと何が違うのだろう?
俺は鉱石には素人だからわからない。
だが、ブギー頭領の口ぶりからして、それなりに貴重なものであることは確かだろう。
そして、”蒼穹の水晶”。
青く輝く神秘的な水晶だ。
ディルム子爵が保管していたという”紅蓮の水晶”と似たような雰囲気がある。
”紅蓮の水晶”は赤く輝く神秘的な水晶だった。
「ハァ…!! お前らに…………。その”蒼穹の水晶”を持つ資格はねェ……!!!」
ブギー頭領は満身創痍になりながらも、抵抗する意思を失わない。
彼がフラフラと立ち上がる。
何やらこれらのお宝に執着しているようだ。
「資格? これじゃ資格になりませんか!!?」
ミティがハンマーを構え、ブギー頭領に駆け寄る。
大きなハンマーを軽々と振り回す。
「ビッグチョップ!」
「ぐあっ!」
ミティのハンマーによる攻撃がブギー頭領にヒットする。
彼が倒れる。
「ハッハッハ!!! あなたたちより、私たちのほうが強い!!! 盗掘者から宝を徴収するために、これ以外にどんな資格が必要なんです!!?」
ミティがそう言う。
なかなかイカツイ言葉だ。
普段の彼女は温厚で優しいのだが。
俺の叙爵に向けて、少し前のめり気味のようだ。
「くっ! ブギー頭領! 耳を塞いでいてください。……響き渡れ。ソニックボム!」
ジョー副頭領が、音魔法を発動する。
怪音が発生する。
「うっ!」
「ぐあっ!」
マクセルとギルバートがそううめき声をあげる。
もちろん、俺やアイリスにも攻撃は届いている。
耐えられないほどではないが、なかなか不快な音だ。
それに、衝撃波としての物理的なダメージも発生している。
ジョー副頭領は、まだ魔法を発動し続けている。
彼自身にも音魔法によるダメージは入っているようだが、彼が気にする様子はない。
根比べをする気か。
「……の野郎」
ミティがイラ立ち、魔法の発動者のジョー副頭領に攻撃を加えるために構える。
しかし。
「待て、ミティ。俺に任せろ」
俺はそう言う。
この臨時パーティのリーダーとして、いいところを見せておかないとな。
「またアレか…。最上級のオリジナル火魔法……!!」
ブギー頭領がそう言う。
その通り。
最上級火魔法”火魔法創造”で開発した、俺の新技である。
彼らをここまで追い込んだのは、この新技によるところが大きい。
「燃え爆ぜろ。フレア……」
俺はそう言って、攻撃のために魔力と闘気をためる。
そして。
「ドライブ!」
俺は爆速で移動する。
自身の後方に火魔法を発動し、推進力に変換しているのである。
加えて、火を体と拳にまとうことで、攻撃力も向上している。
「避けろ! ジョー!」
ブギー頭領がそう叫ぶ。
しかし。
「がはっ!」
俺の渾身の右ストレートが、ジョーを襲う。
彼が大きく弾き飛ばされる。
ドンッ!
彼が木にぶつかって、止まった。
そのまま立ち上がってこない。
まあ彼もなかなかやるようだったし、死にはしないだろう。
「さァ行こうぜ。オリハルコンと蒼穹の水晶を持ってな」
「そうだな。こいつらの捕縛は後発隊に任せようか」
俺の言葉に、マクセルがそう答える。
「私たちは別の拠点を潰しに行きましょう。手柄は全部私たちのものです!」
「ガハハ! まだまだ暴れるぞ!」
「うん。他の拠点は、さっき逃げた人たちが向かった先にある可能性が高いと思う。みんなで向かおう」
ミティ、ギルバート、アイリスがそう言う。
やはり、ミティは手柄に向けて前のめり気味だ。
俺のために張り切ってくれるのはありがたいが。
少し心配だ。
「ブギー頭領とやら…!! これに懲りたら、盗掘はやめることだ。何やら大層な夢があるようだが……。犯罪者の夢は決して叶わねェと知るべきだ。ハハッハ!!!」
そう、俺たちは夢を見ている場合ではないのだ。
30年後の……、いやもう1年が経過したから、29年後か。
世界滅亡の危機を回避しなくてはならないからな。
役に立ちそうなアイテムは、俺がいただく。
長い目で見れば、それこそが人類のためでもあるのだ。
俺、ミティ、アイリス、マクセル、ギルバート。
俺たちは意気揚々とその場を後にしようとする。
しかし。
「待て若造…」
「!」
ブギー頭領が俺たちを呼び止める。
彼がフラフラと立ち上がる。
まだ何かあるのか?
痛めつけ足りなかったか。
あんまり元気だと、後発隊が来るまでに回復して逃げ出してしまうかもしれない。
もう少しダメージを与えておくか。
「夢を見る度胸もねェヒヨッ子が…冒険者を名乗るんじゃねェ」
「何だと?」
満身創痍のおっさんが言ってくれる。
その体で、何ができるというのか。
現実を思い知らせてやろう。
紅剣のタカシの名を、その胸に刻め。
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