「紅葉! 流華に……桔梗も!!」
俺は3人の様子を確認する。
3人とも、意識を失っているようだった。
「心配しなくて良いぞ――。疲れて眠っているだけだ――」
「疲れているだと……? ま、まさか……!?」
俺は愕然とする。
敵地に囚われた少女たちが、どのような仕打ちを受けるか?
相場は決まっている。
つまり……
「拉致した少女たちを、無理やり辱めたのか!? 度重なる凌辱によって、彼女たちは疲れ果ててしまったのだろう!? この鬼畜共め!!」
俺は叫ぶ。
3人の少女の体は、今も巨魁と蒼天の手の中にある。
「は、辱めた――? いや、違う。俺たちはあくまで、事情を聞いただけ――」
「事情を聞いた……? つまり、拷問したということか!!」
俺は激昂する。
拉致してきた少女から情報を引き出すために、仲良くお話するだけ……。
そんなこと、あるはずがない。
効率良く情報を引き出すために、彼らは紅葉たちを拷問したのだろう。
そのため、肉体的にも精神的にも疲れ果てた紅葉たちはこうして気を失っているのだ。
彼女たちが気を失っていることこそ、彼らの非道の証左である。
「ご、拷問などしていない――。俺たちは貴殿と敵対したいわけではないのだ――」
「は? 今さら何を言っている?」
俺は夜叉丸を睨む。
意味が分からない。
俺から大切な者たちを奪っておいて……。
「この嬢ちゃんたちは返そう――。ただ、一つだけ条件がある――」
「条件だと?」
「景春様たちの命だけは見逃してやってほしいのだ――。あのお方たちは……この藩にとって必要な人なのだ――」
「なるほどな。つまり、紅葉たちの身柄と引き換えに、藩主を無事に逃がせ……と。そういう話か」
「ま、まぁ、そういうことになるか――。貴殿にも言い分はあるだろうが、ここは穏便に済ませてほしいのだ――」
夜叉丸が言う。
藩主直属の侍としては、当然の要求だろう。
だが……
「断る」
「なっ!? な、なぜだ――!?」
夜叉丸は驚愕の表情を浮かべる。
俺は構わず続ける。
「だってほら……紅葉たちはもう返してもらったし……」
「は? 何を言っ……て……?」
ようやく、夜叉丸が気付く。
彼の後ろで立っていたはずの巨魁と蒼天が倒れ込んでいることに。
そして、彼らが抱えていたはずの紅葉の身柄が、いつの間にか俺の腕の中に移動していることに。
「な、何だ……? 速度……いや、そんなちゃちなものでは――」
「というわけで、既に紅葉たちは返してもらったんだ。お前の交渉は、まったく意味を成さない」
「う……うぅ……!」
夜叉丸は呻く。
苦渋に満ちた表情だ。
巨魁と蒼天すら無力化された今、桜花七侍のまともな残存戦力は彼一人。
まさにラストサムライである。
「安心しろ。問答無用で死刑にはしないさ。むしろ、俺の下で引き続き桜花七侍として使ってやってもいい」
「な、何を馬鹿なことを――。謀反者の配下に下るなど――」
「そうか? ま、後でじっくり考えてくれてもいいさ。とりあえず……眠ってろ」
「ぐぁっ……!」
俺は峰打ちで夜叉丸を昏倒させる。
これで良し。
桜花城の防衛戦力は全て潰した。
紅葉、流華、桔梗は意識を失っているものの、大きな怪我はない。
もしあっても俺の治療魔法で治療できる。
拷問によって受けた精神的ダメージも、根気よく付き合っていけば癒せるはずだ。
目下のところの心配事はなくなった。
ならば……
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