俺はニムに続いて、モニカにも熱烈なキスをした。
それを見ていたサーニャちゃんは顔を真っ赤にしている。
「妹さんが見ている前で、そんな破廉恥なことをするにゃんて……! 信じられませんにゃ!!」
サーニャちゃんは顔を真っ赤にして叫ぶ。
感情表現が豊かで、可愛いな。
「いやいや、これは必要なことだったんですよ」
「必要って……一体にゃんのことですかにゃ!?」
「なぜなら、俺は可愛い女性とキスをするのが大好きだからです!!」
俺は堂々と宣言する。
サーニャちゃんもこの場にいる以上、俺は再び『Dランク冒険者タケシ』になりきる必要がある。
地位や戦闘能力をひけらかすわけにはいかない。
だが、女性好きであることぐらいは伝えても構わないだろう。
「にゃっ!? にゃにゃにゃっ!?!?」
「おっと……。大丈夫ですか?」
俺の言葉を聞いた瞬間、サーニャちゃんはフラリと倒れそうになる。
俺は慌てて支えてあげた。
「にゃにを言ってるんですかにゃ!?!?!?」
「いやぁ……。恥ずかしながら本音ですよ?」
「ふ、ふざけないでくださいですにゃ!! 血の繋がった妹さんとキスしたばかりか、目の前でまた別の人とキスするにゃんて……!! 変態ですにゃ!! 浮気男ですにゃ!! 不潔ですにゃ!! 最低ですにゃ!!!」
サーニャちゃんは顔を真っ赤にしたまま、俺を罵倒してくる。
なかなか元気な子だな。
でも、その反応が普通でもある。
妹のニム(本当は妹ではなく妻だが)とキスをするなんて、常軌を逸しているだろう。
(うーむ……。こんなことになるとはな……。海水浴は迂闊だったか……)
俺、モニカ、ニムの3人だけで海水浴をするぐらいなら、目立たずに済むと思っていた。
しかし実際には、サーニャちゃんに見つかってしまっている。
いや、見つかったこと自体はいいのだが、彼女の目の前でキスをしたのはマズかった。
(このままサーニャちゃんを帰すわけにはいかない……。街の人たちに『あのDランク冒険者タケシって奴は、妻だけでなく妹にまで手を出している変態野郎らしいぜ』なんて噂が流れてしまったら――)
……いかんいかん。
想像したら、急に不安になって来たぞ。
俺の評判が落ちるだけならばまだいいが……。
もしもモニカやニムまで変な目で見られるようになってしまったら……。
そして、ひょんなことから俺たちの正体がバレて、ヤマト連邦への潜入作戦に支障をきたしたら……。
それだけはマズイ。
絶対に避ける必要がある。
「さっちゃんさん。あなたは言いましたね? 妹とキスをするのはマズイ、と」
「ええ、言いましたにゃ。当たり前じゃないですかにゃ」
「だったら……代わりにあなたの唇を奪っても問題ないはずです!」
「にゃ、にゃにゃにゃ……!?」
俺はサーニャちゃんを抱き寄せる。
そして、そのまま顎をクイっと持ち上げた。
「ちょ、ちょっと待つですにゃ! お客様は旅に出るから……今はそんにゃことはしない方がいいって言っていましたにゃ!!」
「気が変わりました! 旅に出れば会えないのですよ!? だから、今のうちに愛を確かめておきたいのです!!」
「いや、でも……! あっ……! にゃっ……んんっ!!」
俺は強引にサーニャちゃんの口を塞ぐ。
サーニャちゃんの柔らかい唇の感触が伝わってきた。
「んっ……ちゅっ……んんっ……」
「んんんんんん~~っ!?」
最初は抵抗していたサーニャちゃんだったが、次第に大人しくなっていく。
しばらくすると、彼女は俺の背中に手を回してきた。
「ぷはっ! はぁはぁ……。い、いきなり激しすぎますにゃ……」
「すみません……。さっちゃんさんが魅力的すぎて、加減ができなかったもので……」
「そ、それは褒め言葉と受け取っておくですにゃ……」
頬を赤く染めるサーニャちゃん。
その可愛らしさと言ったらない。
(くぅっ……! こうなったら最後までヤッてやる!!)
俺は心に決める。
そして、おもむろに海パンに手を掛けて――
「はいはい、そこまでにしておいてね」
「に、兄さん……。注目されちゃってます……」
モニカとニムに止められた。
いかんな、俺としたことが。
愛する妻の目の前で、新しい別の女性に手を出してしまうとは……。
いや、今はそれよりも――
「注目……? どういうことだ?」
「ほら、砂浜の方を見て」
俺たちがいるのは、海の少しだけ沖合側である。
海水浴客はまばらだ。
しかし、モニカが指差す先を見ると――
「タケシ! あんたっていう人は!! 私を弄んだだけじゃなく……そんなに若い子に手を出すなんて……!!」
烈火の如く怒り狂ったエレナがいた。
近くには、ルリイとテナもいる。
これはまた、少しばかり面倒――じゃなくて、面白そうなことになりそうだ。
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