やはり何度見てもミティの微笑みは素晴らしい。
まるで天使。
まるで太陽。
まるで宝石。
世界で一番可愛くて美しいのではないだろうか。
思わず見とれてしまう。
「タカシ様……」
ミティが俺に体を寄せてくる。
俺は彼女を優しく力強く抱きしめる。
俺は今、女神を抱きしめている。
そのまま少しの時間が経過した。
ふと気が付くと、ミティは眠ってしまっていた。
可愛い寝顔だ。
一瞬邪な感情が芽生えたが、必死で我慢する。
いくら何でも買った当日に手を出すのはマズイだろう。
それも寝ている隙にとか。
我慢だ我慢。
俺の理性があるうちに、さっさと寝ることにする。
ベッドは2つあるので、当然別々のベッドだ。
ミティを布団に入れてやる。
起きる気配はない。
ぐっすりと寝ている。
今日はいろいろとあったし、疲れていたのだろう。
俺も加護付与スキルを試してから寝よう。
加護付与スキルを発動する。
お?
ミティが発動条件を満たしたようだ。
「ミティに加護を付与しますか? はい/いいえ」というメッセージが表示されている。
彼女が起きているときに付与したほうがいいか?
まあ加護というからには悪いものでもないだろう。
「はい」を選択する。
一瞬視界が点滅した。
俺の体に変化は見られない。
寝ているミティにも特に変化はないようだ。
すやすやと眠っている。
もう一度加護付与スキルを試そうとすると、「近くに対象者が存在しません」とエラーメッセージが出てしまった。
どうやら一度加護を付与すると同じ人にはもう発動できないようだ。
恒久的に効果を発動するタイプのパッシブスキルなのかもしれないな。
そうだとすれば、肉体強化のようにステータスが強化される効果があるのか?
よく分からないな。
念のためステータス管理画面を確認してみる。
おお?
俺のステータスだけではなく、ミティのステータスも見れるようになっている。
注意深く彼女のステータスをチェックしていく。
どうやら加護には大きく2つの効果があるようだ。
1つ目はステータスの強化。
見た限りでは、全能力値が3割強化されている。
地味ながらかなりの強化率だ。
ミティのステータスの中で特筆すべき点はやはり腕力だな。
ミティはレベル2で腕力22。
加護による強化込みで腕力29。
俺はレベル10で腕力28。
現状でミティの方が高くなってしまっている。
男としてプライドが傷つく思いもあるが、まあこれはこれで良いことだとは思う。
ミティには腕力を活かして戦闘で活躍してもらう。
そうすれば、彼女も自分に自信を取り戻してくれるだろう。
腕力が高い反面、器用の値は低い。
鍛冶ができないほど不器用という話だったしな。
もともとの値が低いため、加護による強化にもさほど期待できない。
細かな技術が必要な武器は扱えなさそうだ。
加護の効果の2つ目はスキルポイントだ。
これは俺の「ステータス管理」と同じで、ポイントを消費してスキルを取得するものだろう。
現在ミティのスキルポイントは10ある。
どうするか。
本人の希望を聞いて決めるべきか?
彼女に「もし好きな能力を伸ばせるなら何を伸ばすか」と聞いてみるか?
いや、それはチートスキルの存在を明かすことにもつながる。
まだ時期尚早だろう。
こんなチートスキルの存在を知ったら、精神的に彼女の重荷になるかもしれない。
もう少し落ち着いてから話そう。
しかしだからといって、スキルを取らずに保留するという選択も良くない。
明日からは魔物狩りを手伝ってもらう予定だ。
何かスキルは取っておいたほうが良い。
じっくり考える。
候補は「槌術」「投擲術」「腕力強化」「器用強化」「風魔法」の5つまでに絞った。
槌とはハンマーのことだ。
腕力をもっとも活かすことができる武器だろう。
斧や大剣を使うことも考えたが、それらは刃の部分を上手く当てる必要がある。
器用のステータスが低い彼女では厳しいかもしれない。
その点ハンマーであれば、細かいことは気にせずドカンと振り下ろせばいい。
彼女に適した武器だと言える。
投擲術は、何かを投げるときに威力や精度に補正がかかるスキルのようだ。
遠距離から攻撃するのならばこれだな。
腕力の強さを活かして、大きめの石をガンガン投げつければなかなかの威力が期待できそうだ。
腕力強化は長所を伸ばす方針。
逆に器用強化は短所を補う方針だ。
風魔法は、彼女がもともと持っていた「MP回復速度強化」を活かす方向性だ。
彼女のステータスをよく見ると、腕力ほどではないがMPや魔力の値もなかなか悪くない。
俺は火魔法と水魔法を使える。
彼女が風魔法を使えるようになると、戦闘の柔軟性が高まるだろう。
さらに数分考える。
ここは槌術を取るのが良さそうだ。
明日の朝、念のため本人に最低限の確認をして、槌術を取ることにしよう。
●●●
翌朝起きると、ミティはまだ寝ていた。
相当疲れがたまっていたようだ。
たっぷり寝かせてあげよう。
俺は顔を洗って服を着替えた。
そして少しして、ミティがガバっと体を起こした。
どうやら目が覚めたようだな。
頭に寝癖がついている。
可愛い。
「す、すいません! 寝過ごしました! この罰はいかようにもお与え下さい!」
ミティが焦ったように言う。
こんなことで罰なんか与えるわけがないだろう。
「気にしてないよ、ミティ。顔を洗っておいで。朝食にしよう」
「は、はい! 急いで行って参ります!」
「別に急がなくても……って、もう行っちゃった」
昨日屋台で買っておいた食べ物をテーブルに出していく。
彼女は言葉通り、すぐに戻ってきた。
寝癖はついたままだが、顔はさっぱりしている。
「お待たせしました! ただ今戻りました!」
「全然待ってないよ。さあ席に着いて。食べようか」
「はい! ありがとうございます! 頂きます!」
ミティといっしょに朝食を食べ始める。
狩りの話をしておくか。
「今日からミティには魔物狩りに同行してもらうことになる。今までに戦いの経験はあるか?」
「すいません。ありません……」
ミティが申し訳なさそうな顔をして言う。
そんな顔をしないでくれ。
こっちが悲しい気持ちになる。
「では使いたい武器はあるか? なければ槌を使ってもらおうかと思っているのだが」
「いえ、特に使いたい武器はありません。タカシ様が槌を使えとおっしゃるのであれば、喜んで槌を使いましょう」
よし、槌術を取得することで問題なさそうだな。
ミティのステータス管理画面から槌術を選択し取得する。
ミティの反応は特にない。
俺のように視界が点滅したりはしないようだ。
しばらくして朝食を食べ終える。
これから毎日屋台の食べ物だと思うと、栄養バランスが心配だ。
早いうちに奴隷と同席できる宿屋か飲食店を探しておかないとな。
宿から出る。
今後しばらくはファイティングドッグの狩りをするつもりだ。
ミティのレベリングをしないければならない。
期間限定ミッションのためにゾルフ砦へ行きたいが、ミティにはまだ早い。
まずはファイティングドッグを狩ってレベルを5ぐらいまで上げる。
レベルが5ぐらいまで上がったら、西の森に2人で行くか、ゾルフ砦へ行く。
そういう予定である。
狩りの前に、いろいろと準備をする必要がある。
まずは防具屋と武器屋。
狩りの前にミティの装備を整えないといけないからな。
その後は冒険者ギルドにも行く必要がある。
せっかく防具屋に行くんだ。
俺の装備も新調するか。
ミッション報酬の「中級者用装備等一式」が気になるところではあるが、おそらく達成にはあと数日はかかるだろう。
手ごろなものがあれば購入しておこう。
特に防具は優先的に買いたい。
レベル10、たかし
種族:ヒューマン
職業:剣士
ランク:D
HP:79(61+18)
MP:100(40+60)
腕力:36(28+8)
脚力:35(27+8)
体力:81(35+11+35)
器用:42(32+10)
魔力:36
武器:ショートソード
防具:レザーアーマー(ボロボロ)、スモールシールド
残りスキルポイント5
スキル:
ステータス操作
スキルリセット
加護付与
異世界言語
剣術レベル3
回避術レベル1
気配察知レベル2
MP強化レベル3
体力強化レベル2
肉体強化レベル3
火魔法レベル4 「ファイアーボール、ファイアーアロー、ファイアートルネード、ボルカニックフレイム」
水魔法レベル1 「ウォーターボール」
空間魔法レベル2 「アイテムボックス、アイテムルーム」
MP消費量減少レベル2
MP回復速度強化レベル1
称号:
犬狩り
ホワイトタイガー討伐者
レベル2、ミティ
種族:ドワーフ
HP:34(26+8)
MP:16(12+4)
腕力:29(22+7)
脚力:10(8+2)
体力:21(16+5)
器用:3(2+1)
魔力:14(11+3)
残りスキルポイント0
スキル:
槌術レベル1
MP回復速度強化レベル1
称号:
タカシの加護を受けし者
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