【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう

~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1677話 戦闘終了

公開日時: 2025年3月5日(水) 12:10
文字数:956

「最弱だと? それは、つまり――」


『では、ごきげんよう』


 少女は淡く微笑み、そのまま霧のように姿を消した。

 同時に、俺の身体を絡め取っていた拘束の陣が霧散する。


「む……」


 まるで最初から何もなかったかのように、俺の体は軽くなった。

 これまでは魔力や闘気を全開にして、ようやく動ける程度だった。

 しかし今は、自然に手足が動く。

 まるで少女がこの場にいたことすら、幻だったかのように。


 ――だが、確かにいた。

 俺の心に爪痕を残すような何かを持って。


「高志様!」


 聞き慣れた声が耳を打つ。

 振り返ると、紅葉が必死な様子でこちらを見上げていた。


「紅葉! 大丈夫か!?」


「は、はい。私は平気です」


 紅葉はゆっくりと身体を起こした。

 わずかに震える指先で衣の裾を整えるその仕草が、先ほどの出来事の異様さを無言のうちに物語っている。

 彼女の呼吸は浅く、微かに乱れていた。


 俺はすぐに駆け寄り、その身に異常がないか目を凝らす。

 紅葉の肌にはかすかな疲労の色が滲んでいたが、幸いにも傷は見当たらない。

 それを確認し、ようやく喉奥に詰まっていた息を吐き出した。


「ありがとうございます、高志様……」


 紅葉がほっとしたように微笑む。

 その表情は穏やかでありながら、どこか影を引きずっているようにも見えた。

 先ほどの恐怖がまだ完全に消えていないのかもしれない。

 それでも、彼女が笑顔を見せてくれたことで、俺の胸の奥に渦巻いていた不安の一端が、ようやく解けていくのを感じた。


「良かった……。しかし、あの少女は何だったんだ?」


 俺は低く呟く。

 未だ頭にこびりつくあの異様な存在感、

 そして少女が残した言葉。背筋に冷たいものが走る。


「分かりません。……ただ、情報源はこの場にたくさんいます」


 紅葉が静かに答え、視線を周囲へと向ける。

 俺もそれに倣い、視線を巡らせた。


 倒れ伏した巫女たちが、地面に静かに横たわっている。

 いかにも神聖そうな衣が血溜まりで染まり、無惨な光景を作り出していた。

 しかし、よく見ると皆、わずかに胸が上下している。

 どうやら妖力の過剰使用か何かで意識を失っただけのようだ。


 俺はひとつ、長い溜息をつく。


「仕方ない。さっきの少女との約束もあるし、ちょっとぐらいは治療してやるか」


 自嘲気味に呟くと、俺はゆっくりと手を翳し、指先にかすかな魔力を集めた。

 淡い光が闇に溶けるように揺らめく――。

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