【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう

~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1686話 ならば、うどん対決だ!

公開日時: 2025年3月14日(金) 12:10
文字数:1,033

「聞き捨てならんな。紅乃、お前はまたうどんを出すつもりなのか? いい加減、店を畳め。華河藩を統べる讃岐家のさらなる発展のため、お前は南の『紅炎藩(こうえんはん)』の藩主次男と結婚するのだ」


 琉徳の声は冷たく、冬の夜風のように刺さった。

 彼は讃岐家の嫡男であり、いずれ華河藩を背負う立場にある。

 とはいえ、今の彼には妹に強制力を振るう権限はない。

 それでも、藩の未来に関わる政略結婚の話を持ち出すことで、紅乃を追い詰めようとしているのは見え見えだった。


 紅乃の顔は曇り、まつげにかかる影が彼女の心情を物語っている。

 だが、彼女の唇は一筋の線を引き、意志を示すように結ばれた。


「いえ、私はうどんを極めたいと思っています」


 その言葉は、静かでありながらも、鋼のように強い意志を秘めていた。

 紅乃の背筋はまっすぐで、その姿はまるで嵐に立ち向かう一本の竹のようだ。

 しかし、琉にそれを認めるつもりはない。


「ならん! お前のうどんなど……大した味ではないだろうが!」


 彼の言葉は、拳を振り下ろすようなものだった。

 だが、紅乃はその攻撃を真っ向から受け止める。


「比べてみないと分かりません!」


 その声は、今度は琉徳を打ち返す矢となる。

 周囲の客たちは、彼女の思わぬ反撃に息を呑んだ。

 琉徳の表情が一瞬だけ驚きに変わったのを、誰もが見逃さなかった。


「なにぃ!? ……ふん、いいだろう! ならば、うどん対決だ! 審査員は、俺の伝手で五人ほど用意してやる!」


 琉徳の声が響くと、店内の空気が一瞬にして張り詰めた。

 彼の言葉には、力と威圧感が宿っており、誰もがその場に釘付けになった。

 彼の背後には、無言のまま控える部下たちの影が薄暗く揺れ、まるで店そのものが彼らの支配下に置かれたかのようだった。


「……分かりました」


 紅乃は静かに頷いた。

 その動作は、静けさの中に揺るぎない意志を秘めていた。

 彼女の表情は一切の動揺を見せず、まるで深い湖面が風ひとつで波立たないように、冷静さを保っている。

 しかし、彼女の内側には、静かに燃え上がる炎が確かに存在した。

 それは、覚悟と決意が結びついた、芯の強さを示していた。


 周囲の者たちは、そんな紅乃の姿に一瞬だけ安堵したものの、すぐに不安が押し寄せてきた。

 審査員が琉徳の関係者から選ばれるという時点で、この勝負の不公平さは誰の目にも明白だ。

 琉徳は藩主の嫡男であり、その影響力は強い。

 彼に刃向かうことは、命を賭ける覚悟が必要だ。

 それは、紅乃だけでなく、店全体、そしてここにいる客たちの運命にも影響を与える。

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