【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう

~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
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1531話 漢闘地方・紅蓮藩【月side】

公開日時: 2024年10月9日(水) 12:50
文字数:1,692

 タカシが桔梗拉致事件を解決した頃――


「【朧】……」


「っ!?」


「ちぃっ! あの女、どこに行きやがった!!」


「絶対に逃がすな! 探せ!!」


 とある少女が、追っ手から必死になって逃げていた。

 ここは大和連邦の漢闘地方にある、紅蓮藩。

 まるで紅蓮に燃えているかのような紅葉が美しい地域だ。

 そして、追っ手に追われる少女の髪色もまた美しい。

 まるで月の光のように輝く、その髪。

 彼女は影魔法を活用しながら木の幹を遮蔽物にして、確実に逃げていく。


「はあっ……。はあっ……」


 少女の呼吸は荒い。

 彼女はとうとう、木の幹を背にへたり込む。


「お? なんだ、やっと追いついたか!!」


「へへっ! 見間違いでなけりゃ、これで俺たちも大金持ちだぜ!」


「空の島でふんぞり返っている『天上人』が……どうして地上にいたんだぁ?」


「何にせよ、藩主にでも引き渡せば褒美が出るぜ!!」


「馬鹿な俺たちでも、お前に政治的な価値があることぐらいは分かるからな!!」


 彼女を追う、いかにも盗賊団といった風体の連中。

 その数、4人。

 彼らは少女を取り囲みながら、舌なめずりする。


「へへっ……。でもよ、引き渡す前に味見ぐらいは……」


「ああ……。そりゃいいな!!」


「やっちまおう!!」


 リーダー格の男が、下卑た笑いを浮かべる。

 彼は少女へと手を伸ばし、その肩を掴んだ。

 だが……


「私に触らないでくれるかしら。この下衆ども」


「な、なんだと!?」


「クソ女がぁ!!」


 少女に冷たくあしらわれた男たちは激昂する。

 そして、刀を抜いた。


「舐めるなよ……。小娘!」


「あら、私を引き渡して小遣い稼ぎを企んでいたのじゃなかったかしら?」


「うるせぇ!! 男を舐めたことを、後悔させてやるぜ!!」


「これだから頭の足りない下衆は嫌いなのよ。私を傷つけたら価値が半減するわよ?」


「うるせぇってんだよ!!」


 男は刀を振りかぶる。

 そして、勢いよく振り下ろした。

 少女はそれを回避するべく後方へ飛び退いた。


「悪いことは言わないわ。大人しく諦めなさい。そして、私のことは口外しないで」


「へへっ! それで交渉しているつもりかぁ? 交渉ってのはなぁ、戦力で優位な方が持ちかけるもんなんだよ!!」


 男は刀を振るう。

 少女は軽く回避しつつ、後退する。

 だが、しばらくして木に背中がぶつかった。

 それ以上は後ろへ下がれない。


「はっ! これで詰みだな!!」


「……はぁ、仕方ないわね」


 少女は大きくため息をつく。

 そして、両手を前に突き出した。


「な、なんだ?」


「諦めるわ」


「ほう? 大人しく犯される気になったか。安心しな、ちょっとは優しくしてやる――」


「諦めるのはあんたたちの命よ。【影棺】」


「はぁ?」


 少女の言葉と同時に、男たちの身体に異変が起こる。

 彼の身体が、影の中に呑まれていく。


「な、なんだ!?」


「何が起きてやがる!?」


「畜生!! 影妖術か!? 俺はこんなところで終わりたく――」


 言葉の途中で、男たちは影に呑み込まれた。

 後には1人の少女が残る。


「……ふう。無事に発動できたわね。上級はまだ不慣れで殺してしまう危険もあったから、私が逃げることで穏便に済ませたかったのだけど……」


 少女は呟く。

 彼女の名は、神宮寺月という。

 由緒正しき神宮寺家の令嬢だ。

 そして、影魔法の使い手である。

 諸事情によりサザリアナ王国で活動していた彼女は、タカシ=ハイブリッジの船に同乗して大和連邦に帰還した。

 だが、『霧隠れの里』の里長カゲロウによる空間転移で、遠い場所まで飛ばされてしまったのだ。


「花姉さんと雪は無事かしら? 他の人たちは……まぁ特殊な魔導具で位置を共有できるみたいだったし、大丈夫だろうけど……。私としては、まずは故郷を目指すべき? でも……」


 月は大和連邦の出身だ。

 各地を実際に巡ったことはないので、土地勘がないという点ではミリオンズの面々と同様である。

 ただ、生まれの良い彼女は一般教養としてある程度の地理情報が頭に入っている。

 それを活用すれば、生まれ故郷に帰ることも可能なはずだ。

 しかし、何やら迷っているらしい。


「……まぁいいわ。どのみち、1週間やそこらでは辿り着けない道だもの。姿を隠しつつ、進みながら考えましょう」


 月はそう判断する。

 そして、歩き出すのだった。

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