モニカとの結婚式は無事にひと段落した。
続いては、ダリウスとマム、それにパームスとナーティアの結婚式である。
俺とモニカは一度退席する。
お色直しがてら、少しだけラフな格好にするのだ。
控室への道中で、モニカと少し話す。
「ふう。緊張したな……」
「ふふっ。そうだね。タカシ、顔が真っ赤になっていたよ」
「そう言うモニカも、顔が赤くなっていたぞ」
「えへへ。だって、さすがにみんなの前でキスは照れるよ」
モニカがそう言う。
「そうだな。まあ、無事に終わってよかったよ。次は、ダリウスさんたちの結婚式だな」
「うん。私たちは今度は来賓客として、お祝いしないとね」
そんな感じのことを話しているうちに、控室の前まで着いた。
俺とモニカは別れ、それぞれの控室に入る。
中にはセバスとレインが控えていた。
ダリウスとパームス、それに手伝いの者もいる。
「お館様。お見事な結婚式でございました。改めて、祝福を申し上げます」
「おめでとうございます!」
「ああ、ありがとう」
セバスとレインの祝いの言葉に、俺はそう返答する。
そして、手早くお色直しを始めてもらう。
ダリウスとパームスは、結婚式に向けて新たな衣装に着替えていく。
「タカシ君。見事な結婚式だったよ。先ほども言ったが、娘を頼んだぞ」
「ええ。もちろんです。ダリウスさんも、とうとう今から結婚式ですね。それにパームスさんも」
俺はそう言う。
「そうだな。やや複雑な家庭環境にはなるが、俺たちならやっていけるさ。なあ? パームス殿」
「ああ。しっかりやっていこう」
ダリウスとパームスがそう言う。
会話をしながらも、準備は進んでいく。
俺は、しっかりした服装から少しだけラフな服装に着替えた。
逆にダリウスとパームスは、結婚式に向けた正装に着替えた。
しばらくして、俺の準備は全て終わった。
ダリウスとパームスは、もう少し時間がかかりそうだ。
一足先に部屋を出て、会場に戻ることにしよう。
今度は来賓客として、彼らの結婚式を祝福する必要があるからな。
俺は部屋を出る。
ちょうど、モニカも向こうの控室から出てきたところだった。
彼女と会場にまで戻り始める。
セバス、レイン、クルミナもいっしょだ。
会場に入る。
係の人が俺やモニカが戻ったことを確認している。
少しして、別の係の人が彼に耳打ちをした。
おそらくだが、ダリウス、マム、パームス、ナーティアたちの準備が終わったことを連絡しているのだろう。
それを受けて、係の人が結婚式を始めようとしている。
「では皆さま、続きましてはダリウス様とマム様、パームス様とナーティア様の結婚式を執り行いと思います!」
係の人がそう叫ぶ。
入り口のドアが開け放たれる。
大音量で入場曲が演奏され始める。
ダリウスとマム、それにパームスとナーティアが、それぞれ腕を組んだ状態で仲良く歩いてくる。
彼らやモニカの意向により、通常の結婚式とはやや異なった趣となっている。
そして、誓いの言葉やあいさつがなされていく。
多夫多妻という特殊な家族となるが、彼らであればきっと幸せな家庭を築くことも可能だろう。
会場は暖かな空気で、彼らの再出発を見守っていく。
「皆さま。今後、私たちは協力して幸せな家庭を築いていきます。どうか今後もよろしくお願い致します」
「「「よろしくお願い致します」」」
ダリウスが代表して行ったあいさつの言葉に続き、他の3人が頭を下げる。
そんな感じで、彼らの結婚式も無事にひと段落した。
●●●
続いては、俺とニムの婚約のお披露目会だ。
ダリウスたちが中座して、お色直しに向かう。
そして俺とニムも、お色直しに向かう。
控室にて、セバスやレインにまた手伝ってもらい、着替えていく。
ニムのほうは、クルミナ、ミティ、アイリスたちが手伝ってくれているはずだ。
そして、控室を出る。
ニムもちょうど出てきたところだった。
可愛らしく、それでいて美しくもある見事なドレスを着ている。
「いよいよだな。ニム」
「そ、そうですね。ドキドキしてきました」
これから行うのは、結婚式ではなくて婚約のお披露目会だ。
とはいえ、彼女にとっては今までの人生の中でも大きなイベントとなるだろう。
緊張するのも無理はない。
ミティやアイリス、それにセバスたちは、一足先に式場へと戻った。
俺とニムは、そわそわしつつ式場前の扉で待機する。
「では皆さま、続きましてはタカシ様とニム様のご婚約のお披露目会となります!」
係の人がそう叫ぶ。
入り口のドアが開け放たれる。
にぎやかな入場曲が演奏され始める。
俺とニムは、手をつないで仲良く進んでいく。
式場の奥の祭壇にまで着いた。
係の人が来賓客に向けて口を開く。
「ご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、こちらのタカシ様とニム様は将来を約束された仲です。ニム様がまだ結婚可能な年齢ではないため、本日はご婚約のお披露目会となります」
この国で結婚が可能となるのは12歳だ。
ニムは数か月前に11歳となった。
本来であればもう少し待ってから結婚式を挙げればよかった。
しかし、俺とモニカが結婚式を挙げ、さらにダリウスたちも結婚式を挙げるので、せっかくだから同日に婚約のお披露目会を行うことになったのである。
「ラビット亭の近くでたまに見かけた子だ……」
「小さいが、将来は美人さんになりそうな娘じゃないか」
「タカシ君め。モニカちゃんだけじゃなくて、ニムちゃんまで」
「泣かせたら承知しないぞ」
来賓席の人たちから、そういった声が聞こえてくる。
どうやら、ラビット亭の常連客たちからの声のようだ。
それほど大きな声量ではないが、俺の聴覚強化レベル1の恩恵により聞き取れる。
「ニム。これからもよろしくな」
「よ、よろしくお願いします。タカシさん」
俺とニムは見つめ合う。
そしてキス……といきたいところだが、口はさすがに少しマズい。
おでこにキスをした。
「皆さま。俺とこちらのニムは、将来を誓い合った仲となります。彼女が12歳になれば、結婚式を挙げさせていただきます。その際には、ぜひ祝福をお願い致します」
「お、お願いします」
俺とニムは頭を下げる。
その後も、ニムの両親からのあいさつなどが進行していく。
そうして、俺とニムとの婚約のお披露目会は無事にひと段落した。
これで、今日のメインイベントは全てがひと段落したことになる。
俺とモニカの結婚式。
ダリウスとマム、それにパームスとナーティアの合同結婚式。
俺とニムとの婚約のお披露目会だ。
だが、最後の総まとめとして大きなイベントが1つ残っている。
モニカ、ダリウス、ナーティアが仕込んでいた料理による食事会だ。
モニカが、俺やアイリスのヒントを元に完成させたマヨネーズ。
モニカがミリオンズとして各地を巡っている間に習得した料理の数々。
そして、以前からダリウスたちが得意としている、ラビット亭の定番料理などが提供される予定である。
今日の緊張するイベントは終わったことだし、あとは好きに飲み食いして楽しませてもらうことにしよう。
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