【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう

~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1502話 山奥に潜むもの【ゆーちゃんside】

公開日時: 2024年9月10日(火) 12:06
文字数:1,399

 タカシが桜花城の城下町で日々を過ごしている頃――


「ふふふ……。力が……力がみなぎってくる……!」


 とある山奥で、1人の少女が狂気の笑みを浮かべていた。

 ここは大和連邦北部『北烈地方』の『青雲藩』にある、『恐魂山』。

 別名、『魂の眠る山』と呼ばれるこの山は、その名が示す通り死霊系の魔物が跋扈する危険な場所である。

 だが、この少女にとっては、死霊系の魔物など恐るるに足りない。

 なぜなら、彼女自身もゴーストだからだ。


「でも……寂しい……。一人は寂しい……。おにーさんたちに、早く会いたい……」


 少女は呟く。

 彼女の名は、『ユーファミア』。

 通称は『ゆーちゃん』であり、タカシやミティと行動を共にしてきた幽霊の少女である。


「おにーさんたちは、今ごろ何してるのかな……? はぁ……」


 ゆーちゃんは深いため息をつく。

 タカシを始めとするミリオンズ構成員は、『共鳴水晶』という魔道具を持っている。

 それがあれば、異国の地で離れ離れになってもいずれは合流できるだろう。

 しかし、人外構成員であるゆーちゃんは、その魔道具を持っていない。


「しばらくはこの山で力を溜めるしかないか……。……おっと、ちょうど獲物が……」


 ゆーちゃんは目を細める。

 彼女の視線の先には、数人の男たちがいた。

 この恐魂山は霊験あらたかで、野盗などは基本的に寄り付かない。

 しかし、たまにこの山で修行をする武人や僧侶がいるのだ。

 そんな者たちを、ゆーちゃんは襲っている。


「ふふ……。美味しそう……」


 ゆーちゃんがこっそりと男たちに近付く。

 彼女は幽霊であり、存在感が薄い。

 そんな彼女がこっそり忍び寄れば――


「べろべろばあああぁぁ!!」


「うぉっ!? な、なんだ!?」


「ぎゃぁぁ!?」


「ひぃっ!? ゆ、幽霊だあああぁ!!!」


 男たちは驚いて腰を抜かす。

 しかし、ゆーちゃんは容赦しない。


「いただきまーす!」


「ぎゃぁぁ!!」


「た、助けてくれぇ!!」


 男たちは恐怖の悲鳴を上げる。

 直後、力なく倒れ込んだ。

 ゆーちゃんによって魂を吸われ、絶命したのだろうか?

 否。


「けぷっ……。ご馳走さまでした。死霊系の魔物がたくさんいるこの山は、私にとって楽園だね。……でも、ちょっと物足りないなぁ」


 ゆーちゃんは腹を撫でる。

 彼女が取り込んだのは、男たちの魂ではない。

 彼らに取り憑いていた死霊である。


「さて……。このおじさんたち、この山に入るには力不足なんだよねぇ。放っておいたら、他の魔物に襲われちゃうかも。仕方ないから、私が操って下山させてあげようかな。――【霊縛之鎖】」


 ゆーちゃんは魔法を使う。

 すると、彼女の霊体から鎖のようなものが伸び、男たちの体に巻き付いた。


「「「ううぅ……」」」


 男たちは気絶した状態のまま、うめき声をあげる。

 この魔法の使用者に害意がない場合、支配された側に悪影響はない。

 悪影響はないのだが……。


「それじゃあ、レッツゴー! 今の私は、守護霊・遊ちゃん! いっしょに、ふもとまで行くよ~」


「「「ううぅ……」」」


 男たちはうめき声を上げながら歩き出す。

 はっきり言って、見た目の印象はかなり悪い。

 意識を失った状態でうめき声を上げながら歩く男たちと、その後ろを浮遊しながらついてくる幽霊。

 それはまるでホラー映画やゾンビ映画のような光景だった。

 ゆーちゃんたちは、そのまま山を下りていくのだが……


「う、うわあああ!?」


「なんだあれは!?」


「お、怨霊だ! 逃げろぉぉ!!!」


 下山先で騒ぎが起きたのは、言うまでもない。

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