【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう

~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1365話 モニカ純愛ルート ラビット亭

公開日時: 2024年4月26日(金) 12:05
文字数:1,672

「タカシ?」


「…………」


「ねぇ! タカシってば!!」


「はっ!?」


 俺はモニカの声で我に返る。

 一体、何をしていたところだったか……。


「どうしたの? この料理、早く3番テーブルに届けてよ!」


「あ、ああ……。もちろんだ」


 俺はモニカの指示に従い、料理をお客さんに届ける。

 そう……今は昼時。

 ラーグの街にある『ラビット亭』は大盛況だ。


 元々は、モニカ、モニカ父、モニカ母の3人で営んでいた料理屋だと聞いている。

 だが、数年前の事故によりモニカ母が行方不明となり、しばらくして死亡宣告が出された。

 さらに少し前にはモニカ父が難病を患い、満足に働けなくなった。


 ここ最近は、モニカが1人で店を回していた。

 そんな折、俺が『ラビット亭』の店員として雇われることになったのである。

 たまたまフラッと入って食べた料理の味に、俺が一目惚れした形だ。


「ふぅ……。お疲れ様、タカシ」


「ああ。モニカこそ、お疲れ様」


 昼のラッシュが終わり、俺とモニカはまかないを食べながら会話する。

 彼女の料理は絶品だ。

 以前から料理上手だったところに、俺の『ステータス操作』による強化が加わった。


 ひょっとすると、ラーグの街でも随一の腕前じゃなかろうか?

 俺は彼女の料理を堪能するために生きている。

 そう言っても過言ではない。


「さっきはどうしたの? ボーっとしていたみたいだけど……。疲れてる?」


「いや、大丈夫さ。俺以外にも大変な人はたくさんいるし、泣き言なんて言ってられない。少しでもたくさんの人に、料理を食べてもらわないと……」


 ここ最近、西の森で魔物の生態系に異変が生じているらしい。

 ホワイトタイガーという魔物が発見されたとか……。

 何とか討伐できたみたいだが、冒険者10名ほどが犠牲になった。

 その中には、若い少女の冒険者もいたらしい。

 俺は冒険者ではないし、彼女たちと特に面識はない。

 だが、もし俺が料理系統ではなくて戦闘系統のスキルを伸ばしていれば……なんてことを考えたりもしてしまう。


「タカシは……強いね。私は怖いよ。東の方じゃ、戦争が長引いているみたいだし……」


「東? ああ、ゾルフ砦の辺りか」


 聞いたところによると、オーガやハーピィといった種族が攻め込んできたらしい。

 俺は最低限の戦闘系スキルしか取得していないので、あまり関係ないが……。

 もしゾルフ砦が突破されたら、この街まで戦火に巻き込まれるかもしれない。

 モニカが不安に思うのも無理はないだろう。


「俺たちは俺たちで、料理人としてできることをやっていこうぜ。……ん?」


 俺はふと、窓の外に視線を向ける。

 人影が見えた気がしたが……気のせいだろうか。


「どうしたの?」


「いや、誰かいた気がしてな……」


 俺の言葉を聞いて、モニカも窓の外に目を向けた。

 だが、特に人影のようなものはない。


「もしかしたら、犬獣人の子かも……」


「犬獣人?」


「うん。ちょっと貧しい子みたいで、料理で余った具材をあげたりしてたんだよね」


「余った具材って……。最近は大盛況で、食材は使い切っているんじゃないか?」


 俺はそう指摘する。

 ステータス操作により、モニカの料理の腕は上がった。

 それに、俺も料理関係のスキルを優先的に伸ばしている。

 おかげさまで大盛況だ。

 食材が余ることはほとんどない。


「うん。だから最近はご無沙汰で、心配になって……。今度、中に入れてあげようかな?」


「あー……。まぁ、いいと思うぞ。モニカさえ良ければ」


 俺がモニカと出会う前は、ラビット亭は閑散としていた。

 犬獣人の子からしても、その頃なら気軽に来れる雰囲気だったことだろう。

 だが、ここ最近のラビット亭は大盛況だ。

 過剰な客入りに対応する形で値段もいくらか上げており、客層も変わった。


 モニカの心優しい性格に変わりはないが……。

 犬獣人の子からすれば、関わりづらいと感じるかもしれない。

 料理をごちそうしてあげるなら、こっちから言った方がいいだろう。


「さて、そろそろ仕事に戻るか。夕飯時にも、きっとたくさんのお客さんが来るぞ」


「うん! 頑張ろうね!!」


 モニカは笑顔でそう言うと、俺に抱き着いてきた。

 俺は思わず赤面する。

 こうして、ラビット亭の日常は過ぎていく。

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